▼生活保護行政とケースワーカー

間接伝聞情報。
T市では今年から生活保護ケースワーカーを全員1日8時間週4日勤務3年契約の非常勤職員としたらしい。
ケースワーカー一人当たりの担当ケースは150件。
これでどうしてまともな生活保護行政・自立支援ができるというのか。

http://d.hatena.ne.jp/ost_heckom/20070601

この真偽について、問い合わせをしてみた。

☆早速ですが、結論から言いますと、お問い合わせの「T市での生活保護ケースワーカーの非常勤化」の「伝聞」については、吹田市については事実ではありません。
 しかし、楽観視できない状態が、全国でも、とりわけ大阪でも広がっていることも事実です。
厚生労働省は、福祉事務所での実施体制に関わって、都市部では一人のケースワーカーの担当世帯を80世帯にするよう求めています。少し古い資料ですが、平成17年4月現在、この「80対1」の「標準数」を守れている府下自治体は1/3にとどまっています。
なかでも、大阪市では標準数である848人に対し、配置は471人、不足数は実に376人、堺市でも標準数150人に対し、配置は95人と55人不足など、府下全体の不足数は582人に及び、全国でも低い配置となっています。
☆こうした状況が引き起こされた背景には、平成11年に施行された「地方分権一括法」の中で、生活保護の実施体制について、「都市部80対1」を「法定数」としていたものを、拘束力の弱い「標準数」に「規制緩和」したことがあります。
 また同時に、小泉「構造改革」の眼目として、「小さな政府」が謳われ、全国の自治体でいっせいに職員削減が進んだこと、とりわけ大阪府下の自治体では1/3が非正規職員に置き換えられたことが輪をかけています。
☆こうした状況の中、大阪市での150人を始め、堺市や府下の衛星都市で、非正規の職員を雇用し、「訪問」・「事務補助」と称して、事実上正規のケースワーカーの不足分を補おうとする動きが徐々にすすんでいます。
生活保護ケースワーカーは、ご存じのように、様々な事情で生活に困窮する人に対し、憲法25条に基づく生存権を保障するとともに、生活保護法のみならず、様々な諸制度を活用し、本人を取り巻くネットワークを作りながら、困窮に陥った原因の解決や自立した生活が営めるような援助をすすめることを職務としています。従って専門性とともに、経験に基づく熟練が求められる仕事です。
 非正規のケースワーカーの人たちも、この仕事をしっかりと果たそうと努力はしておられますが、与えられた「職務権限」に限界があること、雇用年限(一年契約や長くても3年契約など)があり、継続性や熟練の確保が困難なこと、正規職員に比べ低い賃金・労働条件におかれていることなど、様々な問題点が指摘されてきています。
☆なお、自治体をとりまくこうした事態の進行について、私たち大阪自治労連として、昨年5月に、「自治体職場からの告発レポート」を発行しています。大阪自治労連のHPにも掲載されており、生活保護職場の実態のレポートも掲載をしています。ぜひ、ご覧ください。
【リンク先】http://www.osaka-jichiroren.jp/tihoujichi/index.htm →「自治体職場からの告発レポート」→「生活保護

なお、この返信については、ブログ等で公開していただいて、結構です。

お忙しいところ、どうもありがとうございました。

自治体労働者、保護課の労働者、保護課の労働条件の悪化・労働強化は、被保護者の締め付けにも転化しうる。それにしても、ケースワーカーになると忙しくてたまらないと思われる。
頂いた返信の後半に関連して、私見を付加させていただくと、自治体の生活保護・福祉の職場に必要なのは(これはきっと全国共通だと「懸念」するのだが)、福祉・公務労働者の労働の集団性ではないかと思う。不適当な事案に対する対処、こまごまとした制度への精通、福祉労働者としての専門性・熟練の組織的確保のためには、自由な職場でなければならない。全ての職員にとって福祉の職場、保護課の職場が頼れる職場でなければならない。外回りから帰ってきて相談すると元気が出る、会議が終われば元気になる職場でなければならない。ケースワーカーが職場でそれぞれ孤立していてはならない。事例検討会が継続的に定期的に自主的に開催されるなどしてしかるべきである。そのようなことができる自由と余裕が必要である。と思う。

大変な職務の一つではあるが、ご奮闘いただきたいものである。