20XX年、イランへ慰安婦と…

イランにアメリカが介入することになった。
国内では「不逞イラン人」の取り締まりがきつくなり、テレビではダルビッシュがボールを視聴者に投げながら「イランに平和と民主主義を!」と叫ぶコマーシャルがしつこく繰り返される。提供は国防省と大日本公共広告機構
また、政治では日本がアメリカの州になるべきか、自治領であるべきか、単体としてあるべきか、三度目の国民投票の発議をめぐって喧々諤々である。といっても国会は一院制小選挙区制で議員定数は100名程度とそれぞれの道や州から1名の代表(2票の権限)しかいないので、しょっちゅう改憲の発議ばかりである。
だから「必要なこと」は全部内閣の選定・指名したさまざまな「国民会議」(多くて十数名)が発案・審議して国会はときどきそれを承認したり・蹴ったりするだけである。


とにかく国防軍がイランに行くことになった。人員は満ち足りている。国防軍に入るとさしあたり食べて行け、子どもを学校に行かせることができるから、黙っていても志願者が絶えることはない。ブラック企業か、ワーキングプアか、失業・ホームレスか…国防軍か。平時であれば国防軍が一番ましである。
戦後の「復興」のため、化学兵器核兵器は使わないという方針が閣議決定されている。相手は「テロリスト集団」としての「過激イスラム勢力」であってイラン国ではないので宣戦布告もない。イラン国民の要請によって我が国の国防に重要な「治安回復目的」で行くのだ。


連れて行く慰安婦は150人。ぜんぜん足りない。日本人の婦女子は産む機械として銃後を守ることが第一義になっているので、慰安婦に「志願」する日本人は期待したより多くない。しかも、彼女らを連れて行くのも手間がかかる。やはり現地調達が一番いい。
あらかじめインターネットや大使館などを通じて東欧を中心に求人を出してあるが、その応募も芳しくない。しかたがないので、パキスタンあたりで性病のない女性に「自由意思」を発揮してもらえるよう米軍などと協力してことにあたるとのことである。
夜の七時からの二時間特番では、自分の子どものうち、2人の男子はすべて国防軍、長女はすでに三人を出産、次女と三女は慰安婦に志願して睡眠時間を切り詰めて奮闘している、という一家が正月に久しぶりに集まっている、という場面などが放送されている。母親は東海州の州民栄誉賞を長女とともに受けている。(父親は原発労働者で早くに逝ってしまっているのだ。)