▼外国人研修制度についての勉強……「これもひどい!」

中国人の研修生の賃金が低いという記事が報道されてからすぐ、殺人事件まで発生。

中国籍の研修生が刺し?3人死傷…千葉・木更津 読売オンライン

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060818ic31.htm

3人刺され1人死亡 容疑の中国人研修生も病院へ 千葉 asahi.com

http://www.asahi.com/national/update/0818/TKY200608180374.html

男女3人刺され1人死亡 殺人で中国人の男を捜査 共同通信

http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20060818/20060818a4160.html

<男女3人死傷>容疑の男も病院に収容 千葉の養豚場 毎日新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060818-00000125-mai-soci&kz=soci

千葉県木更津市の「森本畜産」で殺傷事件。直接の関係者は以下の4人。森本畜産の人は無傷。
 農業協会職員 62歳男性:死亡
 派遣会社社員 53歳男性:重症
 中国人の通訳 44歳女性:重症
 容疑者研修生 26歳男性:殺虫剤か何かを飲んで治療中

 容疑者の男は4月から、農業研修生として4月から住み込みで働いていた(養豚場で研修を受けていた)が、研修開始から1週間ほどで、まじめに仕事をしなるなど、仕事の態度が悪いことから、被害者3人が帰国を説得するために訪れ、トラブルになったらしい。
 男の身分は「同県成田市内の人材派遣会社から養豚場に派遣されていた中国籍の農業研修生」(共同通信)ということのこと。
 事件の二時間ほど前の18日午後3時ごろ、森本畜産を訪れた同県富津市の会社員(33)は「中国人研修生は、『賃金が安い』と腹を立てていた。思い詰めたような顔をしていた」と話していた。

いったい外国人研修生度とは何か、研修生は「派遣」されて「賃金」を貰うようなものなのか。ネット検索で調べてみた。
感想は「これもひどい!」

出稼ぎの日本側窓口──財団法人 国際研修協力機構//しかし、窓口のひとつにすぎない

http://www.jitco.or.jp/

失踪する研修生

いきなり、What's New !欄には、「研修生・技能実習生の失踪防止に強力に取り組んでください −失踪者が増加しています− 2006年7月」の文字がブリンク中。
http://www.jitco.or.jp/j_info/sissouboushi.htm
http://www.jitco.or.jp/j_info/sissoukaitei.pdf

……来日直後に失踪するなど、最初からこの制度を悪用した例もありますが、失踪者の多くは希望に燃えて来日したにもかかわらず、待遇に不満を持った、あるいは「もっと稼げるところがある」などの甘言に乗せられ、失踪して不法就労しているのが実情と思われます。
 法務省が2005年度に発表した不法残留者数の推移では、在留資格「研修」の不法残留者数は、1998年以来3,000人を超えており、2000年、2001年と若干の減少は見られるものの、2002年より増加に転じました。2006年は3,393人と減少傾向を示しましたが、依然、在留資格別不法残留者の上位5位に入るほどになっています。
 また、技能実習生の失踪者については、2005年度は再び増加し1,456人となり、最も多くの失踪者を出した2003年度よりは少ないものの、減少した2004年度より19.4%の増加になりました。この結果、4年連続で1,000人を超える失踪者が出ていることになっています。
 国籍別の失踪者数では、

の順となっており、ベトナム人が前年に比べて40人あまり減少しているのに対して、中国人が210人あまり、インドネシア人が50人あまり増加しています。その他の国に関しては大きな変化はなく、前年度と同様になっています。

さて外国人研修制度とはどのような制度なのか。

制度の沿革
日本では1980年代末、少子高齢化の進展、ボーダーレス社会の出現、高度情報化の進展等により、外国人労働者問題にどう対応するかという問題が政治、経済、社会等の場で大いに議論されました。
 その結果、日本国政府は1990年に従来の研修制度を改正し、日本が技術移転により開発途上国における人材育成に貢献することを目指して、より幅広い分野における研修生受入れを可能とする途を開きました。
……
 さらに、日本国政府は、研修制度の拡充の観点から、1993年、研修を修了し所定の要件を充足した研修生に、雇用関係の下でより実践的な技術、技能等を修得させ、その技能等の諸外国への移転を図り、それぞれの国の経済発展を担う「人づくり」に一層協力することを目的として技能実習制度を創設しました。

この、「雇用関係の下で」というのが、結果としては外国人研修生を低賃金労働者として「受け容れる」吸込み口となっているようだ。

外国人研修制度 
 外国人研修制度は、諸外国の青壮年労働者を日本に受け入れ、1年以内の期間に、我が国の産業・職業上の技術・技能・知識の修得を支援することを内容とするものです。
 入管法上の在留資格は「研修」です。
● 研修生を受け入れることのできる受入れ機関
(1)企業単独型研修の受入れの場合
 海外の現地法人、合弁企業、または外国の取引先企業(一定期間の取引実績が必要)の常勤職員を研修生として受け入れる日本の企業
(2)団体監理型研修の受入れの場合
 日本の公的な援助・指導を受けた商工会議所・商工会、事業協同組合等の中小企業団体、公益法人などが受入れの責任を持ち、その指導・監督の下に研修生を受け入れる会員・組合員企業
●研修の対象となる業務
 修得しようとする技術・技能等が、同一の作業の反復(単純作業)のみによって修得できるものではない業務です。
● 研修生の処遇
研修生向け処遇通知書の交付
 受入れ機関は、トラブルを未然に防止し適切な処遇を行うために、研修生に対し研修内容、研修時間、研修手当等に関する処遇について文書で通知しなければなりません。なお、研修生は、労働者ではないので、時間外研修や休日出勤による研修をさせることはできません
研修時間の取扱い
 研修は、受入れ機関の通常の労働時間内に実施することが適当であることから、原則1週40時間を基準としてください。時間外・休日研修は許されていません
研修手当の適正な支払い
 研修手当は、研修生が我が国滞在中の生活に要する実費(食費、衣料費・教養娯楽費・電話代等のその他雑費)として支給されるものです。この研修手当は、受入れ機関が研修生本人に直接、全額、毎月一定期日に支給しなければなりませんが、入国時に当座の生活資金として研修手当の一部を支払ってください。
研修生のその他の処遇
 研修生は労働者ではないため、研修中に事故や疾病が発生した場合、労災補償は受けられません。

制度活用上の留意点
 外国人研修・技能実習制度は、単純労働力の受入れ対策ではないことに十分留意してください。

より詳細・正確には
http://www.jitco.or.jp/pdf/JITCOpamphlet.pdf
のパンフを参照のこと。

2.2004 年技能実習生賃金実態

(1)職種別就業者構成について
技能実習生全体の就業上位3 職種は、鄯)繊維・衣服関係、鄱)機械・金属関係、鄴)溶接となり、昨年と同様な結果となった。
②男性技能実習生の就業上位3職種は、鄯)溶接、鄱)機械・金属関係、鄴)建設関係、女性技能実習生の就業上位3職種は、鄯)繊維・衣服関係、鄱)機械・金属関係、鄴)食品製造関係となっており性別による明確な差が見られた。
③各性別における上位3職種の構成比率は、男性技能実習生が73%であるのに対し、女性技能実習生は86%となっており、女性技能実習生における職種集中度合が高いことが伺えた。(特に、女性実習生の繊維・衣服関係職種に占める割合が54%と集中度合いが著しい)
(2)職種別・性別・受入れ形態別平均支払賃金額について
①2005 年調査において全職種平均支払賃金額は164 千円となり2004 年比1 千円の微増に留まった。
②性別では、女性技能実習生の平均支払賃金額が144 千円と昨年比6 千円増加したのに対し、男性技能実習生の平均支払賃金額は188 千円と昨年比12 千円減少した。
また、昨年62 千円に拡大した男女の平均支払賃金額格差は、44 千円に縮小し、一昨年レベル(37 千円)に近づいた。
③職種別・性別平均支払賃金額は、溶接男性が200 千円と最も高く、繊維・衣服女性が134 千円と最も低かった(回収した各技能実習生総数が全体の1%以下の職種を除く)。
④職種別平均支払賃金額においても、溶接が200 千円と最も高く、繊維・衣服が137千円と最も低く、性別平均支払賃金額結果を反映したものとなった。
⑤受入れ形態別の平均支払賃金額は、企業単独型が174 千円、団体監理型が156 千円となった。受入れ形態別・職種別平均支払賃金額は職種によりばらつきが見られた。

建前上良くわからないのは、言わば半ばボランティアで研修をさせてあげるような事業のように読めるが、「制度活用上の留意点:外国人研修・技能実習制度は、単純労働力の受入れ対策ではないことに十分留意してください。」とあることだ。安価な労働力である研修・実習生を単純労働でない労働に従事させ、必要事項について充足すればよいということか。
低賃金で働くということ以上においしいことが何かあるのか、良くわからない。中間斡旋団体には年間30万円〜50万円の援助金が出るらしい。

なお、JITCOの取扱人数等は、決算事業報告に詳しい。
http://www.jitco.or.jp/contents/jigyo_kessan.htm
http://www.jitco.or.jp/pi/2005jigyouhoukokusho.pdf
また、先述のパンフの32ページにも経年的な数字が掲載されている。

後述するけれど、外国人は1年の「研修」の後、審査を経て3年+3年の「実習」に就くことができる。
2005年度の人数は以下の通り。

中国 インドネシア フィリピン ベトナム タイ その他 合計
研修生 46,478 3,309 2,575 2,361 1,152 975 57,050
技能実習移行申請者数 34,037 2,630 2,193 1,491 369 204 40,960
失踪実習生数 748 329 311 27 26 15 1,456

経年的には下の通り。次の資料で詳論される。

年度 JITCO支援研修生 技能実習移行申請者数
1991 160
1992 8,067
1993 13,440 1,164
1994 12,879 2,138
1995 18,264 3,611
1996 23,078 5,339
1997 28,011 9,318
1998 26,075 12,437
1999 25,631 12,442
2000 31,898 16,107
2001 37,423 22,268
2002 39,724 22,997
2003 43,457 27,233
2004 51,012 34,816
2005 57,050 40,499

それにしても大変な人数である。村落丸ごと輸入しているのと同じ、もしくはそれ以上の数だ。しかもこれはJITCO取扱い人数のみであるから、他のルートや非合法ルートも合わせると、さらに膨大な人数となろう。
事前研修を受けている外国人の青年たちの写真を見ていると、昔の集団就職やブラジル等への移民などで見知らぬ土地・見知らぬ仕事に適当なガイダンスだけで赴いていく、不安や期待や或いは悲しみや解放感や、いったいどんな気持ちなのだろうかとこちらの胸の内がぐちゃぐちゃになってしまう。