▼日本経団連「経労委報告」

メールマガジン労働情報300号より

日本経団連は12月19日、07年春闘の経営側の方針となる経営労働政策委員会報告「イノベーションを切り拓く新たな働き方の推進を」を発表した。
「横並びで賃金水準を底上げする市場横断的なベースアップは、もはやありえない」としたうえで、個別企業レベルの賃金決定は「自社の支払い能力を基本として、個別労使で決定すべき」だと強調。好業績で得られた短期的な成果は賞与・一時金に反映することが基本との考えを示している。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/091.html

▽連合事務局長談話
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/danwa/2006/20061219_1166524144.html

……前回まで触れていた「人間の顔」が見えない印象が否めない。

働く貧困層の問題など眼中になく、「景気回復は、企業部門から家計部門に波及しつつある」という現状認識は、わが国社会のどこをみていっているのか、理解できない。

多くの職場では、長時間労働を余儀なくされる正社員と、労働条件が低く、企業の都合に合わせて便利に使われるパートや派遣、有期、請負などの労働者への「働き方の二極化」が進み、「現場の人材力」が低下している。それは、長期的視点に立った「人への投資」を軽視してきた人事政策の弊害に起因するものではないか。

 また、……「働き方の二極化」を放置したまま、使用者に使い勝手のよい働かせ方を拡大することしか念頭にない提起であり、ましてや、ホワイトカラーイグゼンプションの導入は言語道断である。

我々は、毅然と成果配分を求めていく。

全労連事務局長談話
http://www.zenroren.gr.jp/jp/opinion/2006/opinion061219.html

 大企業のもうけ拡大による経済成長を追い求めるため、雇用、労働、賃金の「弾力化・柔軟化」や「個別化」を主張し、それらを実現するための後押しを政府に求め、労働者と労働組合に屈服を迫っている……。

 全労連は、この国の社会のあり方、労働者・国民の生活に大きな影響を持ち、責任を負っている財界が、格差と貧困の拡大、青年層を中心とするワーキング・プアの増加など、社会のゆがみをさらに深刻にすることが確実な「経労委報告」を出し続けることに抗議の意思を表明する。
……
 「経労委報告」では、「公正な競争の結果として経済的な格差が生ずることは当然」とまで言い切っているが、貧困ラインさえ下回る非正規労働か、過労死におびえる正規労働かの究極の選択を迫ることが、「公正な競争」とは到底考えられない。
 「経労委報告」で見過ごすことのできないもうひとつの点は、さらなる法人税の実効税率の引き下げを求める一方で、年金・医療・介護の社会保障制度の「改革」を求めていることである。大企業のもうけの確保のための「支援」を国に求めながら、労働者・国民には「自助努力」を求め、「公的な制度に依存する姿勢の是正」を説教するという矛盾は、個人消費をさらに冷え込ませ、景気回復に逆行するだけでなく、日本社会の安定を損なうものである。
……
 全労連は……また青年や非正規の仲間に、まともな雇用と生活できる賃金をめざして職場・地域から、最低賃金や初任給の改善、非正規雇用労働者の均等待遇、青年の雇用拡大などを広く社会にむけてアピールを強める。その中で国民との共同の輪を広げながら、財界・大企業の横暴をただすたたかいをすすめていく決意である。