▼毎年3万人以上自殺する日本は異常なのか

なんでこれを調べようと思ったか、画面をにらんでいるうちに忘れてしまった。
しかし、国内の自殺者が8年連続で3万人を超えた(2005年まで)。
これが発表された当時は、もう、毎年のことなのであまり反応する気持ちがなかったのだが、こうして記事をみたり統計を見たりしていると、異常だと私も改めて感じた次第。

負債、生活苦自殺5年連続3万人台はなぜ?

「ストレス」 ガイド:大美賀 直子 2003年07月27日
http://allabout.co.jp/health/stressmanage/closeup/CU20030727A/index.htm

●失業を苦にする自殺が増加傾向に
自殺者が急激に増えたのは、5年前の98年。この年の自殺者は32,863人で、前年(97年)の24,391人より8千人以上も増えました。98年は経済がマイナス成長となった転機の年であり、経済・生活問題を自殺理由にあげる人もこの年から徐々に増えていきました。
昨年のデータでは、なかでも負債(4,143人、前年比664人増)、生活苦(1,168人、前年比232人増)、失業(683人、前年比117人増)の3つの理由が増えており、不況やリストラなどが色濃く影響していることが読みとれます。
年齢別に見ると、60歳以上が最も多く3人に1人(11,119人)、以下年代が低くなるごとに少なくなっていきますが、経済・生活問題を自殺理由にあげる人は30〜50代に最も多いという特徴があります。

All Aboutのこの記事は2003年なのだが、これ以降、社会的背景より自殺の直接の原因である「うつ」対策の記事が続く。
そして今年はようやく

若いオレたちこそ危ない?忍び寄る自殺の罠

http://allabout.co.jp/career/jijiabc/closeup/CU20060618A/index2.htm
「よくわかる時事問題」 ガイド:志田 玲子 2006年06月19日

オレたち世代がハマる「自殺の罠」の仕掛人は……やっぱり「カクサ」?

人生80年の時代、20〜30代といったら、まだ折り返し地点にも達していない「若輩」のレベル。そんな前途洋々たる若人たちが自殺に駆り立てられるのは、一体なぜ? その動機に迫ってみると……。
■20代(976人)…… 第1位「健康問題」(32.0%)、次いで「経済・生活問題」(18.1%)
■30代(1,409人)…… 第1位「健康問題」(32.1%)、次いで「経済・生活問題」(29.2%)
※ 遺書を残している場合。警察庁「平成17年中における自殺の概要資料」より。

20代は、第2位「経済・生活問題」が1位の「健康問題」の2分の1強ですが、30代の場合、2位の「経済・生活問題」がぐっと増え、1位の「健康問題」に迫る勢い! つまり、30代になると、「経済・生活問題」がより深刻になる=「勝ち組」「負け組」といったカクサの広がりが自殺動機に結びつきやすい、ということか……。

自殺防止の切り札は……「敗者復活!」にヤサシ〜イ社会

それにしても、これだけ自殺が増えている以上、ヤッパリ国が本腰を入れて自殺防止に取り組まないとネ。国は一体、どんな対策をとっているの?
■2005年9月…… 厚生労働省など関係省庁による連絡会議を設置。
■2005年12月…… 連絡会議が自殺予防の総合対策「自殺予防に向けての政府の総合的な対策について」をとりまとめ。
■2006年5月…… 政府の「再チャレンジ推進会議」が「自殺予防総合対策センター(仮称)」の設置をもりこんだ「再チャレンジ可能な仕組みの構築(中間とりまとめ)」を公表。

そして、6月15日、第164回国会で、国や自治体、事業主、国民それぞれの自殺対策に対する責務を定め、自殺未遂者などに対する支援を盛り込んだ「自殺対策基本法」が成立(超党派議員立法)。同法の立法化に東奔西走したNPO法人ライフリンク」が全国から集めた「自殺対策の法制化を求める3万人署名」数は、ナント9万人超に!
カクサ社会の中で、一度「負け組」の烙印を押されると、立ち上がるのがムズカシ〜イ今の世の中。たとえ「負け組」に色分けされても、「再チャレンジ可能な仕組み」さえあれば、逆襲して「勝ち組」の座がゲットできる! そんな「『負け組』の逆襲」がかなう「敗者復活!」の仕組みづくりが、カクサ社会の最大の課題と言えそうですネ。

格差社会」と書けないバイアスがあるのか知れんけれど、とにかく単に「うつ」に解消しない記事が出た。


それにしても、3万人という数字はどのように評価されるべきか。

自殺率の国際比較

http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2770.html

 日本は欧米先進国と比較すると確かに世界1の自殺率となっている。さらに範囲を広げた国際比較では、図のように、日本は、リトアニア、ロシア、ウクライナハンガリーなどに次ぐ世界第10位の自殺率の高さとなっている。このように国内の混乱が続く体制移行国に次いで高い自殺率ということから日本の自殺率はやはり異常な値であるといわざるを得ない。
……
 米国の自殺率は日本の半分以下であるが、自殺と同様に社会的ストレスを原因の1つとしていると考えられる肥満による死亡は日本とは比較にならないほど多く、公衆衛生上、大きな問題となっている。

男女別自殺率

http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2772.html
男性より女性の自殺率が高いのは中国だけである。

主要国の自殺率長期推移 2005年

http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2774.html

1983年の景気後退は自殺率の急増(前年の17.5人から21.0人へ)を招いた。現在から振り返るとこれは1998年の自殺率急増の先駆だったといえる。自殺率が高い時期がしばらく続いたが、1990年前後のバブル景気の中で、自殺率は再度低下した。
 1997年秋の三洋証券、北海道拓殖銀行山一証券と立て続けの大型金融破綻事件がきっかけとなり、98年の5月にかけて失業者が急増し、自殺率も、97年から98年にかけて18.8人から25.4人へと急増した。このときは自殺者数も前年の2万3千人台から、一気に、3万1千人台へと急増したこともあって、社会的に大きく注目を浴びた

失業者数・自殺者数の月次推移

http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2740.html

月別の失業者数と自殺者数の推移を96年1月から追ったグラフをみると失業者数の増減と自殺者数の増減が強く関連していることが見て取れる。
……
2004年11月以降、基調は対前年増となった。2005年3月には2年ぶりに月3000人を超えた。失業者数は低下傾向が続いているので景気回復下の自殺者数増加という新しい事態となった(失業者数と自殺者数の折れ線が再度近づいた)。
……
年次別の各年齢層の自殺者数の推移を見ると、1997年から98年の急増期には、50歳代前後の中高年の自殺の急増が中心であった。20〜40歳代の増加の寄与率(増加数総数に占める割合)が28.2%であるのに対して、50歳代だけで寄与率がそれを上回る32.4%であった。定年前の働き盛りの世代を経済ショックが直撃し、中高年の失業の増大によって生活不安が大きく拡大したことが主な要因と考えられる。

 2003年の対前年の年齢別自殺者数を見てみると、1998年の時とは異なり、50歳代の増加は目立っておらず(自殺者数自体は相変わらず50歳代が中心であるが)、むしろ、20〜40歳代の増加が顕著である。20〜40歳代の増加寄与率は69.6%と50歳代の4.5%を大きく凌駕している。

 近年、フリーターの増加など、リストラや雇用構造の変化が中高年とともに若者層にまで大きなマイナスの影響をもたらしていることが社会問題化している。平成15年(2003年)5月発表の国民生活白書は「デフレと生活−若者フリーターの現在」を特集した。また、年金制度改定が次年に予定される中、将来に向けての年金不安がマスコミで大きく取り上げられるようになったのもこの年に入ってからである。2003年の40歳代未満の自殺者数の増加は、将来に展望を見出せない若者や中堅世代が増加していることをうかがわせている。

 2004〜05年は、50歳代(あるいは60歳代)が減少する反面、若い世代は高止まり傾向となっている。