▼「我が国における能力開発の現状」ナナメ読み

我が国における能力開発の現状
〜個人の能力開発、企業における人材育成のあり方に関する実証分析〜
中野 貴比呂氏
経済財政分析ディスカッション・ペーパー 平成18年8月

http://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/dp064.pdf

[要旨]
1. はじめに
2. 我が国企業における職業教育訓練の状況の概観
3. 個人側から見た職業教育訓練の現状(個人アンケートの分析)
  (1)職業能力取得のあり方
  (2)職場での仕事の属性に関する分析
  (3)職業意識に関する分析
  (4)業務を行いながら日常的に行われる職業教育訓練の分析
  (5)業務を離れて行う職業教育訓練、自発的に行う職業教育訓練の分析
  (6)職業教育訓練の効果に関する分析
  (7)就労前の学校教育に関する検討
 (8)個人アンケートの分析のまとめ
4. 企業側から見た人材育成・職業教育訓練の現状(企業アンケートの分析)
  (1)企業が考える職業能力取得と人材育成のあり方
  (2)企業の人材育成の実施状況に関する分析
  (3)企業が行う人材育成の効果に関する分析
  (4)企業アンケートの分析のまとめ
5. まとめ
 
 参考文献
 図表・付図・付表・付注
 参考資料1 内閣府「仕事と教育に関する調査」(個人アンケート)調査票
 参考資料2 内閣府「企業における人材育成に関するアンケート調査」(企業アンケート)調査票

抜粋

終身雇用の見直しや成果主義賃金の普及、非正規雇用の増大など、我が国の企業における雇用・賃金慣行の変化を背景として、企業における人材育成のあり方も変化があるのではないかという指摘がある

● 仕事の専門性や創意工夫の余地、習熟期間に関する分析
①仕事の創意工夫の余地と②仕事の専門性の推計結果では、

  • 雇用形態別では正規職員と比較すると非正規職員の仕事は創意工夫の余地が少なく仕事の内容に有意な差があることがわかる。
  • 勤務先規模で見ると規模の大小によって差はなく、仕事の中身についての創意工夫の余地や専門性については差がないと考えられる。
  • 職種別に見ると総合事務職と比較した場合、
    • 管理的職種や専門的技術職については創意工夫の余地、専門性が高まる一方、
    • 一般事務職については創意工夫の余地、専門性が低くなることがわかる。
  • また、学歴の影響をみると最終学歴が高まるほど、創意工夫の余地や専門性が増すことがわかる。高

度な教育を受けた人ほど仕事内容も高度なものを求められる傾向がある可能性があるる

● どういった人が職業教育訓練を受けるのか?
続いて、どういった人が職業教育訓練を受けたいと望む傾向があるのか、どういった人が実際に職業教育訓練を受けるのか
①非正規職員は企業が主体となって行う職業教育訓練を受ける機会に恵まれていない
②所得は自発的な職業教育訓練の受講に影響
③熟練に要する期間が長い仕事をしている人ほど自発的な職業教育訓練を受けやすい
④勤務先企業の規模が大きいほど職業教育訓練を受講する可能性が高まる
⑤最終学歴が高まるほど職業教育訓練を受講する可能性が高まる
⑥教育訓練の受講には本人の意思・意欲も大きな影響を与えている

(7)就労前の学校教育に関する検討
学校教育の教育投資効果と学校教育の受講機会という観点から学校教育について考えてみたい。
● 学校教育の投資収益率
内閣府国民生活白書平成17 年度版」によると高卒者と大卒者では生涯賃金は異なっており、大学進学に対する教育投資から得られるリターンは費用を上回り大学教育投資は賃金面から見てメリットがあると指摘している。また、本稿における賃金水準結果においても学歴が高まるほど賃金水準が高まることが確認されている。
OECD によれば15 歳時点における我が国における親の経済的・社会的な背景が子供
に与える影響は諸外国と比較して小さい
OECD の調査結果からは、少なくとも諸外国と比較して著しい不平等が義務教育の段階から生じているとは考えられない。
ただし、親の所得と子供に対する教育関係支出には正の相関があるという指摘もあり、親の所得が高い子供ほど塾などの付加的な教育サービスを受ける機会に恵まれているのではないかという事にも留意が必要である。
● 高等教育の機会は確保されているか
我が国における教育費用の公私負担割合をみると諸外国と比較して、初等中等教育は平均的な水準だが、高等教育についてみると私費負担の割合が高く、費用負担は決して軽いものではないことがわかる。
①父親の最終学歴が高まるほど子供の最終学歴は高まる可能性
②父親の所得は子供の最終学歴と関係がある可能性
父親の職種も有意な影響を与えている。推計では総合事務職を基準としているため、総合事務職との比較になるが、管理的職種や専門的技術職は総合事務職とほぼ変わらないが、販売・営業従事者、サービス従事者、生産工程・労務作業従事者などはマイナスの影響を与えており、総合事務職の場合とでは差があることが確認できる。
③我が国全体における高等教育の普及は個人の教育水準を押し上げ
④進学率の影響以外にも何らかの要因が存在

きょうの昼休みはここまで。