▼社会をよくするには/労働者の意識に関する調査

▼格差労働社会における労働者の意識は格差容認?

独立行政法人労働政策研究・研修機 2006.7.14
多様化する就業形態の下での人事戦略と労働者の意識に関する調査(2005年12月)
http://d.hatena.ne.jp/ost_heckom/20061109/p1

の続き

興味深いのは設問26である。(p86)

問26. あなたの考えはどちらに近いですか。(それぞれ、あてはまるもの1つに○)

かなりAに近い Aに近い どちらでもない Bに近い かなりBに近い
賃金は主に業績に応じて配分されるべき 1 2 3 4 5 賃金は主に仕事への努力に応じて配分されるべき
機会の平等が確保されれば結果の不平等が生じてもやむを得ない 1 2 3 4 5 機会の平等が確保されたとしても、結果の不平等が拡大することは好ましくない
人々が相互に競い合うことで社会全体をよりよくすることができる 1 2 3 4 5 人々が協力し連携することによって、社会全体をよりよくすることができる


いずれも二者択一の設問が他の考察や社会の進展やあり方を排除しているので、この枠組みの中だけで社会に関する意識を論ずることはできないが、③の選択肢は「競争」と「協力」とを配置して見せた点が面白くはある。
以下、結果を見ていく。

賃金は業績に応じてか努力に応じてか

「A 賃金は主に業績に応じて配分されるべき」か或いは「B 賃金は主に仕事への努力に応じて配分されるべき」
「配分」というコトバにもひっかかるけど。


1位と2位に背景色の濃淡をつけてみた。回答Aは緑、回答Bは赤という具合。

 NAにかな
り近い
Aに近いどちらで
ない
Bに近いBにかな
り近い
無回答
【総数】570410010.435.021.621.86.44.8
男性325210013.739.518.518.95.73.6
女性24331005.929.125.625.87.46.3
15〜19歳171005.95.935.329.423.5-
20〜24歳3221006.832.325.826.75.33.1
25〜29歳76610011.033.924.020.67.72.7
30〜34歳97310011.036.122.923.34.32.4
35〜39歳77610011.236.321.422.45.82.8
40〜44歳74510011.139.220.418.97.13.2
45〜49歳59510010.437.620.820.56.14.5
50〜54歳5751009.633.920.922.66.66.4
55〜59歳53810010.232.017.721.47.811.0
60〜64歳2721008.129.817.625.49.69.6
65歳以上7210012.526.419.418.14.219.4
男性15〜19歳610016.716.750.016.7--
       20〜24歳11710011.137.623.920.55.11.7
       25〜29歳35910015.337.323.415.07.81.1
       30〜34歳53310015.039.019.119.94.72.3
       35〜39歳45110014.938.817.520.85.52.4
       40〜44歳43510015.944.614.917.05.52.1
       45〜49歳34410014.543.318.017.24.42.6
       50〜54歳36810012.040.218.819.84.94.3
       55〜59歳34010011.838.516.819.16.57.4
       60〜64歳2231007.234.517.523.88.58.5
       65歳以上6410014.129.720.317.24.714.1
女性15〜19歳11100--27.336.436.4-
       20〜24歳2051004.429.326.830.25.43.9
       25〜29歳4071007.131.024.625.67.64.2
       30〜34歳4401006.132.527.527.53.92.5
       35〜39歳3251006.232.926.824.66.23.4
       40〜44歳3101004.531.628.121.69.44.8
       45〜49歳2501004.829.624.825.28.47.2
       50〜54歳2071005.322.724.627.59.710.1
       55〜59歳1981007.620.719.225.310.117.2
       60〜64歳4710010.66.419.134.014.914.9
       65歳以上8100--12.525.0-62.5
正社員396810011.638.119.921.15.73.6
非正社員計17211007.328.125.523.58.17.6
       契約社員3531009.134.022.719.87.96.5
       嘱託社員2341007.732.921.820.17.79.8
       臨時的雇用者401005.022.527.530.07.57.5
       パートタイマー7431006.522.628.324.29.09.4
       派遣社員2681006.332.523.528.06.33.4
       請負会社の社員4310011.630.220.927.97.02.3
       その他401007.52535.020.010.02.5
専門的・技術的な仕事115310011.638.720.621.75.42.1
管理的な仕事69310015.947.915.213.34.33.5
事務の仕事22601007.633.623.325.06.24.3
販売の仕事34310013.143.419.511.76.16.1
保安・サービスの仕事20310012.818.221.727.18.411.8
運輸・通信の仕事25210015.925.819.421.08.79.1
技能工・生産工程、労務等4021007.225.424.626.910.25.7
その他2661007.927.827.118.812.06.4
建設業80710010.238.723.018.86.33.0
製造業計10871009.333.620.125.47.54.0
       製造業(消費関連)27010010.432.617.828.97.03.3
       製造業(素材関連)1951007.729.721.027.78.75.1
       製造業(機械関連)18510010.334.618.426.57.03.2
       製造業(その他)4371008.935.522.021.77.64.3
電気・ガス・熱供給・水道業601006.746.715.020.06.75.0
情報通信業6310012.750.812.719.01.63.2
運輸業54310013.329.722.320.87.07.0
卸売・小売業37210012.135.221.818.06.56.5
飲食店・宿泊業3210015.621.912.531.36.312.5
金融・保険業3461009.240.821.419.15.54.0
医療,福祉3081006.830.224.427.38.13.2
教育,学習支援業1521007.932.927.018.47.26.6
その他サービス業63110012.232.522.321.76.25.1
その他2041007.439.723.521.14.43.9
業種不明109910010.635.520.322.25.65.7

成果不問の単なる努力に対して賃金を比例させるのかという問いの捉え方をすれば、多くの労働者は否定的な回答をするであろう。
この問いを成果主義賃金の是非と捉えた回答者はどのくらいいたのだろうか。
たとえば、労働者としては「早く・速く・正確・親切・丁寧」などの努力は可能でもそのことが直接の成果に結びついているかどうか判断できない位置にいたり、「成果」は管理者・指示者・指揮者にのみ帰属するような労働である(と考えられている)場合は、自らはあずかり知らぬ「成果」よりは、受けた指示や指導を効率良く・正確に実行する「努力」を買って欲しいと思うだろう。
「努力」に軍配を上げているのは、若い女性、50歳以上の女性、臨時雇用、保安・サービス業、技能・生産・労務、飲食・宿泊業の労働者である。
なお、賃金を「配分」という発想自体がすでに新自由主義的な賃金思想のバイアスがかけられたものであろうことはここでは一々問わない。

機会の平等を前提にした、結果の不平等の是非

「A 機会の平等が確保されれば結果の不平等が生じてもやむを得ない」か
「B 機会の平等が確保されたとしても、結果の不平等が拡大することは好ましくない」と考えるか。

 NAにかな
り近い
Aに近いどちらで
ない
Bに近いBにかな
り近い
無回答
【総数】57041009.128.831.418.96.35.5
男性325210011.832.927.317.66.14.3
女性24331005.523.336.920.76.56.9
15〜19歳1710011.817.647.117.65.9-
20〜24歳3221007.122.445.717.74.03.1
25〜29歳76610011.431.932.414.47.42.6
30〜34歳97310010.929.735.015.95.82.7
35〜39歳7761009.730.930.020.45.33.7
40〜44歳7451009.929.931.120.74.83.5
45〜49歳5951009.128.426.624.26.45.4
50〜54歳5751007.025.932.019.18.97.1
55〜59歳5381007.226.025.320.87.213.4
60〜64歳2721004.832.725.718.07.711.0
65歳以上721006.919.423.625.04.220.8
男性15〜19歳610016.7-66.716.7--
       20〜24歳1171006.829.144.412.85.11.7
       25〜29歳35910015.935.427.312.38.11.1
       30〜34歳53310014.833.627.614.46.92.6
       35〜39歳45110013.134.826.618.44.72.4
       40〜44歳43510012.632.628.018.95.32.5
       45〜49歳34410012.833.123.522.14.93.5
       50〜54歳3681008.429.929.919.37.64.9
       55〜59歳3401009.731.523.219.75.910.0
       60〜64歳2231005.435.925.117.06.79.9
       65歳以上641007.821.925.026.63.115.6
女性15〜19歳111009.127.336.418.29.1-
       20〜24歳2051007.318.546.320.53.43.9
       25〜29歳4071007.428.736.916.26.93.9
       30〜34歳4401006.125.044.117.74.32.7
       35〜39歳3251004.925.534.823.16.25.5
       40〜44歳3101006.126.135.523.24.24.8
       45〜49歳2501004.021.630.827.28.48.0
       50〜54歳2071004.318.835.718.811.111.1
       55〜59歳1981003.016.728.822.79.619.2
       60〜64歳471002.114.929.823.412.817.0
       65歳以上8100--12.512.512.562.5
正社員396810010.030.930.518.75.84.1
非正社員計17211007.024.233.719.27.38.5
       契約社員3531009.926.930.317.38.27.4
       嘱託社員2341006.829.927.818.46.011.1
       臨時的雇用者401005.015.032.535.05.07.5
       パートタイマー7431004.319.837.820.37.310.5
       派遣社員26810010.428.031.718.37.54.1
       請負会社の社員431004.734.927.914.014.04.7
       その他4010015.020.042.517.52.52.5
専門的・技術的な仕事115310011.232.028.919.06.12.9
管理的な仕事69310013.439.022.715.94.94.2
事務の仕事22601007.227.534.720.55.64.5
販売の仕事34310011.733.830.012.25.86.4
保安・サービスの仕事2031006.915.834.521.27.913.8
運輸・通信の仕事2521009.921.026.619.013.110.3
技能工・生産工程、労務等4021006.522.635.121.17.07.7
その他2661007.125.237.615.09.06.0
建設業8071009.328.333.220.65.63.1
製造業計10871009.731.029.020.35.05.1
       製造業(消費関連)2701008.526.332.622.25.25.2
       製造業(素材関連)1951006.732.327.221.56.75.6
       製造業(機械関連)18510013.529.722.723.25.94.9
       製造業(その他)43710010.133.930.217.43.74.8
電気・ガス・熱供給・水道業601006.741.720.016.710.05.0
情報通信業631007.930.228.622.27.93.2
運輸業5431008.325.432.017.77.98.7
卸売・小売業3721009.724.735.515.17.57.5
飲食店・宿泊業3210012.531.318.818.86.312.5
金融・保険業3461007.234.131.817.35.54.0
医療,福祉3081006.521.836.025.66.23.9
教育,学習支援業15210011.228.330.316.45.38.6
その他サービス業6311009.031.430.416.87.05.4
その他2041007.837.332.814.23.93.9
業種不明109910010.126.731.118.96.96.3
これは「機会の平等」が現実にはどれだけ保証されるのかということが問われるわけだが、支配的なイデオロギーとしては、機会が平等なら結果は努力や能力のみが純粋に差異となって現れる、という幻想として振りまかれている。だから、「努力が報われる社会」などというスローガンと対になっていると言える。
しかし、一方「格差」が社会問題として取上げられ、史上最高の利益を上げる企業・いざなぎ景気超などと報道される同じ日付の新聞で、生活保護世帯の増加や餓死者、経済苦の自殺や犯罪が大きく掲載されるような今日、「格差」を忌避する回答も多くなっている。
結果、「どちらでもない」が最も多くなっている。また、男性、正社員に「機会平等下の格差是認」派が多い。

つづく