▼所得の格差が拡大しなくても課税割合が変化すれば、可処分所得や資産は変化する

経済産業研究所 2006年10月13日
日本の不平等
スピーカー:大阪大学社会経済研究所教授 大竹文雄
モデレータ:RIETI上席研究員 鶴光太郎 氏
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/06101301_flash.html


 所得格差は80年代から拡大しているが、これはもともと所得格差の大きい高齢層の全体に占める割合が増加しているからである、という。
 しかも、それは高所得者の所得が増大したというより、低所得者の所得がヨリ低下したからである。また、20代で低所得の世帯が増加している。
 しかし、格差が拡大しているという意識は、現在のフリーターの生涯所得が低いであろう事などを見越した、いわば主観に過ぎない。
 2000年以降は幅広い年齢層で不平等化が広がっている。
 今後は低賃金層も増えるし、規制緩和も進むから、ますます所得格差は増えるだろう。規制に守られていた人たちは相互の格差が広がった。
 規制緩和、技術革新、グローバル化について行けない人たちの教育が大切だ。

社会のしくみとして格差が拡大していくようになっていると言っていない、とは言えない。
格差や貧困化についての価値判断言及はない。が格差を拡大したいくつかの原因については、「仕方がない」というニュアンスである。
大竹氏についてよく知らないので、氏について当てはまるかどうか別だが、社会現象・社会病理についての評論・批判はしないくせに、現状だけは追認するような社会「科学」者がいる。私個人としてはそんな人には好感を持つことができない。
また、表題にも書いたが、金持ち優遇への税制改定や税控除の廃止(多くは非課税者の課税化・課税のランクアップ)によって、富める者からは取る割合を減らし、貧しき者から取る割合を増やした経緯からすると、この税制改正が格差を拡大したであろうことにも、大竹氏は言及して欲しいものだ。彼にとっては課税前のデータ以外は視野から排除しているのであろうか。