▼ワーク・ライフ・バランスは実力主義の会社社会でこそ有意味である。

何が有意味かというと、実力主義の会社・社会でありながら女性に子どもを産ませ、いろいろ新しいことを考えさせることができるので、ポスト産業社会に労働力を注ぎ込み・労働者に商品を作らせ・購入させるというサイクルができるから。
ワーク・ライフ・バランスがワーク・シェアリングやワーカーホリックの克服、退職する団塊の世代の生きがいや、うれしい「少子化」の克服などに役立つのだろうと、とあれこれ夢想してしまった私がバカでした。

あとで読むと何のことか分からなかったので追記。
少子化対策としてのワーク・ライフ・バランス施策は、休職や時短を労働者に対して許すという企業の施策であるが、休職・時短は昇進・査定にひびくから、労働者はワーク・ライフ・バランスを歓迎しないという現状がある。
でもそれでは少子化が解決しない。どうするか。
休職・時短が昇進や査定にひびかなければ良い。つまり労働者の側はサボっていても結果を出せよと。企業は結果だけを見ろよと。逆に結果を無視して過程を評価するなよと。経過を無視して結果のみ重視する。それは「成果主義」だ。成果主義の人事考課は実績としてプラスの経験多数だ。労働者も結果を出せばよいので安心して休職できる。
だから、「成果主義」(=実力主義)は「ワーク・ライフ・バランス」に親和的である。年功序列は「ワーク・ライフ・バランス」に非親和的である。
少子化を克服するのは「成果主義」賃金であり・人事考課制度である。

●ワーク・ライフ・バランス施策の成功のポイントを提言/内閣府報告書

メールマガジン労働情報/No.270】
内閣府はこのほど、「少子化社会対策に関する先進的取組事例研究報告書」をとりまとめた。仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)施策に関する国内企業の先進的な事例や欧米諸国の取り組みなどを紹介。また、この施策の成功のポイントを「大企業と中小企業」「主な顧客が一般消費者か企業か」「人事評価制度が『成果主義』か非『成果主義』か」に分けて整理、提言している。
http://www8.cao.go.jp/shoushi/cyousa/cyousa17/sensin/index.html

ワーク・ライフ・バランス施策とは

2 わが国におけるワーク・ライフ・バランス施策の全体像
2.1  ワーク・ライフ・バランス施策の定義と類型
(1)ワーク・ライフ・バランス施策とは

「ワーク・ライフ・バランス」(work-life balance)とは直訳すると「仕事と生活の調和」となり、それに関する施策とは、労働者が仕事一辺倒ではなく、それ以外の生活とうまくバランスがとれるようにするための施策をいう。現在のところ、ワーク・ライフ・バランスに厳密な定義はないが、英国の貿易産業省では、「働き方を調整することによって、全ての人が仕事と仕事以外の生活について、充実感をもち、与えられた責任を果たせるようなリズムを見つけること」と定義している 。

2−1 ワーク・ライフ・バランス施策の類型

休業制度 育児休業
介護休業
休職者の復帰支援
休暇制度 看護休暇
配偶者出産休暇
年次有給休暇の積立制度
働く時間の見直し 勤務時間のフレキシビリティ(フレックスタイム制度/就業時間の繰り上げ・繰り下げ)
短時間勤務制度
長時間勤務の見直し
働く場所の見直し 勤務場所のフレキシビリティ(在宅勤務制度/サテライトオフィス制度)
転勤の限定
その他 経済的支援
事業所内保育施設
再雇用制度
情報提供・相談窓口の設置

ファミリーフレンドリーな施策が目立つけれども、たとえば考古学に興味のある人が何かの発掘現場に数週間張り付くようなことを認めてあげるとか、ワーク・シェアリングとの関係とか、「バカンス」とかそういうことはワーク・ライフ・バランスではないのかな。


「休んでるのに賃金払えるか」「休みと家計のバランスは自分で考えろ」

3.2.3 ワーク・ライフ・バランス施策と整合的な人事評価制度
ワーク・ライフ・バランス施策の活用を進める際に、従業員側にとって利用の障壁として挙げられるのは、休業制度や短時間勤務制度を利用した場合の「人事評価」への影響である。
◆休業や短時間勤務を理由としたマイナスの人事評価には「ペナルティ」性がある

給与に関しては、休業中は無給、短時間勤務の場合は短縮分に比例して減給という企業がほとんどで、「ノーワーク・ノーペイ」が原則である。しかし、人事評価も休業取得や短時間勤務を理由に下がるとすれば、その利用者は通常勤務者と比べて、給与と人事評価で「二重」にマイナスの処遇を受けることになる。すなわち、人事評価でのマイナスは、「ペナルティ」としての性格を帯びていることになる。

◆給与と人事評価の「二重のマイナス」、人事評価の「ペナルティ」性を排す工夫

このようなペナルティ性のある人事評価は、ワーク・ライフ・バランス施策の利用を当然阻害しよう。

(ペナルティ性排除の事例)
●休業中の評価は休業前2期・復職後1期の考課を平均(資生堂

●試験制度による昇格制度を採用しており、育児休業の取得は昇格に影響しない(エスアイアイ・マイクロテクノ:再掲)

●人事制度を改定し、職能資格による昇格制度に転換(河村電器産業:再掲)

勤続年数や在籍・滞留年数は昇格条件に含んでいない。

●勤務時間の短縮を織り込んで目標設定し、評価は公平に(富士ゼロックス社:再掲)

短時間勤務者の評価では、勤務時間に比例して設定した成果目標が評価基準とされ、その目標をどれだけ達成したかにより評価する。

◆ワーク・ライフ・バランス施策に整合的な人事評価制度は「成果主義
企業経営においては、言うまでもなく、能力と意欲が高い人材を最大限に活用することが重要である。したがって人事評価制度は、会社に最も貢献できる従業員を基準に、そうした者の意欲を阻害しないように設計されていることが望ましい。貢献度は評価すればよいのであり、処遇はそれに応じて決めればよいのである。
ワーク・ライフ・バランス施策とより整合的である人事評価は、やはり、勤務時間や勤続年数といった時間的要素ではなく、あくまでも従業員の能力とそれがもたらす成果を基準とする「成果主義」であると考えられる

労務管理としての「ノーワーク・ノーペイ」はそれで良いし、公正かもしれないけれど、では「ワーク・ライフ・バランス」というものが取り沙汰されてきた背景とは、何だったのかと思う。



少子化対策としてのワーク・ライフ・バランス

1.1  調査研究の背景と目
少子化対策の重要な課題である「働き方の見直し」のためには、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に向けた、企業の自主的かつ積極的な取組が不可欠である。
ワーク・ライフ・バランスに関する諸外国の先進的取組事例の調査をみると、ワーク・ライフ・バランス施策によって、従業員の生活の質が向上すると同時に、企業業績にも効果(メリット)があったと報告されている。

労働者世帯が安心して暮らせる・余裕を持って暮らせる、安心して子育てができるというイメージより「少子化対策」という「飼育」「繁殖」上の課題をクリアするための「アメ」というイメージしかもてない。
ノーワーク・ノーペイでも安心できる子育て環境・支援施策の充実を図る。勤め先で昇格しなくても働き甲斐を失わず、なおかつ子どもを大学にやれるだけの経済環境は失われない。そういうことを「ワーク・ライフ・バランス」というコトバに期待するのはナマケモノの甘えなのだろうか。
そう考えると個々の企業が「ワーク・ライフ・バランス」施策を、個別に(偶然的)、「企業業績にも効果」あることを期待して、実施するのではなく、社会・行政が自ら抱える勤労国民の教育や生きがい等をよくよく考慮して上から投網を打つような施策がなされてこそ勤労者国民にとっての「ワーク・ライフ・バランス」だと私は思う。少なくとも企業の「効果」を期待した行動に「ワーク・ライフ・バランス」を、全ての企業に求めるなんてかなり無理がある。



営利行動の一環としてのワーク・ライフ・バランス

考え方が営利ムキ出し

5 ワーク・ライフ・バランス施策のすすめ
民間企業がワーク・ライフ・バランス施策の主体となるには、それが企業経営にとって利益となるものであることが必要である。ワーク・ライフ・バランス施策に取り組んでいることが、市場競争において足枷ではなく、アドバンテージにならなければならない。
◆ワーク・ライフ・バランス施策に企業経営上の効果・利益は認められる

  • カナダでは1990年代に、「ワーク・ライフ・コンフリクト」(仕事と生活の衝突)が急増していることが問題として捉えられるようになった。……コスト試算では、カナダの企業は(ワーク・ライフ・コンクリフトによる)欠勤により年30億ドルのコストがかかっているとしている。また、ワーク・ライフ・バランスが崩れることにより医療にかかる費用が年間4億2,500万ドルに上るとしている。

ただ、利益とは効果から費用を引いた残差であり、ワーク・ライフ・バランス施策に何らかの効果があるとしても、それが投入費用を上回るものでなければ、ビジネス的には意味がない。
◆社会構造・経済構造の変化に照らしてもワーク・ライフ・バランス施策推進は必要
第一のマクロ的変化は、(少子化時代への突入である。)……労働力の供給が減っていく中で優秀な人材を確保していくには、ワーク・ライフ・バランス施策によって柔軟・多様な働き方を受け容れ、特に労働力率が相対的に低い女性の雇用を推進することが、鍵の一つになっていくと考えられる。
第二のマクロ的変化は、経済構造が「産業資本主義」から「ポスト産業資本主義」へと本格的に移行したことである。……ポスト産業資本主義的企業に重要なのは、ある特定のアイディアや技術を持った人材ではなく、新たな開発・開拓を次々と行い得る創造力を持った、その企業に特有な人的資産のネットワーク組織なのである。こうした組織は、構成員が次から次へと替わっては築くことはできない。優秀な人材が長く働き続けてくれることで初めてつくり上げることができる。そして、こうしたポスト産業資本主義に適した企業組織を構築するのに有効と思われるのが、ワーク・ライフ・バランス施策なのである。従業員にインセンティブ(ヤル気)を与えるものはまず金銭であるが、人の頭脳の中にある知恵を引き出し、やる気と創意工夫を活性化するには、金銭と同等あるいはそれ以上に、自由で独立性の高い労働環境ないし企業文化が重要と考えられる。また、金銭は誰が出しても同じであるから高給の提示による人材引き抜きに対抗することは容易でないが、独自の企業文化で惹き付けておけば人材の流出も防ぎやすくなろう。こうした企業文化を、ワーク・ライフ・バランス施策を通じて創造できるのである。

なんか、引用しててイヤになってくる。子育てのために休んだり、ワーク・ライフ・コンクリフトを回避・解消するのも全て企業のためである。主人公は企業。副主人公は子どもを産める女性。あとの脇役は働く人か買う人。それで社会も人生も成り立っている。それが経済。


成果主義」と 非「成果主義」では成果主義のほうが良い

成果主義とは、人事評価において、評価対象者の「保有能力」や仕事の「過程」よりも、仕事の結果としての「成果」を重視する考え方である。こうした考え方は、その仕事のやり方については各自に任せるという社風を醸成する。こうした社風においてこそ、柔軟・多様な働き方を個々の従業員の要望に応じて積極的に認めようというワーク・ライフ・バランス施策が受容されやすいのは、自明である。

成果主義は結果主義。結果主義は経過を問わない自由な風潮だ。結果主義は自由だ。ワーク・ライフ・バランスも労働者の「自由」を柔軟に認めたものである。だから「成果主義」と「ワーク・ライフ・バランス」は親和的だ。
結果だけを問う成果主義は、裁量労働制とも親和的である。

ワーク・ライフ・バランス施策は、仕事を行う時間や場所について「裁量範囲の増大」を図るものであるし、それぞれ多様な働き方をする従業員で業務を進めていくには「仕事分担の明確化」が欠かせない。そして、仕事以外の時間を拡大することで、家庭責任や地域活動や自己研鑽への注力を促進し、広い意味で自らの能力を育み伸ばす機会を従業員に与えるのである。

あたかも自由時間が増えるかのような謂いである。

成果主義がワーク・ライフ・バランス施策にとって整合的であるだけでなく、ワーク・ライフ・バランス施策が成果主義にとって、従業員の意欲向上や企業の活性化を促進するという点で有効なのだといえる。換言すれば、成果主義の人事評価制度をもつ企業がワーク・ライフ・バランス施策を推進しやすいだけではなく、そのような企業こそワーク・ライフ・バランス施策を推進すべきなのである。成果主義とワーク・ライフ・バランス施策は、「相互補強関係」とでもいうべき関係にある。

そんなに言い切って良いのか。成果主義賃金なのにワーク・ライフ・コンクリフトがある場合はどうなのか。

成果主義に問題が多々あることは否定できないが、年功賃金制の問題が看過できないこともまた確かである。年功賃金制と表裏をなす終身雇用制が信頼を失いつつある中、勤め続ければ(生産性の上昇率を超えて)上がっていく給与が人材を企業に惹き付けつなぎ止める効果も弱まっており、優秀な人材の確保のためには、従業員が挙げる成果に対して、よりリアルタイムに(将来の昇給ではなく今の給与で)応えなければならなくなっている。さらに、「ポスト産業資本主義」の今日においてビジネスに求められる創意工夫に溢れた人材は、金銭的なインセンティブのみならず、「より自由な職場環境」を求める傾向にある。

日本型雇用・賃金制度を暴力的に破壊したことは問わず、「信頼を失いつつある」という。うまい。
私のように「ポスト産業社会の時代にビジネスに求められる創意工夫に溢れた人材」でもなければ、子どもを産むこともなく、とりたてて「結果」が問われるというわけでもない人は「ワーク・イズ・ライフ」とドップリ漬かってなければだめなのか。

成果主義もワーク・ライフ・バランス施策も、目指すところは同じく、優秀な人材の確保による全社的な人材力の向上、それによる企業の活性化と業績向上なのである。したがって、ワーク・ライフ・バランス施策推進のために成果主義を導入する企業は、各々をバラバラに進めるのではなく、何れも総合的な人材マネジメント改革の一環として、その企業経営上の目的を明らかにした上で取り組んでいくことが重要である。



少子化対策と言っても、政府としては優秀な人材以外にはあまり興味がない。ということがわかった、わかった、わかってました。

http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20060902#p2 に投稿したコメント
ワーク・ライフ・バランスという施策を導入するのは「少子化対策」のためらしいです。労働者の休養や教養、家庭生活の回復ということが直接の目的ではなさそうです。
それでも、雇用されながら出産・育児が容易になったり、男性正社員が早く帰宅できるようになれば、そのことだけでなく、若い世代にもっと正職員の座が回ってくる(ワーク・シェアリング)だろうから、悪くない施策だと思ってこのコトバを追いかけていたのですが。
政府の出したのは、
・出産だろうが育児だろうが休めば賃金出せないんだから、それが「損」だと思うなら休むな
・或いは休んでも結果だけで勝負できる「成果主義賃金」が普及すればいいんだろ
という、「調査」と称しながら「成果主義賃金制度」を勧奨する文章だったのでがっかりしてしまいました。

こういう理解でよろしいのかな>自分