▼紹介:格差社会についての二宮氏所論の「ぴったり」(将棋用語)

『日本の科学者』(編集・発行 日本科学者会議)が昨年まではしばらく店売されていなかったなんて、少し驚きであった。

2007年2月号は「「【特集】競争社会」を考える」である。(以下、敬称略)
全体に刺激的。新しい雑誌の内容を詳しく紹介するのはあまり宜しくないですが「ぴったり」と思った部分があったので、そこだけ。

特集部分の目次

  • 【扉のことば】愛国心について……浜林正夫
  • 格差に引き裂かれた日本社会……二宮厚美
  • 競争社会の弊害……徳重昌志
  • 受験競争と学歴社会……船寄俊雄
  • 競争は進歩をもたらすか……稲生勝

二宮氏は、言う。格差社会の構造は、下層に置かれた人々の自由を侵すものである。新自由主義の台頭は「資本による賃労働者の支配・搾取」を深化させ、労働者階級から生存・勤労・教育・居住・言論等の自由を実質的に奪っている。また福祉国家の縮小解体と市場原理の徹底によって労働者内部の階層的格差関係が拡大している。
ところが、最近ブームの格差社会論は前者の資本主義的な搾取関係について言及しない。このことによって、

  1. 階級的労使関係に起因する下層の貧困と不自由について捉えられていない。
  2. 階級的労使関係を無視して「階層の固定化」という面だけで格差・不平等を捉えると、格差是正の方向は、階層固定化の打破=階層間移動の活性化ということになる。これは競争社会の平等化を推進すること=階層間移動の市場原理に基づく自由競争=雇用の一層の不安定化と「再チャレンジ支援」ということになる。
  3. 自由競争が階層固定化を打破するどころか、むしろ階層の固定的再生産をもたらしかねない(ことに気づけば、「2.」も主張できず格差を心理の問題に解消させたりしてしまう)。

ただし、現代日本の階層間格差を階級間格差に読み替えるのは違うと。