▼少子化の主因は行き過ぎた個人主義的風潮ではない、という調査結果

長期の景気低迷が少子化に与えた影響〜男性の就業環境からのアプローチ〜2007年2月27日
株式会社 日本総合研究所 調査部 ビジネス戦略研究センター
http://www.jri.co.jp/thinktank/research/category/business/2007/jri_070227.pdf

3/12 追記
なお、調査したのは日本総研にあらず。
例えば、国立社会保障・人口問題研究所第13回出生動向基本調査「結婚と出産に関する全国調査 独身者調査」の結果概要などもこれを示唆する結果。
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou13_s/point13s.asp


要旨

  • 出生率の変動要因は、①女性の有配偶率(結婚率)の変動、②有配偶女性による出生率(夫婦出生力)の変動、③非嫡出子出生率の変動、の三つに分解することができるが、国立社会保障・人口問題研究所の試算によれば、1975年から2000年までの合計特殊出生率の低下のうち、約7割は有配偶率の低下(晩婚化、非婚化)で説明できると分析されている。
  • 2005年の有配偶率をみると、25〜34歳の女性では1990年に比べ約20%ポイントも低くなっている。
  • 1990年と2005年の有配偶出生率を比較すると、むしろ2005年の方が上回っている年齢が多い。
  • 有配偶率が低下した原因は、これまで主に女性の立場から、結婚に対する意識の変化や女性の社会進出の拡大といった「社会的要因」や、育児休業制度、保育施設の不備といった「制度的要因」などが指摘されることが多かった。
  • ①女性では就業状況が有配偶率に及ぼす影響は不明瞭なのに対し、②男性では就業者の有配偶率は高く、非就業者の有配偶率は低い
  • 男性の就業率が低下し、長期の景気低迷により所得環境の将来展望が描きにくくなったため、有配偶率と出生率を低下させたというルートが存在している。
  • 1990年以降の就業環境の悪化が出生率を押し下げたインパクトを試算すると、2005年時点で、年間出生数でみて約10万人合計特殊出生率でみて0.12ポイント下押しされているとの結果。

この調査によれば、
「家族・地域の絆再生」政務官会議PT中間とりまとめ
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2006/0516seimukan_pt.html
に言われるような、

今日の深刻な少子化の原因の一つとして、過度に経済的な豊かさを求め、個人を優先する風潮があると考えられる。家庭生活よりも職業生活を優先させ、個人が自らの自由や気楽さを望むあまり、生命を継承していくことの大切さへの意識が希薄化し、「結婚しない」あるいは「結婚しても子どもを持たない」方が、経済的、時間的な制約に縛られることがより少ないという考え方を背景に、非婚化、晩婚化、少子化が進んでいるという側面は無視し得ないと考えられる。

「無視し得ない」からこれを叩くというキャンペーンは、その「少子化の原因」の認識は的外れということになる。