▼自立した個人とは何か②

障害者の自立は、その自立が「人格の尊重」=生きて・生活して・活動して良かったという暮らしの保障という限りにおいて目指されなければならないが、東京都の関係機関の提言はどうのべているか。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/syougai/ho11/ho0011b.htm
それは、「自己選択・自己決定・自己責任」という形式をとにもかくにも整備することである。「自己責任」というスローガンがどれだけ障害者の足かせにならないか、ならないように整備するか、その環境整備の量と質とが問われなければならないだろう。
ここで言われている「自己責任」というものがどのような事態を想定しているのか、また東京都の障害者の方々がこの提言をどのように受け止めておられるか、知るところではないが、少なくとも今日の「自立支援法」のような「受益者負担」の思想は、まだ表面化してはいないようである。
ここでは、経団連のいう自立のように「責任を果たす」ということの向こうに「自立」が認められるという論理ではなく、独立・自律という形式が重視されているという点が確認できる。

第三期東京都障害者施策推進協議会提言の概要 2000年平成12年11月9日
東京都障害者施策推進協議会

21世紀における障害者の自立生活支援システムの構築に向けて(提言)

第1章 21世紀における障害者の自立生活支援の基本理念
第1節 障害者の主体性の確立

【自己選択・自己決定・自己責任】
 「自立した個人」とは、自らの人生を切り開いていくために、自らの生き方を自らが選びとり、決めていくという自己選択・自己決定の力を持つとともに、その選択や決定によって生じた結果に対しても、自ら責任を負うことができるといった人間像として捉える必要がある。
 このことは、社会を構成する一員としてのすべての市民の基本的なあり方であり、私生活の領域だけでなく、社会におけるさまざまな活動においても、自分と他の人との関係を調整しながら実現させていくべきものであろう。
 障害者にあっても、こうした「自己選択・自己決定・自己責任」といった主体性を確立することは、常に、保護の対象と見られたり、家族と一体のものと見られるのではなく、独立した人格を持つ個人として尊重され、地域において自立して生活していくための基本的課題である

【主体性の確立のための条件整備】
 障害者が主体性を発揮するためには、まず、障害者自身が自立への意欲を持ち、日常生活や社会生活においてさまざまな活動にチャレンジできるよう、行政をはじめ、家族や支援者を含む障害者を取り巻く市民は、以下のような条件整備や支援に取り組んでいかなければならない。

 第一に、居住・移転の自由と行動の自由を保障する都市基盤の整備である。

 第二に、日常生活や社会生活をおくるうえで必要な情報の提供や双方向のコミュニケーションを保障する機器、技術及び通訳者等の対人援助サービスの確保である。

 第三に、日常生活や社会生活をおくることが困難な場合に、一人ひとりのニーズに応じて、必要なときに必要とするサービスが利用できるサービスシステムが求められる。

 第四に、障害者が自らの生き方を決定するため、そして必要とするサービスを自ら選択し、購入するための経済的な基盤としての所得保障である。〔ただし〕今後、所得保障のあり方について、国の年金・手当制度の充実を基本としながら検討していく必要がある。

 第五に、障害者が社会におけるさまざまな活動に対して、失敗を恐れずに果敢にチャレンジするためその選択・決定に伴って生じるリスクの大きさや結果に対する責任の重さについて伝え〔ながら継続的に支援する〕。

 最後に、障害及び障害者に対する差別や偏見を取り除くための意識上のバリアフリーの施策が重要である。

〔それは換言すれば次の表題である。〕
【地域で主体的に生活できる社会の実現】

第2節 障害者の自立支援とその家族への支援

【親・家族からの独立】
 一般的には、一定の年齢に達したとき、親・家族から生計を独立して生活することが「個人の自立した生活」と捉えられてきた。これまでも、かなり重い障害をもつ人が、成年期に達したときに親・家族から独立し、公的サービスのみならず、自ら開拓したサービスを活用しながら自立生活を実現してきた。
 個人の自立は、「自己選択・自己決定・自己責任」といった主体性の確立を基本としており、障害をもつ人が自ら選択して親・家族と同居する場合でも、障害者と親・家族のそれぞれが、経済的・心理的に独立した生活を実現していくことが重要である。

後略