▼現代帝国主義

「交差する領域」より抜粋

 現代の覇権国家は、かつての帝国主義とは異なり、みずからの経済的利益を増大させるために「周辺」地域の土地をみずからの主権のもとに併合するようなことはしない。そうではなく、各国家の領土主権をいったんは認め、そのうえでみずからに利益をもたらしてくれる経済システムやルールをそこに課そうとするのだ。帝国主義の時代においては、国家の軍事力は、「周辺」地域を植民地化し、領土を拡大するためするためにもちいられた。これにたいし現代は、自国の権益とむすびついたグローバルな経済システムの確立や維持のために国家の軍事力がもちいられるのである。
 このとき従属国家の主権は、形式的には認められるが、実質的にはその経済システムによって空洞化されるだろう。国家はいまやそうしたシステムの管理者として姿をあらわす。かつては主権の一体性や力能をあらわすものだった領土が、国家の活動において重要性を低下させてきている。領土を取得することはもはや「中心」国家の覇権にとって本質的なファクターではない。