▼「これはひどい!」 とことん青年を蔑視する労働経済白書

読んでいて「これはひどい」と叫びそうになった。

平成18年度 労働経済白書 ダイジェスト

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/06-2/index.html

-就業形態の多様化と勤労者生活-

第1章  労働経済の推移と特徴
第1節  雇用・失業の動向

2005年の雇用失業情勢は、完全失業率が低下、有効求人倍率は上昇傾向で推移し、就業者数・雇用者数は増加している。また、人手不足感も表れ始め、新規学卒者の就職市場は改善傾向を強めており、若年者の完全失業率は低下している。しかしながら、若年者の完全失業率が相対的に高水準であり、地域の雇用失業情勢にも改善のテンポに差がみられる。このように、雇用失業情勢は厳しさが残るものの改善に広がりがみられる。
また、パート、アルバイト、派遣労働者契約社員、嘱託社員など、様々な名称をもった非正規雇用が増加し、就業形態の多様化するとともに、雇用に占める正規雇用の割合は低下傾向にある

第2節  賃金、労働時間の動向


賃金は、所定外給与が3年連続増加となるなか、所定内給与、特別給与が増加に転じ、現金給与総額は5年ぶりに増加に転じた。また、春季賃金交渉における賃上げ率も2年連続で前年を上回り、企業収益の改善が賃金に波及してきている。しかし、企業収益の賃金への配分は、業績連動型で賞与に反映される傾向が強まっており、また、基本給についても業績・成果主義の導入が進むなど、賃金制度に変化がみられる
労働時間については、2004年に比べ所定外労働時間の増加幅が縮小し、所定内労働時間の減少幅が拡大したため、総実労働時間が前年比減少となった。しかし一方で、壮年層の正規雇用労働者では長時間働く者の割合が高まっており身体や精神の疲れを感じさせる働き方となっている

正規雇用労働者は過酷な労働を強いられている。と書かれるべきである。
なお、成果主義賃金の導入が進む、というのは、企業にとってはコスト管理システムとしての「賃金」制度かもしれないが、労働者にとっては「人間関係」「自己関係」「労務管理」の導入である。したがって、「成果主義賃金」制度ではなく「成果主義賃金という労働制度」と理解するのが、よりリアルである。


参考
社会経済生産性本部メンタルヘルス研究所 2006/07/28
2006年「メンタルヘルスの取り組み」に関するアンケート調査結果
http://www.js-mental.org/images/03/20060728.pdf
http://www.js-mental.org/kekka.html


しんぶん赤旗
シリーズ 職場 成果主義を追って
2006年5月23日 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-05-23/2006052301_01_0.html
2006年6月19日 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-06-19/2006061903_01_0.html
など

第3節  物価、勤労者家計の動向

国内企業物価は2年連続して前年比上昇となったものの、2004年に6年ぶりに前年と同水準となった消費者物価は再び下落に転じた。しかし、消費者物価は生鮮食品を除く総合では2005年11月に、総合指数でも2006年1月に前年同月比プラスに転じたことから、デフレが改善されつつある傾向がみられる。
勤労者家計は、2005年の消費支出は名目、実質ともにマイナスであったが、物価の下落によって実質消費支出は下支えられ、消費者心理の改善もあり、総じて堅調な動きとなった。

第2章  就業形態の多様化とその背景
第1節  経済社会の変化

就業形態の多様化の動きを産業ごとにみると、1980年代以降、卸売・小売業、飲食店、サービス業など第3次産業の分野で進展してきた
これに対し、製造業では、1990年代までは、非正規雇用比率の高まりはみられなかったが、2000年以降は、その割合が上昇している。また、生産工程に、請負労働者、派遣労働者として従事する労働者も増加している。
グローバル化を背景とした国際的な経済競争が、今までにない強まりを見せているが、1990年代の我が国製造業は、国際的にみて低い労働生産性の向上しか達成できず、雇用を生み出す力をかなり落としていた。しかし、今回の景気回復局面においては、国際競争力をとりもどしつつあり、賃金コストも国際的な水準からみて低下するとともに、2005年秋以降は、製造業雇用者も増加に転じている。こうした、製造業の復調の背景には、技術革新を活かした付加価値生産性の伸びの上昇もあるが、非正規雇用を活用し、コストを抑制するとともに柔軟な生産体制を構築したことも大きく貢献したものと考えられる。

第三次産業の分野で進展って、第一次産業をつぶしていったからでしょ。
○食健連運動の歩み
http://www.shokkenren.jp/katudoukeika.html

日本食物史年表(昭和戦後編)
http://www.oysy.net/history/history_showa.html

○1988年 共産党下田氏 牛肉・オレンジの輸入自由化問題に関する質問主意書
 http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/112/syuh/s112018.htm


「2000年から非正規労働者が増えた」、とあたかも自然現象のように、その要因については言及していないが、これは労働者派遣法の「改正」によるもの。1999年12月施行の改正は、労働者派遣職種の原則自由化が主たる中身。港湾運送業務.建設業務.警備業務.医療関係業務を除くすべての業務に関して、原則的に労働派遣が可能になった。
また、2004年3月施行の改正は、それまで現在1年とされている業種の派遣期間を3年に延長、「物の製造の業務」への派遣解禁等が主な内容である。


非正規雇用活用しまくり。その多くが青年である。

 

第2節  勤労者意識の変化と働き方

就業形態の多様化は、勤労者の意識変化に応えつつ、労働力を供給しやすい柔軟な形態として広がっている側面も強い。体力や就業動機など個人差が大きくなる高齢者や、仕事と家庭の両立が困難であるなどの事情を抱える女性については、個々の事情に見合った働き方として非正規雇用での就業を選択する者が多い。
労働力供給が制約される我が国社会では、高年齢層や女性の就業希望に応えて多様で柔軟な就業機会を創造し就業率を高めていくことが不可欠であり、そのためには、就業形態間の均衡処遇などを通じて、どの働き方を選んでも意欲をもって働けることが大切である。公正な処遇が確保され、誰もが安心して働くことができる労働環境の整備に取組む中で、今後も就業形態の多様化が進展していくものと見込まれる。
一方、若年層では採用抑制が厳しかったことから、1990年代半ば以降、非正規雇用割合が急速に上昇し、不本意な選択として非正規雇用で就職せざるをえなかったとする者が多くなっているが、若年者の求職態度にも問題があったと考えられる。若年者の職業的自立に向けて、より幅広く積極的な支援が求められている。

「問題があった」とはなんやねん。

(若年者の就業意識と働き方の選択)

近年非正規雇用比率が急上昇した若年層であるが、その多くが不本意ながら非正規雇用の就業形態を選択したとする一方、自己都合で非正社員を選んだと思われる者もおり(第18図)、就業形態の多様化の進展によって就職の際の選択肢に「非正規」という雇用形態が加わったことで、職業選択の場面での働き方の自己決定の重要性が増してきている。
就業形態の選択や就労において自分の能力や価値観を重視する若年者が増えているが(第19図)、若年者の希望と社会が必要とし企業が求めている人材との間には、ずれが生じている。これは、就業前の若年者が、進路選択上重視することや実社会で必要な要件などについての理解が十分でないために求人の実態等に即した幅広い求職活動を行うことができず、希望する会社や職種に偏りが生じてしまっていることが一因にあると考えられる。さらに、就職にあたっての若年者の意識をみると、「希望の仕事があれば」働きたいとする者が半数を超える上、働くことに積極的でない者も少なからずいる。
これらのことから、若年者が職業的自立に向けて不足している知識を補いしっかりとした職業意識を形成するためにはキャリア教育の必要性が高まってくるものと考えられ、より早い段階から若年者の就業意識を涵養し、行政をはじめ、企業や地域が連携しながら若年者の安定的な雇用につなげるように努めることが重要であるといえる。


青年が自分の進路を決定したり、初めて就業したりするのに「じっくり考えたい」「自分の特性を見極めたい」「自分に向いていないと思う職業には就きたくない」「自分の能力や個性を活かしたい」と考えるのは当然であって、企業が企業の都合で非正規雇用を増やしてた下で、「自己都合」であっても「非正社員」しか選択できないのは青年のせいではなくむしろ企業のせいである。
企業の都合で断片的な労働でも・派遣でもなんでも喜んで就職しろ、と言い、「理解が十分でないために求人の実態等に即した幅広い求職活動を行うことができ」ない青年のほうに責任を転嫁する。「就職にあたっての若年者の意識をみると、「希望の仕事があれば」働きたいとする者が半数を超える上、働くことに積極的でない者も少なからずいる。」とのことだが、前半は当然のことであり、後半は青年たちから労働の夢と誇りと希望を奪ってきたバカバカ社会こそ反省すべきであろう。
1000万円持ってて「投資」したら工場労働者の年収分の配当を貰って、非正規職員の給料数ヶ月分の年金を毎月ダクダクと貰ってニコニコしているような老人が日本の経済のトップであるような社会で、働くことに積極的になれない気分になる青年を役所が責めることができるのか。あ、ミンカンの人が責めるのか。天下った民間の人が。
すごいはらたつ。

第3節  企業行動の変化と就業形態

企業は就業形態の多様化を経営戦略の中に積極的に取り込んでおり、コスト削減ばかりではなく、柔軟な生産体制の実現、迅速な対応力、リスク管理など経営上の諸目標を達成するための人材マネジメントを強化している。近年の、我が国製造業の国際競争力の回復の背景にはこうした人材マネジメントに基づいた非正規雇用の活用があると考えられる。
製造業での近年の非正規雇用の特徴をみると、生産工程における請負労働者、派遣労働者の活用があり、特に、機械関連の製造業での活用が多い。製品のライフサイクルが短くなり、生産変動の見通しがつきにくくなる中で、そのリスクを低減させ管理するために、生産過程の一部の工程を請負事業者などに任せる動きが広がっているが、こうしたリスク回避的な行動が単なる請負労働者への単なるリスクの押しつけにならないようにしていくことが求められる。生産工程で働く請負労働者は若年者が多いが、その賃金は現状では、年齢が上がっても、勤続を重ねてもほとんど上がらず、労働者自身も将来に向けキャリアを高めていこうとする意識が乏しいなどの問題がある。


ひどい青年労働者バッシング!
青年を非正規雇用として断片的労働に縛りつけ、こき使って・使いまわして・技能も身につけさせず、学ぶ時間や資金も与えないで「向上心が足りない」とバカにする。青年たちからは「人間力」を奪って、雇用者側だけが「国際競争力」を回復させる。

(乏しい若年者のキャリア形成意識)

生産工程で働く請負労働者は若年者が多いが、その賃金は現状では年齢が上がっても、また、勤続してもほとんど上がらず、労働者自身も将来に向けキャリアを高めていこうとする意識が乏しい。今後の働き方の予定について「リーダー・管理者」、「現場社員」の別にみると、双方ともに「特に考えていない」との回答の者が多い。リーダー・管理者では、現場社員と比べて「今の請負・派遣会社で製造現場の管理者として働く」、「今の請負・派遣会社で営業所や本社スタッフとして働く」との回答割合が高く、キャリアを積み重ねていく志向がみられるが、現場社員では、「今の請負・派遣会社で一般の請負・派遣社員として働く」、「請負・派遣会社や製造企業ではない企業に転職する」との回答割合が高く、今後のキャリア形成については現状維持もしくは一時的な仕事との認識であることが分かる。

特に考えていないと言うより、こんな雇用情勢では「考えられない」というのが正解だろう。
企業の都合でどんどん配転され、技能も技術も身につかず、加齢だけが進んでいくのだから、クビにならずシゴトをもらえるよう祈るか、とっとと辞めてしまいたいと思うのではなかろうか。

第3章  勤労者生活の課題
第1節  勤労者生活の変化


就業形態の多様化の中で、非正規雇用割合の上昇がみられたが、特に、1990年代半ば以降では若年層の非正規雇用割合の上昇が大きく、収入の低い労働者の割合が増加し、若年層で収入格差の拡大の動きがみられる
我が国社会全体の所得格差の動向については、高齢者世帯間では所得格差が大きく、また、小規模世帯が増加すると所得の少ない世帯が増加し格差を拡大させるなどの特徴があるため、高齢化や小規模世帯の増加などに伴い、格差を示す統計数値の上昇がみられるものの、高齢化、世帯の小規模化などの影響を除けば、世帯単位でみた所得格差の明確な拡大傾向は認められないと考えられる。また、収入の低い労働者が若年層において増加しているが、今のところ、収入の低い者の多くは親と同居していることなどから、こうした動きは、世帯単位でみた所得格差の拡大に直接つながるものではないと考えられる。しかし、正規雇用と比べ非正規雇用では職業能力開発の機会も十分ではなく、非正規雇用では職業能力形成も進みにくいため、今後、これらの層が独立しなければならなくなったときに、所得格差が拡大したり、固定化することが懸念される。また、最近では、フリーターの減少など状況の改善がみられるところであるが、景気の持続的回復傾向の中で若年者の正規雇用化の動きを推進し、若年者の職業的自立を通じて格差の固定化を招かないようにしていくことが重要である。

っつーか、派遣の規制緩和を「就業形態の多様化」などと表現しないでもらいたいものだ。「雇用形態の劣悪化・貧困化」と呼んでもらいたいものだ。
しかも、非正規雇用の青年労働者が親との同居を余儀なくされていることをもって、将来の望まぬ貧困層にならないかとか、少子化の原因だとか、「困ったやつら」と言わんばかりである。

(階層ごとに違いがでてきた消費行動と今後に向けた課題)

我が国社会においては、今のところ所得格差の明確な拡大傾向は認められないと考えられるが、所得階層ごとにみると消費行動に差異が生じていていることには注目しておく必要があると考えられる。
消費支出の費目別の構成比変化を、年間収入五分位階級別にみることで、収入階層ごとにどのような消費支出を増やしているかをみてみると、交通・通信費は全ての収入階層において大きく上昇し、光熱・水道費は収入の低い層ほど大きく上昇している。一方、教育支出は、収入の高い層が大きく上昇しており、保健医療費についても同様の傾向がみられる(第34図)。また、消費支出の2001〜2005年平均の前期(1996〜2000年平均)に対する増減率を費目別にでみると、収入の低い第Ⅰ五分位や第Ⅱ五分位では交通・通信費の伸びが際だって大きく、収入の高い第Ⅴ五分位でのみ住居費、教育費が増加している。
教育など将来に向け長期的・計画的に支出していくものは高所得層で増加しているが、低所得層では交通・通信費、光熱費などの増加から、将来的な生活設計に振り向ける資力が低下していることが危惧される。また、低所得層ほど平均消費性向の上昇が大きく、貯蓄保有世帯の割合が低下することが懸念される。


内容は別の機会に検討すべきかもしれないが、これでもかこれでもかと携帯電話の普及を煽って、依存させたこと。低所得者層は現在も将来も教育にまわす資力が少ないこと。企業は「学歴に裏付けられた能力」というものを評価していること。(第二章第一節「正規従業員については、就業形態の多様化が進展している中で、高い学歴と、それに裏付けられた高度な能力を持つ者に対する需要が、ますます高まっている」) よって格差が世代的に引き継がれていくこと。「チャレンジ」する前に失敗が約束されていること。

それにしても、青年には家計における計画性・人生設計の能力もないのだと言わんばかり。将来ビンボー人が増えるのではないかと「懸念される」とは何事か。

第2節  若年者の就業機会と職業能力開発機会(PDF:251KB)

若年者の就業機会について現状をみると、景気回復に伴い新規学卒者にとっては、正規雇用への選択肢が広がってきているが、バブル崩壊以降、採用抑制が厳しかった時代に非正規雇用に就いた若年者にとっては、正規雇用への移行は依然として難しい状況にある。パートやアルバイトの仕事を繰り返しながら不安定就業を続けている者も多く、こうした人々の年齢層も次第に上がっている。このように、職業氷河期世代の「年長フリーター」には滞留傾向がみられ、就業意欲に欠ける、いわゆるニートの数も近年高止まりしている。
現状では、新規学校卒業後、パートタイマーやアルバイトなどの非正規雇用の仕事についた者は、正規の雇用に転職しようとしても容易ではなく、職業能力開発の機会も相対的に乏しい。また、勤続してもあまり賃金は上昇せず、離職率は相対的に高く、所得は低い水準にある。このため、非正規雇用の若年者は、親から独立することが難しく、親と同居する者の割合が高く、有配偶率も低い。これらは進行する少子化の傾向をさらに促進する要因にもなっているほか、公的年金に加入していない者の割合も相対的に高いことから、日常生活で生じる事故や老後の備えができていない場合も多い。
企業は、若年者を雇用契約期間の短い非正規雇用として調達することによって、コストの抑制や生産・サービスの柔軟な提供を実現することができたが、このような企業行動は、長期的・継続的な視点を欠き、若年者の育成を通じた職業能力の持続的な向上を引き出していくことはできないであろう。労働者の職業能力は、職務の経験を積みながら技術・技能を一つ一つ身につけることによって高められるのであり、新規学卒者の計画的な採用と育成は、それぞれの企業にとって価値ある人材を採用し育て、蓄積していくことを意味する。人口減少に転じた我が国社会が持続的な経済発展を実現していくためには、企業が長期的・継続的な視点を持って人材を採用し育成することを基本としながら、社会全体として高度な人材の蓄積を図っていくことが重要である。


日本の青年たちの一部を「ダメ」にしたのは企業の身勝手な雇用行動と、それを規制緩和で許した政治である。ということが書かれている。政治批判ナシに。

第3節  雇用システムと勤労者生活

労働者の職業能力は、長期的・継続的な職務経験の積み重ねによって培われるものであり、企業の雇用に関する方針や行動は、労働者の職業能力の形成に大きな影響を及ぼしている。
労働者を長期雇用する慣行については、正規雇用に関する限り基本的な変化はみられない。
バブル崩壊以降、マクロ経済環境が悪化し雇用調整の必要性が高まる中で、多くの企業はできるだけ長期雇用を維持するよう行動し、雇用調整は、その分、入職抑制へと集中し若年失業が特に増大し、また、同時にフリーターなどの不安定な就業層が形成されることとなった。近年、景気回復に伴い、ようやく新規学卒者の採用に増加がみられるが、多くの企業は、新規学卒者を定期的に採用し、計画的に育成していくという人事方針を維持しているものであり、今後、景気回復の持続を通じて、企業が将来展望を持ち事業の見通しに自信を深めていけば、正規雇用への門戸は、さらに広がっていくことが期待できる。
また、近年の賃金制度の変更が賃金構造に及ぼしている影響については、業績・成果主義を活用した能力評価システムの改善の中で、結果として、男性40歳台半ばまでは賃金カーブが維持される傾向がでてきている。しかし、これをより詳細にみると、30歳台から40歳台において賃金格差の拡大がみられ、年齢や勤続という外形的な要因で集団的に管理されてきた日本型雇用システムは、一人一人の労働者の能力を評価し賃金に反映させていく個別化の方向へ進んでいることが分かる。

賃金格差を傍観。

まとめ


就業形態の多様化は、グローバル化に伴う厳しい市場競争や産業構造の高度化、生産・サービスの柔軟な供給体制をとる企業の経営戦略、高齢化等に伴う労働力供給構造の変化、勤労者意識の変化などの複合的な背景のもとで進展してきた。
人口減少へと転じ、労働力供給制約が強まる我が国社会において、今後も持続的な経済発展を実現していくためには、労働者が、その持てる能力を十分に発揮することで高い労働生産性を実現し、より多くの人々によって社会を支えるという視点から就業率を高めていくことが重要である。就業形態の多様化が進展するもとで、労働者一人一人の働き方に違いが生まれているが、人々の持つ多様な個性を、経済、社会の持続的な発展に向けた原動力として積極的に活かしていくことが、我が国社会全体にとってますます重要な課題となっている。労働政策は、こうした観点から、
  ①公正な処遇が確保され誰もが安心して働くことができる労働環境の整備、
  ②格差の固定化を招かないための職業能力開発の充実、
  ③自立した職業生活を営むための若年者の社会的支援
の3つの主要課題に積極的に取り組んでいくことが求められる。我が国社会では、一人一人の労働者が多様な個性を発揮し、生き生きと働けるような就業環境が整備されていくことが課題となっており、日本型雇用システムもこの要請に応え、「新しい日本型雇用」を創造していくことが求められている。今後も、職業能力開発機会の充実に努めるとともに、職業能力の適正な評価を通じて実力主義の企業風土を培うことによって、挑戦する気持ちを持った人が何度でも再挑戦することができる柔軟な雇用システムを目指していくことが、「新しい日本型雇用」の創造にとって、特に重要なものになると考えられる。

きょう8/9の読書はここまで。
8/16 上の中に追記。まだ編集途上です。


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