▼真の成果主義賃金

現在の「成果主義」は真の成果主義ではない

●経営者は「真の成果主義」の構築を/経産省・人材マネジメント研究会
経済産業省は10日、「人材マネジメントに関する研究会」の報告書をとりまとめた。現在の成果主義は、導入の契機がコストの削減にあり、バブル経済崩壊の中での緊急避難的な施策だったため、働く人の意欲や納得感をそぐ可能性があるなど、構造的な欠陥を導いている懸念があると指摘。経営者はキャリアを通じて働く人の意欲を持続させ、「真の成果主義」とでも呼ぶべき新しい評価・賃金制度を構築すべきだと主張している。

http://www.meti.go.jp/press/20060810006/20060810006.html

本文は長いので、未読。要約のチャートをナナメ読み。http://www.meti.go.jp/press/20060810006/youyaku.pdf
要約のほうがわかりやすいが、「真の成果主義」なるものについてはこちらにもわかろうとする意欲がないのでわからない。
今の成果主義は真の成果主義ではないためかマイナス面が多く語られているもよう。

成果主義賃金に構造的欠陥

2006/09/04追記
赤旗が本文を読んでか、まとめを発表。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-09-04/2006090401_01_0.html

企業に成果主義を導入した結果、人件費は下がったが、労働者のやる気や協働意識は低下した―経済産業省の研究会が、いまの成果主義には「構造的な欠陥」があるとする報告書をまとめていたことが分かりました。研究会は「人材マネジメントに関する研究会」(座長=守島基博一橋大学大学院教授)。企業が「短期的成果」ばかり追い求めて、人材育成を軽視していることにも警告を発しています。



 報告書は「現在の成果主義は導入の契機がコスト削減にあった」とし、人件費の抑制では「効果を上げた」ものの、社員のモラールアップ(士気向上)や業績向上に関しては「思うような効果は上がっていない」と厳しい評価を下しました。
 そして、「予想していなかった問題点」として、

  1. 賃金などの処遇に対する納得感の低下
  2. 個人競争激化による協働意識の低下
  3. 人材育成機能の低下
  4. 現場の疲弊とプロセス(目標達成までの過程)管理の弱体化

―の四点をあげました。
 「チーム内のメンバーでさえもライバルと見なして仕事」をしなければならず、「個人間の競争意識は高まるものの、意欲が高まらない」と指摘。管理職同士も「個人間競争」に追われ、「優秀な部下の疲弊、他の多くの部下に対する育成面での軽視」につながっていると分析しました。
 また、企業が「売上やコストなど目に見えやすい目標や短期的成果の目標に偏る」結果、「マネジメント側が人材育成を軽視することや、社員個々人がストレッチ(ワンランク上の仕事への挑戦等)を避けようとする事態」になっていると懸念しています。
 「目標管理制度」が実際には「結果管理制度」になり、「部下が必要とする支援は十分に行われず、インプットのない中でアウトプットばかりを要求される“疲弊”状況が職場に広がり、すでに長い時間を経過してきている」と述べています。
 同研究会は、経産省産業人材担当参事官室の委託調査として約一年かけて検討を行い、八月に報告書をまとめました。成果主義が批判を浴びているなかで、企業の人事政策のあり方を研究することが目的です。

ダメダメ成果主義賃金

赤旗に触発されて本文を検索してみた

第3章 人材マネジメントの評価と今後の方向性
第Ⅰ節 評価・処遇制度

成果主義という言葉を初めて聞いてから、すでに15年近くがたつ。にもかかわらず、周囲を見渡して「大成功!」という事例は寡聞にして知らない。逆に、成果主義の失敗事例報告や成果主義バッシングが盛んだ。比較的初期に成果主義的な人事制度を取り入れた企業の「失敗談」を書いた本がベストセラーになり、また働く人から聞こえてくる反発の声も大きい。
かつて、わが国の経済成長は職能資格制度に支えられてきた。しかしバブル経済崩壊後、能力主義を中心に発展してきた人材マネジメント(職能資格制度)に疑念が生じた結果、多くの企業では成果主義が導入され、一時はブームと言えるほどまでに広まった。それがなぜ、こうしたことになってしまったのだろうか。経営者は満足しているのだろうか。働く人は納得して受け止めているのだろうか。
本節では、所謂「成果主義」を「仕事の成果に応じて、賃金やボーナスを決定する仕組みである」と位置づけ、その導入を中核とする1990年代前半から、わが国企業の賃金制度および評価制度の変化を追い、企業経営の視点から成果主義を評価する。そして、そこから現在の問題点を明らかにするとともに、将来への方向性を示したい。
そこでの結論を要約すれば、企業経営の視点から見て現在の成果主義は導入の契機がコスト削減にあったこと、さらにバブル経済崩壊の中での緊急避難的な施策であったために、働く人の意欲や納得感、さらには長期的な意味で付加価値創造のための組織能力をそいでしまう可能性があることを指摘できる。そしてそれは、成果主義の欠陥という単なる部分的な問題ではなく、より大きな人材マネジメントのあるべき姿における構造的な欠陥を導いている懸念がある
将来的には、経営者はキャリアを通じて働く人の意欲を持続させ、「真の成果主義」とでも呼ぶべき、長期的な付加価値創造行動へと結びつく新しい評価・賃金制度を構築しなくてはならないと結論づけられる。

ここですね。

extract

1.90年代以降における人事施策の動き
(1)成果主義の導入

所謂、成果主義は一般的に80年代の半ば、大手電機メーカーにおいて導入されたのが始まりだと言われている。今回、ここで成果主義を問題にする背景には、90年代以降、賃金・評価制度における3つの変化が、ある意味で過去15年を「成果主義の時代」とでも呼べる時代にしているからである。

イ)成果ベース賃金の拡大

変化の第1は、多くの企業がこれまでにも増して、従業員の成果を賃金に結びつける仕組みを意図的に導入し始めたということである。

ロ)年功要素と能力要素の縮小・廃止

成果ベース賃金の拡大に伴い、第2の変化として挙げられる点は、従来の賃金・評価制度に存在した賃金決定要素の縮小である。

ハ)賃金格差の意図的拡大

第3の変化が賃金格差と変動の意図的拡大に対する努力であり、仕組みとして評価や賃金の格差や変動を拡大できる評価・処遇制度への移行が起こっている。

いうなれば、「成果主義」改革は評価において短期成果を重視し、評価結果を賃金とリンクすることで、賃金格差と賃金変動を拡大し、人件費に柔軟性を持ち込み、従業員(特に高い成果を期待できる人)の労働意欲を高めようとしてきた一連の努力だったといえよう。

その意図は達成されたのか。結論は達成されなかったということなのだが、どんな言い回しかな?

2.人事制度改革(成果主義)がもたらしたもの

過去15年、いわゆる成果主義は果たして当初狙ったような目的を果たしたのだろうか。
成果主義は何を狙ったのか。成果主義の導入目的を調べた調査(UFJ総研 2004)では、

  • 「成果に応じた適正な資源配分」(85%)を筆頭に、
  • 「やる気のある社員のモラールアップのため」(82%)
  • 「会社業績向上のため」(65%)と続き、
  • 人件費に関する項目(「人件費管理を容易にするため」)は16%

と低位である。

(1)導入目的に対する効果
イ)成果に応じた適正な資源配分

成果主義がもたらしたプラスのインパクトとして、企業側が当初意図した人件費の圧縮が挙げられる。厚生労働省の『平成16年賃金構造基本統計調査』では、マクロレベルにおいて従業員の報酬が減少、もしくは横ばい傾向にあることから、成果主義はホワイトカラー層を中心に人件費の変動費化や削減、あるいは個人業績部分に関してメリハリを通じた変動費化に貢献したことや、結果として生産性の向上に寄与したことなどが示唆される。……、賃金とポストが連動する成果主義は経営を圧迫する人件費の抑制につながり、適正な資源配分については一定の効果を上げたといえる。

ロ)社員モチベーションの向上
  • 日本能率協会のデータを見ると、従業員自身の回答によれば、「どちらとも言えない」と答える割合が約半数占めており、
  • 同じ質問に対して経営トップや人事部の約半数以上が「モチベーション向上につながっている」と回答している

日本能率協会のデータでは、「成果主義導入によって、社員個々の能力アップにつながっている」と回答した割合が約25%と低い。この結果から、成果主義の導入が働く人の成長実感に結びつかない、ひいてはモチベーション向上に結びつかないのは、人を育てることに関して何らかの問題があったためであることが示唆される。詳細は後述することとするが、成果主義導入によってモチベーションが向上しない、または低下してしまう要因として、先に述べた納得感の低下とともに、人材育成を巡る大きな問題が発生したと考えられる。

ハ)会社業績向上

これまでの調査結果は、おおよそ、成果主義のみでは企業の経営に対してはあまりに大きな影響を持ってはいないとの結論を出している

狙いはうまく達成できていないとのことよ。

(2)新たに指摘される問題点
イ)納得感の低下

いずれにしても、納得感は、成果主義の下で、大きく前進しているとはいえず、現状を見ると、十分な納得感のもとに成果主義が受け止められているとはいえない

ロ)組織力の低下

次に組織力の低下を指摘することができる。ここでいう組織力とは、組織として企業の戦略を達成し、業績を上げていくために組織として持つさまざまな能力だと我々は捉えている。成果主義を導入することによって組織力が低下するということは、経営者としては看過できない問題である。その問題を見てみると、

  1. 仕事の細分化・個人化、
  2. 個人間競争によるチーム力の低下、
  3. 組織統合力の低下が挙げられ、

いわば組織全般において問題が表面化してきた

成果主義の導入により、自己の業績達成に向けて個々人の動機が一層傾いたのである。それに伴い、これまでチームや集団の協働作業で成果を出す仕事形態から、個々人が競い合いながら成果を出す仕事形態へと変化しつつあるという事態も起こった。具体的に言えば、チーム内のメンバーでさえもライバルと見なして仕事をしなければならず、従業員は従来の企業間競争に加え、部門内・チーム内の競争という多次元の競争にさらされているのである。そして、JILPTの分析(図3-1-6)によると、成果主義導入により個人間の競争意識は高まるものの、意欲が高まらないという分析結果も提示されている。

こうした個人間競争過熱を制御すべき人である

現場マネジャーにおいても個人間競争が発生しており、……現場マネジャー自身が短期志向・個人志向に陥った場合、優秀な部下に対する仕事の集中化という問題が起こりうる。その結果、現場マネジャーから発生した問題が優秀な部下の疲弊、他の多くの部下に対する育成面での軽視等さまざまな問題にまで発展

以上のことを踏まえると、個人間競争の促進によって、職場における協働意識が低下していると考えられ、それがチーム力(チームワーク)の低下を生み出している。

ハ)人材育成機能の低下
  1. 能力向上インセンティブの低下
  2. 偏った目標管理による挑戦の阻害
ニ)現場の疲弊とプロセス管理の弱体化

成果主義のもとに目標管理制度が導入された。目標管理制度では結果の評価が過度に重視され、目標達成プロセスへの関心が薄れるという点が頻繁に指摘される。つまり、目標管理制度ではなく、結果管理制度という形での誤解や逸脱が起こっているのだ。このようにマネジャーがプロセス管理を行ないにくい状況下で、部下が必要とする支援(じっくり対話すること、スキルや知識を習得すること等)は十分に行われず、インプットのない中でアウトプットばかりを要求される“疲弊”状況が職場に拡がり、すでに長い時間を経過してきているのが現状であるといえる。

このことは、学校教育やあるいは塾などでの教育についても反省的に考えられるべきである。
とりわけ、教師集団への成果主義・差別的考課についてはよくよく慎重にしなければ、結局「仕事」としての教授だけではなく教師集団による訓育も崩壊したりゆがんだりすることになる。こうした教師諸個人と教師集団の質の低下の被害者は子どもたちである。


(総括)
以上のように、90年代以降における日本の成果主義は、人件費を中心とした資源の最適・再配分の観点では一定の効果があったと云えるが、本来は向上を目指したところの個人の意欲には逆にマイナスのインパクトを与え、組織力や育成機能にも解決すべき問題を残したことが理解できる。
なるほどこれは厳しいですな。
あとは、

3.今後の方向性 ・・・ 37
(1)人材マネジメントの再構築 ・・・ 37
(2)人材育成の視点の復活 ・・・ 39
(3)組織力の強化 ・・・ 42
(4)納得感・公平感・モチベーションの再評価 ・・・ 43
イ)導入プロセスにおける納得感の醸成 ・・・ 44
ロ)納得感を確保する施策 ・・・ 45
ハ)コミュニケーションの重要性 ・・・ 46
(5)仕事に対する内的動機づけ ・・・ 47

となっている。まあ、破れた箇所をうまく繕えよ、ということ。

90年代以降の非正規雇用の問題点

90年代以降増やしてきた非正規雇用の問題点、という設定あり。
extract

90年代以降のわが国企業の職場全体を見渡したとき、パートタイマー・アルバイト、さらには派遣社員契約社員、請負労働者といった非正規労働者の急増という現象を無視することはできない。
本節ではまず、企業サイドからみた90年代以降における就労形態の多様化の実態がどういったものであったのかについて概観し、その問題点を抽出する。

1.多様な就業形態の拡大
(1)90年代以降の動き
イ)非正規雇用の活用

総務省のデータによれば、90年時点の非正規雇用比率(非正規雇用者の役員を除く雇用者に対する比率)は約2割であったものが2003年に3割を超え、2005年には32.6%に達している。

このように、過去15年の間に急激な「非正規化」が進展したが、その内容を検討すると、90年代前半期と90年代後半以降で状況が異なっている。

①90年代前半期

正社員数が緩やかながらも増加基調を維持するもとで、それ以上のスピードで「パートタイマー」および「アルバイト」が拡大

なお、この時期、非正規雇用で働く若者、いわゆる「フリーター」が増え始めるが、90年代前半には、主に労働供給サイドの勤労意識の変化を主因とする現象として捉えられていた。当時から、企業の新卒採用抑制が正社員に就けない若者を増やした要因であったことは間違いないが、90年代半ば頃までは大卒就職者数自体はほぼ横ばい水準を維持しており、労働需要サイドの要因は余り深刻なものとは認識されなかった。

②90年代後半以降

正規社員が減少傾向を明確化する一方、

  • 第1に、コスト削減のために非正規雇用を活用するという(これまで必ずしも明確でなかった)スタンスの確立
  • 第二に、就労形態の内訳についてパート・アルバイト以外の形態が増加した。

まず、外部労働市場に関わる規制緩和が進んだことで、派遣労働者および契約社員が増加した。すなわち、99年に労働者派遣事業の対象業務がネガティブリスト化され、その後禁止分野の縮小・派遣期間の延長が進められた。そうしたなか、派遣労働者数(常用換算)は98年の31万人から2004年には81万人に増加した。また、有期雇用についての契約期間の延長が認められるなか、契約社員数も増加傾向をたどった。
この時期、請負労働者や委託労働者が増えたのも特徴的である。請負労働者とは、請負企業が受託した作業工程を行う労働者のことを指す。90年代後半期以降に増加したのは、製造現場における単純作業を低賃金の短期雇用者が行うタイプであり、グローバルな産業再編が進展するもとで強まった商品サイクルの短縮化とコスト削減の要請に対応するために、多くの製造企業が生き残りをかけてその活用を増やしたことが背景にある。また、2000年代に入ってからは、「インディペンデント・コントラクター」と呼ばれる、主に自営業者の立場で、複数の企業から専門的なホワイトカラー業務の委託を受ける人々も登場してきた。

  • 第3は、非正規雇用の活用について企業スタンスに二極化が生じた。

質的基幹化が進むパートタイマーが増える一方、従来型の「補助的パート」として位置づけられるケースも多く存在しており、質的にみた「二極化」が進んだことが、90年代後半以降の非正規化の特徴

90年代後半期は、若年就労環境が大きく悪化した時期であった点にもふれておく必要があろう。金融危機の発生・デフレの進行等を背景に雇用情勢が一段と厳しさを増した90年代末以降、新卒就職者数が減少傾向を強めるなか、非正規雇用者として働く若者が急増した。この結果、15〜24歳の正規雇用比率は1992年の78.9%から2002年には53.2%にまで大きく低下した。就労形態の内訳としては、派遣労働者契約社員で大きく増加しているほか、請負労働者として働く若者も増えた。彼らの中には“縛られない働き方”として自ら進んで選択したケースもあるが、正社員としての就職を希望しながらも、非正規雇用としての働き方を選ばざるを得なかった若者が多く発生していたのが実情である。

ロ)正社員タイプの多様化、正規・非正規統合への試み

ケースは少ない。

非正規雇用の増加は人材マネジメントに何をもたらしたか

と表題を書きつつ、人材「マネジメント」というのが本当に資本の側の言語だなぁと。

(2)評価
イ)効果:量的柔軟性・金銭的柔軟性の向上
①コスト削減

『毎月勤労統計調査』によれば、1998年から2004年までの期間において、パートタイマー比率の上昇により、マクロベースでみた平均名目賃金は年平均0.9%下押しされた

②人件費の変動費

 さらに、人件費の変動費化に貢献したことも指摘できる。とりわけ、製造現場における請負労働者は雇用調整が容易であり、商品サイクルが短縮化された製品の生産量を柔軟に調整するために、今や無くてはならない存在になっている。
以上を要するに、「量的柔軟性」「金銭的柔軟性」の面で向上がみられたことが、主に非正規雇用比率の上昇をその実質的内容とする、90年代以降に日本企業が取り組んできた雇用構造組み換えの成果であったといえる。

つまり、非正規化の増大・活用=労働者人格の物化の徹底成果だと。物化された労働者が「無くてはならない存在」というより「無くては製造できない材料」と言えるだろう。
このように徹底した物化、物化の徹底した労働者の陶冶・形成はどのようになされるか。物化されたことが使用価値になっている労働は労働者を陶冶しない。労働者を陶冶するのは物化された労働者が物化を否定し人間としての処遇を要求するときである。

光洋シーリング 請負労働者59人 直接雇用

JMIU

 http://www.jmiu.com/
  光洋ST派遣労働者・直接雇用ついに実現!
 http://www.jmiu.com/katudou/P20060801.htm

光洋シーリング 請負労働者59人 直接雇用かちとった 2006年9月2日(土)「しんぶん赤旗

 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-09-02/2006090201_01_0.html

貴重な一歩、おめでとう!


ロ)問題点:機能的柔軟性の不全・低下
非正規社員のモチベーション低下

2003年に実施にされた厚生労働省『就業形態の多様化に関する総合実態調査』によれば、「非正社員の活用上の問題点」として、50.2%の事業所が「仕事に対する責任感」を、37.4%が「仕事に対する向上意欲」を挙げており、……
一方、「基幹労働力化」が図られてきた非正社員……(は基幹であるが故にこそ)賃金水準をはじめとした処遇の正社員との格差への不満が高まっている。

②業務遂行上の障害の発生

「ノウハウ蓄積・伝承が難しい」「職業訓練が行いにくくなっている」「外部への機密漏洩の危険がある」が指摘されている。

③正社員像の多様化の遅れ

【職務・勤務地限定社員制度、短時間正社員制度】は処遇、企業方針の徹底の上で課題あり
【社内プロフェッショナル(新型専門職)制度】は浸透するかどうか不透明


(3)問題の所在

90年代以降今日までの「就業形態の多様化」の実態は、企業のコスト削減最優先スタンスのもとで、“正社員・非正社員の処遇格差を前提としたままでの「コスト削減のための非正規化」”の色彩が濃い
職場における非正社員の数が大幅に増えたのみならず、かつての「正社員−コア業務/非正社員−周辺業務」という構図が崩れ、コア業務に非正社員が就くケースが増加した。同時に、かつては正社員として十分な能力開発の機会が与えられた若い世代において、いわゆる「フリーター」という形で、必ずしも十分な成長機会の与えられない仕事に就くことを余儀なくされるケースが急増した。
「正社員−非正社員の二重構造」が残存するもと非正規雇用の量的拡大・質的基幹化が進展した帰結として、“仕事内容と人材タイプのズレ”が見逃せないほど大きくなった。しかも、正社員・非正社員の間には“高い壁”が存在し、両者の間の移動は難しい状況が続いてきた。その結果、フリーターとして働く若者や基幹化したパートタイマーを中心に非正規社員のモチベーション低下がみられ、チームワークの低下やノウハウ伝承の困難化など各種の業務遂行上の障害が発生することになったのである。

中間結論……成果主義賃金と非正規雇用の増大は人の物化であり、物化としての問題点が顕在化した

モチベーションの低下、納得感の希薄化、人の視点が見落とされたとか、育成が見落とされたとか言うが、結局労働者を費用としてのみ扱い、個別化し物化し、仲間とともに働く人間としては扱わなかったことが「問題点」として顕在化した、ということができるだろう。
それだけのことだ。それだけのことなのに、沢山引用して読んでしまいました。