▼男性も子育てできるほどのワーク・ライフ・バランス

厚生労働省男性が育児参加できるワーク・ライフ・バランス推進協議会提言について

男性も子育てに参加できる(量や内容はともかく)ほどの取り組みをしましょうという、企業向けの提言でるが、問題は「企業におけるメリット」の保証とデメリットへの補償である。(なお、わたくしはここでは「女性」については取り上げない。)


男性も子育てできるほどのワーク・ライフ・バランスの企業にとってのメリットは何か

  • 優秀な人材の確保・定着……希望するライフスタイルを実現できる環境は、優秀な人材を惹きつける。
  • 従業員の意欲の向上、生産性の向上……従業員の職場環境に対する満足感を高め、意欲と能力を引き出す。
  • 仕事の内容や進め方の見直し、効率化……業務配分の見直しや情報の共有化など、仕事の効率化のきっかけとなる。

以上は単に可能性のはなし。そうではなく、企業を本気で「やる気」にさせる行政側からの力は何か。提言では、

CSR(企業の社会的責任)の遂行
 多様性の尊重やワーク・ライフ・バランスへの取組は企業の社会的評価を高める。

という題目があるだけである。


スローガンだけなら誰でも唱えられる

労働者にとって都合よいことを並べることは誰でもできる。それを経営者たちが言ったということ自体は何がしかの成果かもしれないが、どう実現するかということでは、企業の「やる気」に期待するというのが基調の空疎な提言となっている。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1013-3d04.pdf#12
ワーク・ライフ・バランスとは、仕事の目標とそれを達成するための多様な働き方を労使で協議し、新しい時代の生き方を創造すると同時に生産性向上を目指そうとするものである。
株式会社東芝 取締役会長 岡村正氏


多様な働き方を認めることが、……企業業績の向上に結びつく……。
日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役会長 北条恪太郎氏


長時間労働が評価される仕組みや風土を改め、……
東京電力株式会社 常務取締役 山崎雅男氏



ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方が可能な企業……そのためには、マネジメント主導で、かけた時間ではなく生産性の高さ、成果や貢献にフォーカスしたカルチャーを徹底すること、効率的な働き方の具体的な目標数値を提示することが必要だ。
日産自動車株式会社 常務執行役員 川口均



ワーク・ライフ・バランスの基本は柔軟な働き方の実現です。そのためには、働く個人が自ら望む生活スタイルを見据えて、働き方を根本的に見直していく必要があります。一方、企業は自社の実情に応じて、労働時間、就労場所などについて多様な選択肢を提供・整備することが求められます。生産性向上と生活の調和が実現できるよう労使間で積極的な話し合いが行われることを期待します。
社団法人日本経済団体連合会 専務理事 紀陸孝氏

まじめな発言もあるけれど、「ワーク・ライフ・バランスは、多様な不安定就業で自己責任において実現せよ」「生産性向上は譲れない」「不安定就業の選択は、選択したオマエの新しい生き方ダロ?」「成果主義なくしてワーク・ライフ・バランスなし」ともとれる発言も少なくない。
労働法制上の強制力こそが整備されなければ、いつでもいつまでもアンバランスが克服されないだろう。


もっと意地悪な読み方をすれば、男が子育てに携わることができるような「ワーク・ライフ・バランス」は究極的な極値的なバランス状態であって、男にとって子育ては最後的な課題に過ぎないのだと。