▼インドは日本の二倍くらい美しい、かも

四季があるから日本は美しいという授業

2006年11月14日、NHKクローズアップ現代で放送されていた「“愛国心”って何ですか」は私もたまたま視聴していて、「ああ、イヤでもこういう授業を施したり受けたりしなけりゃならなくなるんだな。それにしても、幼稚な組立てだなぁ」などと思ったものである。関連して、「愛国のかたち、愛国心いろいろ」で少しだけ愛国心について触れた。
またNHKの当該の授業については、

また反応もまだGoogleなどで検索できて、敬称・題名等省略させて頂くが

などなどがヒットする。


授業

国を愛する心を育てる道徳の時間の指導の工夫」という報告は、放送された渡邊先生についてどうこうというより、東京都の教育委員会や研修センターの教育思想・授業思想として、つまり一般的にありそうな・推奨されやすい授業として読まれるべきである。


授業案は緻密に作成されねばならない。

教育目標とその理由

  • 次代を担う児童・生徒には国際社会に生きる日本人として、世界の人々から信頼、尊敬されるよう、日本人としての誇りと自覚をはぐくむことが大切である。
  • 「国を愛する心」とは、自国をつくっている人々、自然、文化、伝統、歴史等の理解を深め、尊重し、継承・発展させ、自己や社会の理想を求めて主体的に生きようとする思いととらえた。

端から経団連ばりの国際的日本人のための愛国心が「大切」だと無条件に前提されているところが、ヒラメな教育目標、もしくは単元観と言える。つまり、児童にとってどうなのかとか教師自身はどうなのかとかいう「香り」は何もしないのである。まぁ、当該センターでの研究報告では仕方がないが。

児童観

  • 児童の直接経験が少なく、多様な価値内容を含み他の内容項目と異なるため、指導の難しさが挙げられる。
  • 一体児童が何を知っていて考えているか調べてみたところ次のようだった。
  1. 国に関する知識・理解は社会科等の教科学習や新聞、テレビ等のニュースから培われる。
  2. 日本のイメージは「平和」という児童が多いが、イメージが「ない」という児童もいる。
  3. 全体の約四分の一の児童は、素晴らしいと思う日本文化は、「ない」と答えている。
  4. 「国を愛する」こととは「平和」「自然を大切にする」「伝統文化を守る」「人々と協力する」という回答が多い。
  5. これからの日本に期待することは「世界平和のために頑張っていく」「自然が豊かな美しい国になってほしい」「日本は、地球の自然を守るように頑張っていく」「外国と仲よく」「人々のためにできることをしていく」である。

この調査により、なぜか以下のような児童観が導出される。

  • 児童は生活の中で日本の文化を意識する機会が少なく
  • 国に関して自分のこととしてとらえているには不十分であるということが分かった。

それにしても、渡邊氏の調査ではなかなか「愛国」的には良好な結果が得られたと私には思えるのだが、彼女と研修センターからすると「自分のこととしてとらえておらず」=国を他人事・傍観的にしか捉えていないから「不十分」だという、まだ「児童」である子どもらに対して非常に厳しい評価に立脚してしまうのに驚きである。
私なら、「一部に懸念されるような、国に対する自虐的認識や破壊的な態度は持っておらず、基本的に健全であると言って良い。この児童の認識や思いを大切にしながら更に自然・文化・国民生活などにも興味を深め、視野を広げ、中学進学を控えた小学校高学年にふさわしい生活態度・勉学意欲の確立に寄与する授業がなされるべきである。……」と作文するね。


放送された授業とこの報告書が同一の授業なのか知らないけれど、放送では常夏の国と四季のある日本と比較して「日本には四季があるから良い」(『動物農場』みたいだね「二本足〔人間〕は悪い・四本足〔動物〕は良い!」)に児童を挙手同意させる授業となった。
この報告書によれば次の授業は「世界の文化遺産」(5年生)、「日本の心」(6年生)と続き、「先人の偉大さ」「自然への畏敬の念」が「オチ」になっている。

参考

同じ教育センターの16年度だと思われる中学校道徳部会の「日本人としてのアイデンティティをはぐくむ指導の充実」では、夏の宗教行事である「盆」を題材に、
「盆」→「日本の伝統」「日本人の心」→「先祖への感謝」「伝統の中の日本」→「日本の伝統の継承尊重が外国文化の尊重につながる
という展開になっている授業や、柔道家の山下選手のオリンピック関連エピソードの授業が紹介されている。


インドは日本より美しいかも

ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る』(宝島社、2006年11月、未読)という本を出した門倉貴史氏という人が『インド人はなぜゼロを見つけられたか』(小学館文庫、2007年2月)って本を出された。そこにこうある。

……在日インド人はこう説明する。
「インドには豊かな土壌がありました。山があり、平地があり、大きな川や海に恵まれている。またインドには日本よりも多くの季節があります。日本の場合には春から始まって、雨季(梅雨)があり、夏、、秋、冬と続きます。これがインドの場合は、夏までは同じなのですが、そのあとにもう一度雨季があり、春が来ます。その後、秋、冬と続くのです。ですから一年のうち、日本と比べて作物が二倍育ちやすいのです。」

すばらしい!


インドでの愛国心教科書私案。

 小学生のシン君はこの間まで、お父さんのITの仕事で日本で暮らしていました。先ごろインドに帰ってきたのです。
 友達に日本のことを聞かれてシン君は言いました。
 「お父さんはボランティアで日本のコンピュータの仕事をしてたんだよ。まぁ、ボランティアって言っても全くの無償ではないけれどね。
 日本? そうだなぁ、日本には春・雨季・夏・秋・冬しかなくて乾季はないんだ。そのせいか、人の食べ物や家畜の食べ物も輸入に頼っているんだ。四つの季節って言うけど、冬や雨季もボクが滞在してた頃は異常気象とかでたいしたことなかったし、夏はやたら暑かったな。一番きれいだといわれる桜の時期なんかは、狭い公園が一番汚れる時だね。
 食べ物? そうそう、日本の家庭では何かっていうとすぐ「インドカレー」を食べるんだよ。日本の子どもたちが一番好きなのはベタベタした米にカレーをかけたカレーライスか、中国のラーメンっていう食べ物だね。
 あ、そうそう、インドには沢山の宗教があるけれど、日本はインドで興った仏教が主流なんだよ。あと、ヒンズーの神様もいろんな形で祭られていて、楽しいお祭りもあったよ。」

 それを聞いたシン君のクラスの友達は、「今や日本のみならず、アメリカのITもインド人なしでは立ち行かなくなってるし、季節も人口も土地も多くて広くて、やっぱりインドって良い国だなぁ」と思いました。
 わが国インドは非暴力を貫いて独立を獲得し、核兵器を所有しながらも隣国パキスタンとの戦争をやめ話し合いで紛争を解決しようとしています。平和と非暴力もインドの誇りです、と先生は付け加えました。