▼「愛国」子ども育成条例案可決:佐世保市議会

 佐世保市議会は28日、6月定例会最終本会議を開き、「郷土や国を愛し」との文言を盛り込んだ「市子ども育成条例案」を賛成多数で可決した。同市によると、こうした文言を盛り込んだ子ども育成条例は珍しいという。市は月内にも施行する。

 可決した条例は、子どもの育成についての基本理念などを明記した全17条。市が基本理念の項目で「平和を愛し」として、昨年12月の議会に提案、継続審査となっていた。

 今月23日の総務委員会で「平和を愛し」の部分を「人を愛し、郷土や国を愛し、世界の平和を願い」とする修正案が提出され、26日の同委員会は賛成多数で修正案を可決した。
2006/06/29付 西日本新聞


長崎県佐世保市といえば、2004年6月の小学校6年生同級生殺害事件の記憶が生々しい。
佐世保市子ども育成条例(仮称)検討会議」はどのような意図で「平和を愛し」という文言を入れていたのだろうか?
http://www.city.sasebo.nagasaki.jp/cgi-bin/odb-get.exe/pdf.pdf?WIT_oid=icityv2::Content::11756&WIT_ctype=application/pdf&WIT_jasminecharset=SHIFTJIS
2005年3月の同会議の報告書は以下のような構成になっている。

はじめに
1 条例の必要性
 (1) 子どもを取り巻く状況認識
 (2) 大人の責任と役割
 (3) なぜ条例なのか
2 条例検討にあたっての基本的な考え方
 (1) 条例の性格について
 (2) 市と市民が連携し、総合的な推進を目指す
 (3) 子どもを尊重する
 (4) 子どもの発達段階に応じた関与を行う
 (5) 条例が対象とする子どもの年齢等について
 (6) 具体的な表現について
3 条例の大まかな構成
 (1) 前文
 (2) 総則(目的、子どもの範囲等)
 (3) 責任と役割
 (4) 基本的な施策等

佐世保市子ども育成条例(仮称)検討会議経過報告
佐世保市子ども育成条例(仮称)検討会議委員名簿

はじめに

「検討会議は、平成15年2月に佐世保市の教育を考える市民会議(2001年10月〜? 市民会議は、学識経験者や市民など30人で構成されている)から提言のあった「子ども育成条例」を制定するにあたり、日ごろから子どもの育成に関わりのある機関や団体等から、幅広く意見を求めるため、平成16年2月に設置されました。」その後「市内の小学校において大変痛ましい事件が発生し、各委員は大きな衝撃を受けるとともに、改めて責任の重さを実感いたしました。」

1 条例の必要性

子どもを取り巻く状況認識
(1) 子どもを取り巻く状況認識
現在の子どもを取り巻く状況は、社会環境の変化に伴い、大きく変わり、その中で成長する子どもは大きな影響を受けています。
 ○ 家族形態の変化

子育てが孤立化し、子育てに不安や負担を感じる親が増加しています。

 ○ 情報化の進展

情報通信機器の急速な普及は、子どもの学習や活動の幅を広げました。

しかし一方では、人間関係の希薄化や直接体験の不足、仮想と現実の混同に加え、性や暴力に関する有害情報の氾濫などの問題をもたらし、子どもの成長に影を落としています。

○ 子どもと触れ合う機会の減少

大人が子どもと向き合う心のゆとりが失われつつあります。

○ 少年犯罪の凶悪化

子どもたちの命に対する畏敬の念が、薄れつつあるのではないかと懸念されます。

基本的な生活習慣、自制心や規範意識の欠如などについても指摘されます。

○ 子どもの居場所の減少

○ 子どもに対する権利侵害

児童虐待育児放棄、いじめ、体罰など、子どもに対する権利侵害は、その多くが家族関係、友達関係、師弟関係などの身近な関係の中で発生します。


(2) 大人の責任と役割

子育ての当事者は大人全員であるという認識を持ち、次代を担う子どもを育てるために、大人は何をしていかなければならないのかを考えていく必要があります。


(3) なぜ条例なのか
子どもをどのように育てるのかということは、個人の価値観に関わる部分があり、このような問題について条例という形で定めることは、大変難しい側面があることは十分認識しています。

子育てを社会全体で応援し、支えていくという視点が必要です。子どもの育成のためにより良い環境の実現を目指すとともに、大人が力を合わせて子どもたちを健やかに育てようという気運を醸成し、子育てに関する様々な息の長い取組みを行うことが大切です。

このような取組みを、市民の合意のもと、行っていくための一つのよりどころとするため、条例という形で、大人が子どものために何を行うのかを定めることが必要であると考えます。

2 条例検討にあたっての基本的な考え方

(3) 子どもを尊重する

子どもは生まれながらに権利を有する権利主体であり、一個の人格として尊重するとともに、子どもの成長のため大人の側が何をするのかを規定することが必要です。

また、子どもは、内側に自ら成長していく力を持っており、その力を伸ばすためには、大人が子どもにとって最良の環境を整えていくことも大切であると考えます。

(4) 子どもの発達段階に応じた関与を行う

以下、略。というのも、条例案そのものの答申ではなく、今回修正の対象となった市提出の「基本理念」の当該部分前後の文言は、この答申ではわからなかったからだ。
一読して、子どもの育成に関する「条例」制定の困難さを自覚しつつ、子どもの人権の尊重を謳い、監視・管理的な視点ではなく子育ての視点で検討してきたことなど、一定の教育学の知見を大変まともなものであると感じられる。
条例案・条例文そのものが入手できたらもう少し考えてみる。

ただ、安易に「平和を愛し」などという文言を入れた原案文が、郷土や国やら「世界の」平和などというツッコミを誘発した・隙があった、或いは不十分さのではないかと思う。動物愛も入れたらもっと飛んだ条例になっただろうに。