▼国体の護持とイデオロギー

ニッセイ基礎研究所エコノミスト櫨 浩一氏による「雑感」と「社会思想」。抜粋

蟹工船ブーム

2008/08/19号
エコノミストの眼

1.突然の蟹工船ブーム

……

急に話題になるようになったのは、……若い人々の間に、パートや派遣労働など、いわゆる非正規雇用と言われる形態の雇用が増加していることが背景にあり、活字離れが著しいと言われるこの世代にも読まれているという。

2.上昇を示すジニ係数

……

事実として格差が拡大しているのかどうかなど、……事実の確認作業とは別に、人々が格差が拡大していると感じており、それが問題であると考えていることは、社会の安定という観点からこの問題に何らかの対応が必要であることを示しているのではないか。

3.改革の継続に必要な格差対策

 (小林多喜二石川啄木の)時代に比べれば、現在のワーキングプアの生活はずっとましだろうしかしどんなゲームでも、誰かが負け続けるようであれば、ルール自体がおかしいという声が上がる。「一生懸命に働いているのに、なぜ自分達はまともな生活ができないのか」という不満は、そもそも社会のルールや仕組みがおかしい、という方向に行きかねない

 ……格差問題への対応をうまく行わなければ、改革への反対が強まって頓挫してしまう恐れが大きくなるのではないだろうか。

櫨 浩一

http://www.nli-research.co.jp/report/econo_eye/2008/nn080819.html

なんの改革やねん!?



どうも保守というより保身的な「改革強迫症」の人が「あっち」の人には多い。それはそれなりに、「(なんだか分らんけれど・自分はわかっているけれど)改革しないと(自分も・もっと)大変なことになってしまう」という、青年たちとは全く違う「閉塞感」があることの証左ではある。
それにしても、この『蟹工船』に「共感を覚え」る(櫨 浩一氏)青年たちや、ワーキング・プアたちへを「ゲームにおける敗者」と蔑視し、社会の安定を乱す犯罪者・騒乱者として嫌悪し、格差や貧困事態の解決よりイデオロギー的なコントロールで青年・貧困者を「まるめこむべきだ」という論理は、あからさまで分りやすいといえば分りやすいが、「クソッタレ」というシールを背中に貼って差し上げたくなる。



彼が護持しようとする国体はなんだろうか。それは貧困や格差とかを構造的に発生させている社会・政治とは別の何かであって、彼の属する「勝ち組」たちが持っている幻影(イデオロギー)なのだろうと思う。最近は何も勉強していないので、それがなんであるかきちんと説明できないけれど。

虚偽意識(イデオロギー)による支配を打ち破って

つまり、『蟹工船』が共感を呼んでしまうような社会のあり方が問題なのではなく、『蟹工船』に共感している青年・労働者・失業者に対するイデオロギー対策が不十分だと言いたいわけだ。
それなら、われわれは『蟹工船』を強力な支点として、クソッタレなイデオロギー支配に抗して、蟹工船的な日本を変えていく人格集団へと成長してかねばなるまいよ。