▼現代国家の変容?

 話を住専問題にもどそう。この問題にはもうひとつ示唆的なことがある。それは、公的資金の投入によって不良債権の処理がなされたときに、検察が住専を摘発したことだ。

 なぜその摘発がなされたのかといえば、それは「乱脈融資をおこなった金融機関を救済するためにどうしてわれわれの税金が注がれなくてはならないのか」という世論の反発があまりに大きかったためである。要するに、公的資金によって不良債権を処理してやるかわりに刑事責任は追及するぞ、というかたちで国家の暴力が発動されたのだ。逆にいうなら、公的資金を金融システムの保守のために投入するという政策転換を達成するためには、暴力の行使が必要だったのである。

 これはイラク戦争の場合ととても似ているところだ。そこでは、ドルを石油と一元的にむすびつけている世界経済システムをまもるために国家暴力の発動が必要とされたからである。

 住専の摘発は、もともとが公的資金投入の「ための」捜査だったため、検察はなかなか住専幹部の特別背任容疑を立件することができなかった。「国策捜査だ」という言葉さえきこえてきた。住専の摘発におけるこうした困難もまた、イラク戦争後の占領政策においてアメリカが直面している困難と通じるものがある。

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