▼市民的モラル関連ノート

市民的なモラルの低下ということがくり返しくり返し話題になるのは、テレビがどういうタイミングかくり返し繰り返し話題にするせいもあるだろう。

公共心や公徳心、モラルの低下ということそのものが直接ターゲットになり、「理由なく教え込む」とか「体験させる」とかいう「改革」や「再生」の提案を受けてしまう根拠になっている。
日常の市民生活で危険でない範囲で不衛生であったりイライラするのは、所詮その程度である。私的な領域の延長であって、他の私的な領域との接点にすぎないと言えなくもない。
しかし政治家が税金を「助成金」として受け取って使途が不明だったり、年金保険料を払ってなかったり、収賄したり、大企業が偽装請負したり、「人権」の名をかたって・それを承知でダクダクと公金をヤクザに注ぎ込んだり、こうした「公共」の領域での非道・滅徳的な行為こそ徹底的に批判され・自己批判されなければ、個別には1万・2万の不払いに過ぎないような例とか、電車の中で化粧するとか正せる「道理」というものがないではないか。
「保護者としての責任感や規範意識の欠如」とか報道する前に、政治家や企業家の「うそをつかない・盗みをしないなど人間としての当たり前の規範意識の欠如」がいかに「保護者」に悪影響を及ぼしているか、年中特集を組んでもらいたいものである。

クローズアップ現代2006/08/01(火)放送 崩壊?日本人のモラル
高速道路の料金所を料金を払わずに突破する車。コンビニや道の駅のゴミ箱に捨てられる大量の家庭ゴミ。図書館では本の無断持ち出しや切り抜きが相次ぐ。思わず首をかしげたくなるようなことが私たちの身の回りで日常的に起きている。各地の自治体は、監視カメラの設置やパトロール強化など対策に追われるが、効果はあまり上がらないうえ、コストは税金で賄われるため結局ツケは住民全体に回っている。「私」より「公」を優先させることが美徳とされてきた日本人のモラルに何が起きているのか。現場からのリポートとともに、スタジオにふたりの識者を招き、その背景を読み解いていく。
(NO.2278)
スタジオゲスト:佐野 眞一さん(ノンフィクション作家)/江川 紹子さん(ジャーナリスト)

美徳や公徳心は愛国心という肥沃な大地から萌え出る

抜粋

経団連美しい国、日本」07/01/01 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/vision.pdf
教育を再生し、社会の絆を固くする
 現代の教育において最も欠けているのは、克己心、公徳心の涵養という視点である。自己中心的な考えが蔓延し、他人に迷惑をかけないといつた最低限のモラルも確立されているとは言いがたい。ごみや騒音などをめぐる地域に於ける争い、風紀の乱れ,さらには凶悪な少年犯罪をはじめとする治安水準の低下など、和うや社会規範の遵守さえ確保されていない事例が少なくない。
 より積極的に、自らの社会を自らの手で支えようという気概や、社会全体の福祉の増進に貢献するといった意味に於ける公徳心も十分に育っていない。子育て家族の支援、防犯、再チャレンジ環境の整備など、さまざまな分野で地域コミュニティの重要性が指摘されている。また、福祉や環境、天災・人災への対応において、ボランティアやNPOの役割は大きい。さらに欧米では、文化・芸術の振興なども個人の企業の寄付により支えられているところが素泣く泣くない。こうした要請に応えていくため、他人を尊重し、弱者を思いやる心が求められている。
 誠実、勤勉、克己心といった個人的な美徳に加え、正義、寛容、慈善、同胞愛など公徳心がなければ、どのような社会も成立しない。こうした美徳や公徳心は、国民の一人ひとりが、大切にすることや、してはならないことなど、基本的な価値観を共有する共同体の一員であるという自覚を持つことにより育まれる。学校や家庭での教育を通じ、歴史的に形成されてきた国民、国土、伝統、文化からなる共同体としての日本を愛する心と、その一員としての誇りと責任感を培っていくことが求められる。美しい薔薇が健やかな枝に咲くように、美徳や公徳心は愛国心という肥沃な大地から萌え出る

最後のフレーズにはしびれてしまった方も少なくないようだ。



以下は、冒頭のクローズアップ現代に関連したり関連してなかったりするモラル関係の記事の紹介。敬称はほとんど略させていただきました。
戦後日本とは何か? 「若者たちと消費社会---高度経済成長以降の「個人」と「公共」 2004年12月 生き抜く21世紀(園良太氏)
大作。


学級崩壊とモラル崩壊 木走日記 2006/08/02
モラル崩壊? Living, Loving, Thinking 2006/08/03


溶けゆく日本 一考 日の丸君の日記 2007/01/16

モラル崩壊をさせた原因は様々に指摘される。 憲法進歩的文化人日教組反日勢力 東大 官僚 特定宗教団体 などなど。

こちらでは、モラルを崩壊させたのは、日本のモラルを支えてきた調和の精神・島国互助精神・武士道・自然への畏敬の念を軽視・否定した、戦後的・マルクス主義的・個人主義的諸観念や制度であるとされる。簡単に言い換えると「やりたくないことはやらなくてよい思想」「国歌・国旗など公共的なものやその象徴の蔑視の思想」がそれだと。(団塊の世代についても言及)


資本主義経済的市場の功罪(PDF) 山本 誠之氏(経済学?)
初学者向け(?)の倫理学的もしくは社会学的な文章。特段に目新しい論点はないが、文章がコンパクトなので、問題意識のありようによっては、今日のモラルの危機がまことに資本主義的なものであると得心する。

市場の「没人格性」……市場は、政治的に迫害された者でも社会的に不当に差別されたものでも、その素性にかかわりなく受け入れる傾向がある。人間の好悪の感情や偏見などからくる差別感を、市場は利益を基準とする非人格的取引で匿名化し、相殺するのである。人と人との生(なま)の人格関係のわずらわしさから解放され、自由とプライバシーを守ることもできる。……お金さえもってくれば相手は誰であろうと平等に定価どおり販売する。

氏は「2.資本主義のデメリット・問題点」で資本主義的イデオロギーについて続ける。

  • 利己心の奨励
    • 自己の利益のみを考えて経済活動にいそしめばいいのであって、他人の立場に配慮する必要はない。利他心や公共精神はないほうがいい
    • 例えば、マルサスは多数の貧民に生存を保障するのは社会的に大きな負担であり、また、労働者の勤労意欲を阻害する。社会にとって不要な人間(仕事のない人々)の自然淘汰を主張し、貧しい両親から生まれた子供は生存する権利がないし、誰も彼を助けるべきではないとまで考えていた。
  • 欲望と快楽の人間観:ベンサムやジェボンズのモデルとするような、徳性のない快楽の追求、欲望の満足のみを求める生命体としての人間観こそが、現代に生きる我々に、意識的・無意識的に絶えず注入されているイデオロギーなのである
  • 人間の手段化・モノ化:利己心の原理から導き出されルもう一つの特徴は、人間の手段化・モノ化である。人々が自己の利益のみを考えて行動して他人と相互関係に入るとすると、相手は尊重すべき人間同胞ではなく、自らの利益のための単なる手段に過ぎなくなる。
    • 消費者にとっては市場経済の目的は消費者の効用(快楽)にある(消費者主権)
    • 他方、企業にとっては、販売対象である消費者は自らの貨幣獲得のための手段に過ぎない。売ってしまえば消費者はどうなろうと構わないのである。
    • 人間の手段化、モノ化が赤裸々となるのが、企業と被雇用者との関係である。誰でもが、まじめに努力すれば雇われる、などという保障はない。
  • 資本主義による人間精神の劣化:利己心を基本とする資本主義的人間観では、人間は一方では単なる手段とみなされ、モノに貶められる。

すなわち、人間は生産者としては「モノ」として、徹底的に使われ、疲労困憊して癒しのために楽しみや慰めを求める。飲酒、テレビ、新聞雑誌、パチンコ、マンガなどが日常的なストレス解消策といえる。他方、消費者としては無限の欲望を煽られ、次々と提供される商品やサービスを購買することが本来の姿だと思わされる。
消費者は、自らの欲望の赴くままに選択し自由に振舞うが、その時々の感情や流行などに振り回されるに過ぎず、主体性もなければ責任も持たない。道徳性も尊厳もない人間の一段面にすぎない。これを、あたかも人間そのもののように見なして、消費者主権=人間尊重をみせるのが資本主義のイデオロギーである。
これでは、人間本来の大切なものが抜け落ちてしまい、人間性の欠落が社会全体の蔓延することになる。人間にとって最も大切な心、魂といったもの、高貴なもの、人間の内面深くあるもの、こうした精神的部分が、モノと欲望をもっぱらとする資本主義社会では抑制され、歪められ、いじけてしまっている。

このように情報化、グローバル資本主義化、アメリカ化が進展していくとすると、人間の本性はますます疎外され、精神性や文化、芸術、真の想像力などが世界的に枯渇していくことが懸念される。個々人の人格や個性、心の向上といったことが打ち捨てられ、人類社会はますます索漠としたものになっていくのではないか。

終わり方が素朴なのが物足りないが、こうした素朴な問題意識をその発生源から切り離さずに誠実に持ち続けることは、社会をより人間的なものに変えていくに当たって大切なことであろう。


日本人のモラルの変化 小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記

日本社会が変化したのは、モラルの低下ではなくて、相互に監視する村社会が崩壊、企業に属する企業社会という枠組みが崩れ、流動化したために、ガバナンスメカニズムが全く利かなくなっただけなのだ。
何らかのガバナンスメカニズムが必要であり、何も新しいメカニズムがなければ、監視、管理社会にならざるを得ない。

若者のモラルの低下について 教えて!goo

06/07/22
最近になって、モラルが低くなったというデータはあるのでしょうか?
……
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「日本人の品格・道徳観」に関する調査結果 gooリサーチ結果 (No.121) 2006/06/16

調査結果のポイント
(1)日本人の品格・道徳観に関する書籍の読書経験もしくは意向者は約半数
(2)日本人が元々持っている品格・道徳観について、失いつつあるものとしては、「礼儀正しさ」「謙虚さ」がともに高く、いずれも5割前後。
(3) 日本人が取り入れるべき考え方・主義としては「論理を重視する」が相対比較で最も高い。
(4) 今後、品格・道徳観を持ち続けるには「家庭でのしつけ」が不可欠との意見が半数を占める。

迷惑行為の通報義務を条例化(2005/02/11) Internet Zone::WordPressでBlog生活

東京都が、公共の場所での迷惑行為について、通報する義務を条例化する方針でいるそうな。

社説=【教基法改正】荒廃は解決できない [高知新聞 2006年4月14日]

 改正を主張する人たちは、いじめや不登校などの教育荒廃、少年による凶悪犯罪などと基本法を絡める。「個人の尊厳が行きすぎた結果」という認識だ。そこで、与党改正案は「公共の精神」「道徳心の涵養(かんよう)」を盛り込もうとする。
 だが、それらの問題と基本法を結び付けるのは筋違いだ。基本法をきちんと読めば分かる。