▼人のためにカネがあるのではない。金のために人は生き・そして死ぬ

消費者金融:借り手の保険金…半数以上が「死因不明」

 消費者金融10社が借り手全員に生命保険を掛けていた問題で、死因が判明しないまま保険金が支払われていたケースが05年度、大手5社で支払い総件数の半数以上の約2万件に上ることが分かった。

 金融庁などによると、消費者金融大手5社が05年度に生命保険の支払いを受けた3万9880件の中で、遺族に請求して入手した死亡診断書や死体検案書で死因や死亡状況が判明しているのは1万9025件。うち自殺は3649件を占める。一方、全体の5割超の2万855件は死因が不明だった。死因の判明した件数のうち自殺の割合は19.2%に達することになる。

 大手5社はいずれも大手生保から短期・長期の巨額融資を受けている。【多重債務取材班】

毎日新聞 2006年9月14日 3時00分

イデオロギーによって生かされ、イデオロギーによって死を選ぶ

Ideologie は単なる考え、Idea ではなく、人々が日常それに従って行動生活する規範としての力と現実を伴っているという側面がある。とは言え、その根拠となる人間生活の多層性・歴史性からイデオロギーも多様で重層的であり、単純に支配的なそれと被支配階級のそれというような二分的なものではない。以前、故 上野俊樹氏のイデオロギー論を非難したのは、汎イデオロギー論だったからというわけではない。
恋愛も、従軍も、玉砕命令も、特定の人間関係・特定の時代・特定の集団から説明されるイデオロギー的な制度や行為

貨幣にまつわる雑文

物象化に沿った言い方をすれば、貨幣の macht(ちから)は時に生命活動を意図的に終了させ貨幣に転化させるという Gewalt として発現し、その発現の媒介者は人間なのである。
人に沿った言い方をすれば、貨幣を媒介にした人間関係(第三者と自分との関係、今の自分と未来の自分、過去の自分と未来の自分等々)を築いてしまい、それに依存した生活を送ることになってしまった人は、その人間関係が破綻したとき、人間関係を純粋な貨幣量として表現し・死によってそれを贖おうとし、実際に死によって贖われている。
死によって精算されるというより、贖われているという表現のほうが適当であると感じるということは、第三者に借りた金を返せない、明日の自分に対して今日の自分が貨幣を提供できない、ということは日本では「死に値する罪」なのだろう。「日本では」というのは、合法・非合法に拘わらず臓器売買が一般的であるなら、例えば片腎を売って贖うこともあるだろうということである。それでも貨幣を媒介にした人間関係と自己関係とを一方的に破壊することは、飲酒運転をしたり、強盗や殺人を犯すことよりも罪なことであるとすら認識され・人を支配しているということである。
貨幣を媒介にした人間関係は支配-被支配的である。貸した側に力があり、借りた側は力を吸い取られる。

年貢が納められないからと、首をくくった近世以前の農民はいたかもしれぬ。年貢の前借を返せなくて、土地を取り上げられて(生産手段を奪われて)小作になる自分が許せなくて自殺を選んだ人はいただろうな。
ここで「貨幣の哲学」の断片を巡回しても仕方がないので、中止。
現実問題として、債務者に保険を掛けて、死に追いやることで債権を回収することができるという仕組みがあること。それを債務者自らがそうしたか、債権者の取立てがそうしたか? たしかにそれは問題だ。だが、債務の精算に自殺という選択肢を設けてあることがより重要な問題のようだ。

関連リンク

追記
おとなり日記とそのリンクなどから。いずれも敬意をもって。

鳥取県米子市行政書士今田重治(さん)の日記 四季折々・・・ ”たまさか” 想いつく ままに

生命保険金と消費者金融 2006/08/15
http://bacchus.blog.ocn.ne.jp/tamasaka/2006/08/post_34c0.html

消費者金融業者の中には、全債務者に生命保険を掛けている所があるそうです。
……
団信は、「人の死亡により保険金の支払を行うものであるところ,このような他人を被保険者とする生命保険は,保険金目当ての犯罪を誘発したり,いわゆる賭博保険として用いられるなどの危険性があることから,商法は,これを防止する方策として,被保険者の同意を要求することとする(674条1項) 」(「H18.04.11 最高裁 平成14年(受)第1358号、1359号 保険金引渡請求事件 」の理由の第2・2・(1)参照)訳で、消費者金融業者は、ろくに説明もせず(借用書に印刷してあるだけで、加入の事を取り立てて説明している訳ではない様です。)、謂わば「勝手に命を担保に取られた」のであって商法674条1項ないし民法90条(公序良俗に反する契約)の規定により無効だ、との批判はあながち的外れではないと思います。

あとで読むよ

■【経済】「命が担保」 自殺した借り手の保険金、年3600件受け取る…消費者金融大手5社
http://d.hatena.ne.jp/nobodyknowsme/20060911#p1

木走日記

■[社会]「死体検案書の提出が必要でございます」〜アイフルから娘に届いた妙な手紙
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060914/1158203086