▼教育再生会議で気になった発言など──1

エリートが尊敬されない

第2回議事録 日時:平成1 8 年1 0 月2 5 日
○ 川勝委員 ……一番困った問題は、エリートが必ずしも尊敬されていないということです。学力は上げねばなりませんが、最高の学力を持った者が必ずしも尊敬されていない。
……それから、ボランティア活動、奉仕活動はとても大事です。ボランティアを既にしている青年がたくさんいます。しかも制度的に試験を通ってやっている。青年海外協力隊です。試験を受けて、毎年1,000人ほどの若者が2年間も開発途上国に行って、生活環境とか、自然環境をよくするために頑張っている。その青年たちは毎年5回ほどのレポートを書いて、そして、自動車にも乗らないで、現地でホームステイをしたりして学びながら奉仕活動をしているわけです。その青年たちをどう評価するか。評価していません。恐らくJ IC A の総裁が修了証書を出すだけではないでしょうか。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/dai2/2gijiroku.pdf

青年協力隊隊員の評価は妥当でないのだそうだ。(私はこの事業・制度には無知)

頭から叩き込む道徳と武断教育

第2回  平成18年11月29日 議事要旨

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/2bunka/dai2/2gijiyoushi.pdf
(池田座長代理)当分科会の検討事項は「規範意識や情操の涵養と学校規律の確立」と「放課後子供プランの全国展開」という2 つのテーマ
(門川委員)学校の教員の仕事が飽和状態
(張委員)「卑怯なことをしてはいけない」、「嘘はいけない」、「親を大切にする」等、頭から理由なしに叩き込むもの、「挨拶」や「感謝の表現」等は日々の慣習の中で行うもの、「思いやり」や「公徳心」のように本を活用して教えるもの、みんなでチームワークを身に付けることについては、体験学習を行うというように
(葛西委員)教室の秩序を乱すような生徒に対して、現状ではこれを制止する有効な手段がない。先生は体力や知力において生徒から抜きん出ていることで尊敬を集めることができ、指導が成り立つ。言うことを聞かない生徒達には、例えば剣道の先生が徹底的に稽古をつけてから授業を行うなど、普通の生徒とは違った角度からの指導が必要であり、そのような特別な教室を作ったらどうか。(しごきにしろ武道にしろ、生徒に勝てる分野で教師が勝って屈服させる。武断政治ならぬ武断教育。)
規律は体得するものであり、頭で理解するだけでなく形を整えることから身に付くのだ。知力、体力に加えて、規律を身に付ける為に必ず授業の前に起立し先生に挨拶をするなど「型」から入っていくことが大切である。
〔子どもの人間としての原体験が希薄であるということと、いじめ・規律問題は表裏一体である〕

「規律」というとき、子どもらが自ら進んで楽しく学習に向かう規律ということが本来論議されねばならないはずだが、ここでは力で押さえつけることが提唱されている。
道徳もその源泉は暴力であることが吐露されている。

しごきの後は皆でメシでも食え

第2回  平成18年11月29日 議事録

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○ 山中副室長 
資料3 、まず「規範意識や情操の涵養と学校規律の確立」ということで……2 番目は「自然体験活動、ボランティア活動等を通じて規範意識を育てる」ということでございます。具体的には、農村での宿泊自然活動、異年齢の活動、子どもたちの異年齢交流、放課後プラン活用等がございます。

4 番目は「学校の規律を乱した生徒に対してルールを守ることの大切さを教える」ということでございます。このことに関連いたしまして、規律を守らない生徒に対する懲戒というものが書いてございます。

これについて……昭和2 3 年の法務庁の通達というのが……ございます。

○ 葛西委員 ……自分の生活体験や体得したものが非常に大切だと思います。基礎となる体験がとても重要で、その基礎となる体験に付加価値をつけるのが読書と言えます。今、非常に問題なのは、学校が子どもたち、人間同士のインターフェースというか、アソシエーションの場に十分機能してないということだと思うんです。

ですから、この問題と学校のいじめ、規律問題というのは、表裏一体を成すものではないかという感じがいたします。 家庭も大事ですし、地域社会も大事なのですが、過疎化した地方、あるいは極めて高層住宅などの乱立によって核家庭化してしまった東京でも、どちらでも地域社会というのはなくなっている。それから、両親とも働きで労働力の場合、家庭における親との接点も限られてくる。そうすると、学校というものをいかに人間的接触の原体験の場にするかということがすごく大事だと思います。
○ 葛西委員 もう一つは知力だと思います。あの先生にはかなわない、圧倒的に自分よりも分野において知力が高いということで、先生は生徒から尊敬を集めることができ、師弟関係が成り立ち、指導が成り立つと言えます。〔ここでは「知力」というのだが……〕
教室の秩序を乱す悪い子どもたちに対する教育というのは、いい子どもたち、平均的な子どもたちとは違った角度が必要であり、それは特別な学級をつくって、例えば剣道なら剣道の先生が1 時間か2 時間徹底的に稽古を付けて、その後で今度いろんなことを教えてあげるというような仕組みを考えるといいと思います。その際には担任は1 人ではなくて、2 人とか3 人でやるといいのではないかという感じがいたします。〔「悪い子ども」たちには、知力ではなく体力・腕力で勝ってみせる。負けないよう複数で対応する。〕
それから、アメリカの海軍兵学校では、規律を正すために、全員揃って一緒に食事をさせるそうです。非常に単純なやり方なのですが、やはり規律というのは、体から教えるものであって、規律がなぜ守られなければならないかという精神から教えようと思うと、ものすごく難しいと思います。〔規律を守るのは理屈ではないのだと。〕

児童生徒の発達や自己活動を促し、手助けするのがEducationであるはずだが、ここでは軍隊式が称揚される。
拙ブログ求められる民主主義的政治能力とは──イギリス──の「民主的教育とは何か……佐貫浩氏「イギリスの教育学モデル」『イギリスの教育改革と日本』高文研より」も参照。

家庭の困難は無視されるか「家族の日」に矮小化

第2回  平成18年11月29日 議事録

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○ 陰山委員 今は大体通常の学級でも2 0% は離婚家庭なんです。ひどいところになってくると4 0% という状態になっていて、中には家を帰っても、もうほとんどお父さんもお母さんもいないということになるわけです。
こういう子どもたちが荒れるから、学校現場はその子たちを重視して、そしてそれに全体を合わそうとするわけです。だから、できない子を中心にしてみたいになる。
それをやると、確かにある程度は落ち付くんだけれども、やはり全体が崩れてくるという、要するに、バランスの問題だろうと思うんです。
ですから、そこのところを実態的に考えてやらなければいけないということであって、できない子を中心にするというのは、私はおかしいと思います。ただ、そういう問題があるということも事実なわけで、それをどういうふうにバランスを取るのかということを考えておいていただきたい。

陰山委員はなかなかの資料を出すのだが、収斂していくところが、早起き・家族そろって朝ごはん・家族の日になってしまうところが悲しい。