▼宮本顕治氏が示したもの

宮本顕治氏といえば、どうせ宮本独裁だとか人殺しだとか、共産党にはひどい目にあったとか悪罵の的になるのだろうから、そうしたことは余人に任せ、ここでは賛辞ばかりにしてみる。

<訃報>日本共産党元名誉議長の宮本顕治氏死去、98歳

 日本共産党元名誉議長の宮本顕治(みやもと・けんじ)氏が18日午後2時33分、老衰のため、東京都内の病院で死去した。98歳。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070718-00000062-mai-pol
政治的には
  1. アメリカ帝国主義と日本独占資本による支配という二つの敵論の日本規定に基づく人民民主主義革命を当面の目標にする二段階革命論
  2. 個人崇拝・事大主義を排する自主独立路線と、内政不干渉を中心にした外交原則。その基底にある(社会主義大国の伸張ではなく)民族自決と各国人民の闘争をこそ各国人民の進歩の原動力とみる世界情勢観
  3. 人民の運動と諸議会、国会内での闘争とを呼応・結合させ人民の利益を図る人民的議会主義
党運営・党活動としては
  1. 民主集中制への粘り強い努力、とりわけ官僚主義との闘争
  2. 発達した資本主義国にふさわしい闘争内容と形態、マスコミに対抗できる機関紙の発行(北爆下のベトナムのように命を張るのではない、別の形での地道で根気の要る活動)


宮本顕治氏が中心となった時代の共産党について思い浮かべられることどもは以上のようなことであろうか。

階級闘争に生きる厳しさと喜び

今、氏の著書を押入の奥から引っ張り出す生活上の余裕がないので孫引きだが。

人生を漂流しているのではなく、確固として羅針盤の示す方向へ航海しているということは、それにどんな労苦が伴おうと、確かに生きるに甲斐ある幸福だね。漂流の無気力な彷徨は、生きるというに価いしない。たとい風波のために櫓を失い、計器を流されても、尚天測によってでも航海する者は祝福されたる者哉。
(1944.10.10)

社会科学に裏付けられた倫理的権威の具現

なんといっても戦前の非合法下での活動、獄中での非転向の輝きは、氏だけの特許ではないにしても氏に代表されるものであろう。
信仰信念による非転向ではなく、その当時なりの社会科学に基づいた反帝反戦人民主権・非転向の闘争は、社会科学としてのマルクス主義に倫理の輝きを与えた。そればかりではなく人間に倫理の強さと光を与えるものは科学と階級性への忠実であることを示したものであった。


その倫理性の発揮は、日本における一方の「美」であって、多くの人民を死に至らしめた権力者の内心だとか、だまされ操られて自ら死地に赴くを余儀なくされた青年たちの「正直」だけを取り上げた美化など、人格的自立を持たない(人を隷従させたり、逆に隷属したり盲従したり操られたりという)「美」などは比較にならないほどのものである。


今日は書きかけなれど、ご冥福をお祈りしたい。