▼ヘイトスピーチの背景

歴史修正主義ヘイトスピーチ

『日本の科学者』2014年12月号は「排外主義の深層と共生への展望」と題して、四人の執筆者が論考を寄せている。
樋口直人氏「日本型排外主義の背景---なぜ今になってヘイトスピーチが跋扈するのか」は面白かった。氏の説についてはWikipediaにまとめられているのが簡単なので引用。

在日特権を許さない市民の会については、その会員はホワイトカラーや自営業者などが主体であり、退職者を除いて無職はいなかったとし、「(在特会は)中間層の運動とみなしたほうが正確であり、階層の低い者の不安が排外主義運動を生み出すという仮説は棄却されたといってよい。」などと論じている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%8B%E5%8F%A3%E7%9B%B4%E4%BA%BA

そして、その根底には1990年代から盛んになった歴史修正主義という土壌があったこと、拉致や核兵器などの北朝鮮問題、領土問題、慰安婦靖国、教科書などの諸問題とそれを扱うメディアが「反日」という「認知枠組」を提供し、その「傘の下で排外主義も根を張っていった」という。
「(歴史)修正主義は正史の否定としてしか存在しないがゆえに、「自虐史観」を押し付ける「反日勢力」への憎悪へと容易に転換する。…外国人に敵意を持っていなかった者が「反日」を媒介として排外主義に取り込まれていく。」


普遍主義的レイシズム

森千香子氏(一橋大学)「反レイトスピーチ法はレイシズムを抑えられるのか?」もフランスにおけるレイシズムの変容を紹介し、興味深かった。

(たとえば)拉致問題発覚以降、「北朝鮮=テロ国家」と見なし、その北朝鮮との「関係」を理由に在日朝鮮人への差別が正当化される…

差別を許さないはずの「民主主義国家」で、「出身」「所属」国の民主主義の未成熟などを理由に差別を正当化する理屈を作り出している。


それにしても、それが日本において・あるいはフランスにおいて、原爆を落とし、アジアで蛮行を繰り返すアメリカについて「お前はあのアメリカの人だから」という排外主義は現象せず、中国・朝鮮半島だとかイスラム諸国についてのみ出現するのは、つまりアメリカが除外されているのは、アメリカが「民主主義」という外皮をまとっているからであろうか。それなら今後ロシアはどのように扱われるのであろうか。
普遍的レイシズムにあっても根底には肌の色や顔立ち、経済的地位、言語・文化的な蔑視というものが不可欠なのではなかろうか。