▼査道炯「日本における中国人出稼ぎ労働者と政策課題」2003年11月

http://www.tafjapan.org/japanese/forums/12-11-2003/zha.pdf
これを読むと中国側・日本側の経緯が簡単に説明してある。やはり歴史は本質を暴く。

要約

中国側の経過

 中国人労働者が海外に出ているのは何も最近のことではない。
 50年代から中国は労働力の輸出を始めた。80年代の初めまでは第三世界への無償労働力援助が中心であったが、1990年代に入ってから、いっそう盛んになり「国際競争力」を持つ労働力輸出大国となった。
 中国政府は90年代はじめには民間リクルート会社の設立を認めるようになったが、人身売買等の犯罪の温床にされやすかった。1998年には人民日報は

  1. 雇用斡旋仲介人の全てが政府の正規の認可を受けているわけではない
  2. 手数料が法外な場合が多い
  3. 海外での高給の約束は絵空事の可能性がある
  4. 海外での労働条件や付加給付を予め明確にしておくことが大切だ

などと注意を呼びかけたほどだ。


 1994年、中国の対外貿易経済合作部(MOFTEC)は渡航に先立つ訓練事業を開始し、96年には義務化された。だが、99年1月以降こうした訓練がされているかどうか合作部は監督していない。
 日本に渡航する中国人労働者は

  1. イデオロギー教育
  2. 海外の習慣・エチケット
  3. 日本入門
  4. サバイバルのための日本語

などを始めとする訓練を受けることになっているが、雇用関係の法律がどうなっているかなどは殆ど学ばれず、日本到着後は「現状を乱すな」「日本の習慣に従え」という助言がなされている。

日本側の経過……安価な労働力としての期待

 日本の側は1990年の出入国管理法及び難民認定法改正以降、合法的に大量の中国人労働者が「研修」という在留資格で入国するようになった。
 91年法務省、外務省、通産省などが共管する国際研修協力機構(JITCO)を設立。JITCOは外国人労働者の受け入れ、企業への派遣、労働法令順守の監督を行う上部機構である。同機構設立の目的は中小企業が直面する労働力不足、とりわけ地方の中小企業の労働力不足の緩和にある。
 92年にはMOFTECとJITCOとが相互の窓口になったのである。

 原則的には、JITCOが受け入れる外国人労働者は、日本で1年間技能を学び、その技能を身につけて帰国する「研修生」とされている。一般従業員が給与を支給されるのに対し、研修生には月々少額の手当てが支給される。また、一般従業員には雇用保険労災保険が適用されるのに対し、研修生には事故等に備える特別保険が適用されるだけである。
 1993年、日本政府は技能実習、すなわちオン・ザ・ジョブ・トレーニー(OTJ)制度(実習生制度)というもう一つの労働者受け入れ制度を導入した。
 公式には、研修生と技能実習生の受け入れは技術移転を行うことによって途上国の発展を助ける開発援助だとされている。
 実習生制度では、外国の非熟練労働者が3年間日本に滞在することができ、時間外労働についても割増賃金が支払われる。だが実習生の月額賃金は、同じ仕事に当たる日本人労働者に比べずっと低い。
 つまり、雇い主にとっては、低賃金で働く外国人労働者を雇い続けることが利益につながり、外国人労働者にとっては所定外賃金を稼げるというわけである。長年の間に、研修生と実習生の区別に関する規定は次第に厳格ではなくなってきた。現在では、研修生は資格テストに合格すれば実習生として引き続き滞在する申請を行える。実習生もまた、滞在期間を3年延長できる。
 したがって、原理上、出稼ぎ労働者は合計7年間日本で賃金を受け取りながら「研修」と「実習」を受けることが可能なわけである。
 ほかでも指摘されていることだが、この二つの制度はいずれも現実には日本人が就きたがらない汚く、危険で、きつい、いわゆる3Kの職種に進んで就く外国人労働者の受け入れ制度と化している。
 JITCOは中国その他外国人「研修生」が日本の労働市場に参入する多様なチャンネルの一つに過ぎないことも忘れてはならない。

 日本の労働力不足を補うため中国人労働者を日本に受け入れることを目的に1986年に設立された財団法人日中技能者交流センターをはじめとする他の上部機構と比較すると、JITCOの特徴は中国の非熟練労働者を日本の労働市場に参入させる経済的必要性が日中両国政府に共通に認識されているという点にある。

 例えば2001年3月現在、中国側では8つの国家機関、国、地方、市レベルで107組織がJITCOのパートナーとして協力している。
 同じ「外国人の研修」でもJICA(ジャイカ)のような国が支援する研修プログラムには予算上の問題がないので外国人研修生の虐待もめったに起こらない。

 
 また、姉妹都市提携に見られるように日中間の「地方レベル外交」も進展し、姉妹都市関係での交流自体が日本の地元企業が中国人労働者を「研修生」として受け入れるための口実となっている場合も多い。

 いずれにしても、中国人労働者にとって7年間も出稼ぎできるJITCOのチャンネルは大変魅力的である。そこから有効期限が来ても残留するものや、契約期間未満で不法に残留する者が発生している。

中国人労働者の処遇の問題の背景に労働力輸出の制度上の問題点

 例えば、中国人実習生が全国生鮮食品ロジスティクス協同組合(同組合は水産加工会社に実習生を派遣)を相手に起こした1998年の訴訟は、2001年1月に千葉地裁での判決が出され、二人の被告に労基法違反と業務上横領の有罪判決が出された。
 山東省威海市の国際交流センターと協同組合の間では次のような取り決めがあった。つまり、協同組合は実習生に払う賃金から、敷地内に居住することに伴う(日本側の)雑費と、センター(中国側)に支払われる管理費帰国後に実習生の支払われる分として一定の金額を差し引くこと。
 これにより、契約書では月々9万6千円の賃金が雑費と管理費の天引きで6万1千円となり、さらに帰国後センターから実習生に支払われるという了解の下、2万4千円が「預り金」として天引きされた。残金3万7千円しか実習生は月々受け取れなかった。
 実習生の訴訟は、最後の2万4千円の「預り金」が実際には支払われていなかったことも理由の一つである。

以下、略

2003年だが、コンパクトによくまとめられている文章なので読みやすい。
われわれにとっての問題は、日本の労働運動がこうした外国人の低賃金・3Kでの就労規制緩和という既に10年を超えて実施されている現状と労働者とにいかに関わっていくのかということだろう。



例1:首都圏商工建設協同組合

FIDELL アウトソーシング http://os-matching.fideli.com/osmatch/m/detail/pro/14565/index.html
中国人研修生の斡旋の広告

商品・サービス内容:中国人研修生専門に10年間、研修生受入れ事業を行っています。地方の真面目で純朴な若者が、貴社の技術者不足を解消し、経営コストの削減に役立ちます。
特徴・特色:日本政府三省の認可を受けた、全国規模の異業種団体です。入国管理局と直接やりとりを行いますので、ビザ発給までの期間が短縮できます。最短で一月半で入国した実績があり、標準でおよそ3〜4ヶ月での来日が可能です。
中国側の研修生派遣機関は、中国政府及び日本の(財)国際研修協力機構の認定を受け、かつ、日本国内に駐在員が常駐している優良機関を厳選しています。
月組合の職員が研修生を訪問し、会社側とのコミュニケーション不足の解消や心のケア、技術指導を行っていますので、これまで事件・事故が発生したことはありません。また、事件・事故の発生防止のために万全な体制を整えています。

もう、受け入れ業者にとっては、中国人研修生という商品は、安価な労働力であること以外の何ものでもない。外にはメリットも国際貢献とかも一切宣伝する価値すらない。
ムキ出しですね。



例2:中部ESCO 中国人研修事業

http://www.c-esco.jp/
受け入れ側のマニュアルや準備すべき宿舎の備品など、リアルです。
青年たちがモクモクと日本語の研修を受けている写真などを見ると、いろいろとかわいそうなことばかり想像してしまいます。

中国人(外国人)研修生とは安価な労働力

17日の日記は適当に想像で書いたのだが、やっぱり安価な労働力として、ひとつの商売になっているのですね。中国人研修生の斡旋・受入れということが。
安くて従順で、病気になったら取り替えます。そもそも病気にならないようにしています。大丈夫です。その上、期限がありますから、どんなことがあっても日本におれなくなるから大丈夫。


追記

8/21に査道炯「日本における中国人出稼ぎ労働者と政策課題」をプリントアウトして読んでみたんだけど、「これもひどい」。
どうすればよいか、私にはよく分からない。例えば中国人研修生の処遇を改善すれば、それでも日本人より低い賃金であろうから、ますます中国からの不法な流入が増えるでしょうね。
といって、今更取り締まって入り口を絞ったり取締りを強化すれば、裏口からの入国者が増えるだけでしょうね。
外国人の就労そのものを制限すればよいのかしら? それも排外的な発想ですね。いずれにしても、最賃未満の賃金とか、無制限な残業とか、雇用関係の法律はきちんと守らせる、ということが重要ですね。
それと、外国人にもっと労働諸法を知っておいて貰うこと。合法的な示威行為や争議のルールについて教えておくこと。研修生としても実習生としても労働者としてもきちんと尊重すること。
入国就労、研修・実習の事前審査を厳しくすること。