▼拡がる教育格差と所得格差の格差スパイラル

立身出世のための教育は生れ落ちた家庭によってスタートラインに既に格差。そんなことは言われなくても知っているよ。
第一生命ライフデザイン研究所ライフデザインレポート9-10月

拡がる教育格差

研究開発室 荒川 匡史 さん
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/watching/wt0609a.pdf

最近よく報告されるように、

  • 所得の格差が、子弟を通わせる教育機関のレベルに反映している
    • 幼稚園から高校までの学費を公立-私立で比較すると約450万円の差があり(文部科学省)、塾の費用も200万円以上といわれている。
  • レベルの高い教育機関とは私立のそれであり、公立はレベルが低い
    • 中高一貫という点で高校受験での中断がない学校が多いのが私学の「利点」。東大も中高一貫校からの合格が上位である。

というようなレポート。

実際、学力の二極化が進んでおり(63.6%が肯定)、その原因は所得格差である(二極化を肯定したものの66.4%が「所得の格差によって、子どもの学力に影響が出る」と回答)とするアンケート調査結果も出ている(図表5)。……
首相は「格差があることは悪いとは思わない」と格差を肯定しているが、これは自由競争の結果としての格差を肯定しているのであろう。しかし、教育格差は「結果」の格差ではなく「機会」の格差である。このような状況が小泉改革の結果かどうかは別にして、首相が肯定している格差とは思えない。
……人々が感じる「子育ての経済的負担」の多くは教育費負担にあるのではなかろうか。しかも、その負担感は、所得の高低に関わらず、かえって所得が多いほど高くなるのである。現在の公教育システムが教育費負担をエスカレートさせる仕組みになっている結果といえるだろう。
「自由な競争ができる社会」の前提である「機会の平等」を確保するという観点に加えて、少子化対策の観点からも公教育システムの早急な改革が必要ではなかろうか。

教育というフィルターを通してますます格差が拡大する。フィルター内補正でフィルター入り口の格差をなんとかせよ。極端な話、塾にも行かせられず、中高一貫校にも行かせられない貧乏人の子弟は公立エリート校に入学せしめ、貧困なるがゆえに東大に合格するような教育制度にせよと。あくまで極論。
ここで、論じられているのは所得格差が教育格差を拡大再生産し(、そして教育格差が所得格差を拡大再生産し)ているということだから、例えば教育の「質」「職業教育」などに触れられていないのは仕方がない。
しかし、明らかに教育が「人格の完成」ではなく「国家的人材の育成」でもなく、言わば「投資対象となっている」「出世の手段(就職の手段)」としてのみ語られ、「投資対象となっていることによって生じている手段の格差が自由競争にとって公正でない」「投資規模の大小に係らず教育対象(子弟)の素の力で競わせるのがより公正である」というような教育観になってしまっているのが新自由主義の恐ろしく貧困な影響だと思う。
確かに現実には進学や教育費の問題は家庭・家計にとっても本人にとっても常に緊張を強いられる切迫した問題である。
私には「教育とは」「公教育とは」ということを論じ展開する能力はないけれど、本当に問われるべきは社会も・親も・子ども自身すらもが、子どもを金銭の支出されるべき投資対象として、現在の所得や資産から子どもの将来の伸長をあらかじめ見透かしてしまうようなイデオロギー制度としての教育制度ではなかろうか。こんな制度に親も子どもも脳髄をドップリ浸らせているから子どもを「ICU」で鍛えたり(奈良)、制度外的な仕返しをしたり、それこそ自我と人格の存亡を掛けた・しかも刹那的で軽薄な脱コード的尊属殺人を犯したくなったりすんじゃないのかな。
もう少し簡単に言えば(ちょっと別のニュアンスも加わる気がするけれど、所詮はブログなので寛恕してもらい)、学歴社会そのものを批判し切らないと、格差の悪無限からは抜け出せないのではないかということ。


子育て負担と経済格差 〜若年層の経済基盤の安定が少子化対策の鍵〜

なお、少子化対策として子育て費用に着目したレポートも出ている。
けいざい・かわら版 より身近な経済に関する事象や出来事を平易に解説するコーナーです
経済調査部 橋本 択摩 さん
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/monthly/pdf/0608_9.pdf

生涯子育て費用が生涯賃金の4分の1〜2分の1となることから、そもそも非現実的なケースであるといえる。つまり、このような経済的現状の下では、非正社員が結婚・出産に二の足を踏むことは当然の帰結であり、若年層への就業支援が少子化対策としても重要であるといえよう。

これに使用されている図表も教育費の欄の色を変えてあり、広義の子育て費3126.5万円のうち、1442.2万円が教育費となっている(4ページ)。

若年層の経済基盤の安定こそが少子化対策の鍵を握るのであって、その上でワーク・ライフ・バランスの推進や育児支援企業への優遇措置等、少子化対策として実効性のある施策から手を打っていくべきであろう。
……
格差問題、若年雇用問題、少子化問題はそれぞれ軌を一にしているのである。

念のため付け加えておくが、所得格差が教育格差を生んでいることを解決しようという意図には大いに同意する。なんとかしてほしい。切実である。