▼結婚と出産に関する調査

http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou13/point13.asp
国立社会保障・人口問題研究所

第13回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査 夫婦調査について

結果の概要[要旨]
Ⅰ.調査の概要

 出生動向基本調査は、わが国における結婚と夫婦出生力の実状ならびに背景を定時的に調査・計量し、関連諸施策ならびに人口動向把握等に必要な基礎データを得ることを目的とした全国標本調査である。全体は夫婦調査と独身者調査の二つの調査から構成される。本報告は、第13回調査、夫婦調査の結果概要についてのものである。


調査期日
平成17(2005)年6月1日

調査対象
全国の妻の年齢50歳未満の夫婦(回答者は妻)
 調査票配布−7,976
 有効票数−6,836(有効回収率85.7%)
 集計対象(初婚どうしの夫婦)−5,932

調査事項
① 夫婦の社会経済的属性
② 夫婦の結婚過程に関する事項
③ 夫婦の妊娠・出産歴に関する事項
④ 夫婦の子ども数に関する考え方
⑤ 子育ての状況(妻の就業、施設・制度利用、親の支援など)に関する事項
⑥ 妊娠・出産に関わる健康に関する事項
⑦ 妻の結婚・家族に関する意識

Ⅱ.調査結果のポイント

夫妻の結婚について

出会い年齢の遅れ、交際期間の延長により晩婚化がさらに進行

夫妻が最初に出会った年齢は夫、妻ともに上昇し、交際期間も長くなっているため、晩婚化がさらに進行。

職場結婚が減り、友人やきょうだいを通じた出会いが首位に

夫妻が出会ったきっかけは、これまで最も多かった職場・仕事関係が3割を下回り、逆に友人やきょうだいを通じた出会いが3割を超えて、首位が入れ替わった。


夫婦の出生力

子どもを生み終えた夫婦の子ども数(完結出生児数)が減少

子どもを生み終えた夫婦の出生子ども数は1970年代から2.2人前後で安定していたが、今回対象となった世代の夫婦(1980年代後半に結婚した夫婦)では、2.09人に減少した。子ども3人を持った夫婦の割合が減り、1人っ子、子どもなしの夫婦がやや増えている。

出生途上の夫婦では、出生のペースが落ちている

結婚後5〜14年の出生途上の夫婦でも、平均出生子ども数は減少傾向にある。

妻1960年代生まれの夫婦で出生力が低下

妻の世代(生まれ年)でみると1960年代生まれの世代の夫婦で出生力に低下が見られる。続く1970年代生まれでは、今のところ一定の下げ止まりがみられる。


子ども数についての考え方

理想子ども数が減少、予定子ども数も小幅ながら減少傾向が継続

夫婦にたずねた理想的な子ども数(平均理想子ども数)は減少し、初めて2.5人を
下回った(2.48、前回2.56) (表3-1、図3-1)。また、夫婦が実際に持つつもり
の子ども数(平均予定子ども数)も、低下傾向が継続して2.11人(同2.13)となっ
た。

予定子ども数が理想子ども数を下回る理由は、子育てにお金がかかるから

理想の子ども数を持たない理由は、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が最も多く(65.9%)、年齢の問題(38.0%)、心理的、身体的負担(21.6%)が続く。概して高めの理想を実現できない夫婦では経済面の理由が多く、少ない子ども数しか予定しない夫婦では「欲しいができない」が多い。


子育ての状況

結婚5年未満で就業しながら子育てする妻は2割以下

結婚後5年未満で就業しながら子育てする妻は2割以下(18.6%)で、出産に際して就業を中断する妻が多い。しかし、その後再就業が増える。最終的な子ども数には妻の就業経歴による格差は少ないが、若い夫婦で妻が就業している場合にやや少なめになってきている。

正規雇用者の育児休業取得率は増加中、ただし企業規模で利用率に差

妻が正規雇用の場合、若い世代ほど、また最近の出生ほど育児休業制度の利用率が高い。ただ、勤め先の企業規模で利用率に差があり、規模が大きいほど利用率が高い。一般に、支援制度・施設の利用は、親の育児援助が得られない場合に多い。また、今後より多くの子どもを生みたい夫婦ほど、利用希望が高い。


妊娠・出産にかかわる健康

不妊を心配したことのある夫婦は4組に1組、検査・治療経験13%

夫婦4組に1組(25.8%)は不妊を心配したことがあり、13.4%が実際に不妊の検査や治療を経験している(表5-1)。不妊を心配した夫婦では理想・予定子ども数には差がないが、出生子ども数は少なく、死流産が多い傾向にある。

妊娠や出産にかかわる健康に問題を抱えている妻は4人に1人

4人に1人の妻(24.3%)が、妊娠や出産にかかわる健康に、なんらかの問題や障害を抱えている。就業状況で比較すると、無職や短時間労働している妻に比べ、労働時間が長い場合に問題や障害が多い傾向がある。健康に問題や障害のある妻では、出生子ども数、予定子ども数が少ない傾向にある。

妻の結婚・家族に関する意識

これまで進んできた既婚女性の意識の変化傾向にゆらぎが見られる
今日の既婚女性の意識は、概して個人の目標を大切にしながら、子どもを中心に考える家族観を示している。しかし、今回調査ではこれまでの変化傾向がとどまっている意識項目が多く、意識変化の流れにはゆらぎが見られる。

他の調査にも示されているように、親と同居することがなくなり、子育ての力が昔の家庭と比べて格段に落ちている上に子育ての経済的な安定も失われている世帯が多い。また、胎児・幼児の健康問題・教育障害は生涯のハンディになる可能性が高いことを考えると、本当に安心して子どもを生み育てることが困難になっている。
子育ての問題については「国策としての少子化対策」としてよりも、若い世帯・青年世帯の権利として取り扱ってほしいものである。