▼遺伝子組換え作物を作るだけで新たな病原菌を生み出す!

遺伝子組み換え作物とその農業の危険性

『日本の科学者』2006年12月号は「特集 遺伝子組換え作物をめぐる諸問題」であった。
遺伝子組換え作物のうち、食材にそれが使われた場合、未知のアレルギー反応と未知の発ガン性物質への被曝の「可能性」くらいしか「認識」になかったが、遺伝子組換え作物と、その農業について深刻な問題があるということが書かれていた。


途上の技術

鵜飼保雄氏「遺伝子組換え作物が安全性を問われる理由」

1 遺伝子組換えと従来育種は同じではない
  • 自然界に起こる遺伝子組換えは「相同組換え」であるが、遺伝子組換えで行われるのは「非相同組換え」であるが、これは「新しい遺伝子」である。
  • 「新しい遺伝子」というのは、次の理由による。導入されるDNAには異種宿主中でも導入遺伝子が機能を発現できるように
    • スイッチとして働くプロモータという転写開始領域
    • 転写の終結を制御するターミネータ
    • 活性を高めるエンハンサー
    • 遺伝子導入された細胞を選択するためのマーカー

など他のウイルス等由来の付属領域がセットになって含まれていて、これら付属品はドナー生物にも含まれて居なかったものであるからである。

  • 通常の細菌感染において植物に挿入される遺伝子は、限局的で後代に伝わることもないが、遺伝子組換えではどんな遺伝子でも導入でき、後代に伝わる。
  • 遺伝子組換えでは自然界でありえない、ウイルス、最近、昆虫、動物など「科」どころか「界」までも異なる生物の遺伝子が植物に導入される。
2 遺伝子組換え技術の未熟な到達
  • 宿主に導入されるDNA断片の数、長さ、位置が制御できない。この粗雑さは「図書館の窓から本を投げ入れたとき、それが書棚の所定位置に収まることを期待するようなもの」と表現されている。
  • 導入遺伝子がどのような代謝経路をとるのか、遺伝子間の相互作用もあり、理解が完全でない。
  • 例えばプロモータ領域により、宿主ゲノムに変化を与えることがある。眠っていた遺伝子の活性化や、発育ステージに無関係な遺伝子の常時活性化など。

3 想定外物質の発生と、安全検査技術・審査体制

想定外の有害物質が発生した例は何件も報告されている。

  • 毒性については急性毒性しか検査されておらず、WHO/FAOの報告書では最低3ヶ月が望ましいとされているが、実際には1ヶ月未満が多い。慢性毒については検査されていない。
  • 発がん性の検査は義務付けられていないし、検査が困難である。
  • アレルゲンは極微量で発現するので新奇のアレルゲンの検出も考えるときわめて困難である。

4 遺伝子の水平伝達

水平伝達とは交雑以外の方法により異種生物の細胞内に遺伝子が伝達されることをいう。これは通常自然界ではほとんど観察されないとされていた。
しかし近年、組換え体遺伝子は通常の遺伝子より水平伝達しやすいことが分かりつつある。

  • 除草剤耐性遺伝子を導入したナタネの花粉をミツバチに摂取させた結果、その腸内細菌に耐性遺伝子が転移した
  • 遺伝子操作したテンサイから抗生物質耐性遺伝子が分解されず土壌に移り、土壌細菌に転移した

生物は一般に異種遺伝子が体内に入っても、それを抑制できるがウイルス由来のプロモータを付随した導入遺伝子は、そのような抑制力を無効にしてしまう。微生物由来の抗生物質耐性遺伝子などは、水平伝達した先の微生物のゲノムと組換えを起こしやすい。これにより道の有害な微生物が発生する危険性がある。
また、組み換え体を摂取した人の腸内細菌に導入遺伝子が水平伝達される危険性がある。経口的に摂取された組換え体は胃で全て分解されるかというと、プラスミドを与えたマウス実験で排泄物にも検出されたし、人でも2002年に英国で除草剤体制遺伝子が断片化されずに便から発見された例がある。

新しい病原菌の発生

金川貴博氏「ディフェンシン産生の遺伝子組換えイネが高感染性のヒト病原菌を生み出す」

抗菌剤を常時生産するイネ

2005年、2006年農林水産省管轄の研究機構の北陸研究センターにおいて、遺伝子組換えされた稲の野外栽培が行われた。

抗菌剤を常時産生するイネ

栽培されたイネは、遺伝子組換えによって常時抗菌剤産生となったイネである。同じ発想のトウモロコシもすでに流通していて、害虫がこのトウモロコシの葉でも茎でもどこを食べても死ぬ。
しかし、こうした抗菌剤に対してはやがて耐性菌・耐性生物が出現し、病気にかかるであろうことは、今日医療を特別に学ばなくても興味のある人は知っている。

ヒトにも影響する耐性菌

このイネが産生するのは、芥子菜のディフェンシンという抗菌たんぱく質である。ディフェンシンはディフェンスたんぱく質であり、ヒトを含む多くの動植物がそれぞれに体内で産生する抗菌剤であり、動植物が病原菌から身を守る最初のバリヤーである。
ディフェンシン耐性菌による実験例はまだ存在しないが、ディフェンシン欠損マウスによる実験では、病原菌に感染させた場合少量で死んでしまうことが確認されている。もし、ヒトのディフェンシン耐性を持った最近が出現して蔓延したら大変なことになる。そうした細菌の例としては黄色ブドウ球菌が現存するものとして挙げられる。
耐性菌が出るかどうかは抗生剤と微生物の接触頻度が問題である。
例えば、MRSAの特効薬としてバンコマイシンが有名だが、VREバンコマイシン耐性腸球菌)はアボパルシンという抗生剤の使用によって出現した。

バンコマイシンに似た性質を持つアボパルシン (Avoparcin) という抗生物質が、飼料の品質維持や家畜の成長促進の目的で全世界的に長年に渡って家畜飼料に添加されてきた。このため、家畜は大量の抗生物質を摂取することになって、自然とその体内にいる菌が抗生物質に抵抗力を持つようになったと考えられている。耐性菌は飼育業者を介して経口感染し、その感染者が治療のため病院でバンコマイシンを投与されるに至って、初めて耐性菌が登場したと解されている。
Wikipediaより

アボルパシンの使用禁止によってバンコマイシン耐性菌の数は激減したが、やがてこの耐性遺伝子がMRSAに水平伝達されバンコマイシン耐性MRSAが出現した。
このことから、以下の可能性が恐れられる。

  • カラシナ・ディフェンシンの使用による、ヒト・ディフェンシン耐性菌の出現と蔓延
  • 病原性を持っていないヒト・ディフェンシン耐性菌の遺伝子の水平伝達による被害

現在、例えばMRSAに感染する人は抵抗力・体力の落ちている人に限られているが、これがディフェンシン耐性を獲得してしまえば、ヒトの最初のバリアを突破して侵入するのであるから、脅威である。

カラシナはなぜ耐性菌を生まないか

では畑にカラシナを沢山植えるのは危険だろうか。畑にカラシナを沢山植えても、カラシナディフェンシン耐性菌は出てこない。カラシナも、抗生物質産生微生物も必要なときにしか抗生物質を作らないからである。だから抗生物質第一号のペニシリンは劇的に効いたのである。

抗菌剤を常時産生するイネとその栽培

ところが、遺伝子組換えイネは、操作された遺伝子によって、病原菌の有無にかかわらず常に多量のカラシナ・ディフェンシンを作り続ける。これが危険なことはこれまでの記述でわかる。
また、このイネは水田で栽培されるので、土壌内・流水内のさまざまな菌、昆虫、魚、その他多種多様の生物が周囲へ流出する。
このことによって、人だけではなく幅広い動植物や生態系に対して深刻な影響を与える可能性がある。

遺伝子組換え研究・耕作の十分な隔離・検査・公開、農業の保護を

まず、遺伝子組換え研究・耕作は他の植物と交雑しないよう、十分な隔離が必要である。また、現段階の技術が冒頭に紹介されたような粗雑なものであるのなら、作物を市場には出回らせないことが必要であろう。
研究や実験の厳重な検査や公開も必要であると思う(研究競争と公開は背反するとしても安全性にはかえられない)。
遺伝子組換え作物の研究は、ひと言で総括して効率化のためであろう。遺伝子組換えや違法で危険な農薬を使わなくても安心できる食物を提供できる農業への支援が必要だと思う。医者、農業従事者は特権的だなどと攻撃的に取り扱われることがあるが、安全・健康とその平等を損なう結果を招かないような政策が立てられなければならない。


遺伝子組換え食品を食べないということが自らの健康にとって大切である。遺伝子組換え食品を買わないということは皆の健康にとって大切だと思う。