▼教育再生会議の有識者の「識」断片

そろそろ、教育ってカテゴリーがあったほうが自分のためかな。

陰山英男

(陰山委員)
学力については、家庭の問題もある。学力と就寝時間には相関関係がある。学力も人間力の1つである。授業を増やし難しくしても、支える家庭がしっかりしていないと、いじめや校内暴力等の問題が増加するのではないかとの懸念がある。学校と家庭はリンクして考えることが必要。

陰山氏は不登校を考える亀岡ページ陰山英男氏の不登校認識を疑う?!で、他所で「早寝早起きすれば不登校も解決する」と単純化・一般化するような発言をしていることについて非難されている。
たしかに、「朝きちんと起きられるようになれば不登校から抜け出せると言っています」(京都新聞06/11/03 10面広告)という引用してそのままでは、単純化しすぎだし不正確だし、不適切な時期に親が不登校の子どもを朝から「起きろ起きろ」と追い込んでしまうということがあるだろう。したがって、不登校を「教育再生会議のメンバーで、マスコミなどにも登場している陰山氏の発言ゆえに、不登校の子どもたちへの対応として誤ったメッセージとなる危惧を私は覚えます」という「亀岡不登校」主宰氏の感想は正当至極である。

不登校と生活リズム

例えば、上伊那子どもサポートセンター相談とお答え 生活リズムと昼夜逆転より抜粋。早寝早起きが効果的な例を排除はしないだろうけれど、一般化はよくないですね。それにしても「お答え」が子どもに寄り添っていることには泣けてくる。ただし、この問答の抜粋を何かの対処の直接の根拠にはしないでください。恣意的に抜粋しておいてこう書くのもなんですが、登校拒否関連で知りたい方は直接上記サイトをご覧ください。

Q.子供が登校拒否になりました。それはそれでよいとしても、生活のリズムだけはきちんと守らせたいと思います。どうすればよいのでしょうか。

A.これ以上余分なストレスをかけずに、そのままにしておきましょう
 僕らは長年こういう仕事をしており、多くのご両親、ご家族、ご本人にお会いしてきておりますから、「昼夜逆転」と聞いただけでとても安心します。「ああ、ちゃんと登校拒否らしくいてくれるなあ。心配ないなあ」と思えてしまうのです。
 「生活のリズム」といった「常識のウソ」にとらわれていると、窮屈どころか危険です。この時は常識はほとんど通用しません。そこからいかに早く離れるか、子供と共にどれくらい自由に、ありのままにいられるようになるかがいちばん大事なのです。昼夜逆転大いに結構、そのままを大事にしてやって下さい。

フリースクール元気学園というところの不登校の学習・生活・健康改善コースは生活習慣の改善を重視しているが、生活リズムの改善即不登校克服というふうには述べていない。

百マス計算、生活リズムなど

学歴社会と教育制度、カリキュラム、学校経営、学級経営、教育目標、教育方法、教材等々は、関連してはいるけれど相互に区別もされる事柄である。
陰山氏の詳細は繰り返すけれども私は承知してはいない。
陰山氏は百マス計算などで基礎学力を身につけさせ、もしくは回復せしめ、生活リズムを整えることで生徒・学級・学校をよくしようということらしい。別に新しいことではない。
80年代初頭に流行った『見える学力・見えない学力』で著名な岸本裕史氏、『子どもの生活リズム』で一部で有名な藤原義隆氏、「落ちこぼれをなくす教師の会」など当初はさんざん数教協などからこき下ろされていたと記憶するが、 現実に現場で軍配が上がったのは岸本氏のほうであったと記憶する。
百マス計算は、まあ九九の練習のようなものだと乱暴に理解しているのだが、こうした訓練・習熟が掛け算の「意味」を無視したものであるとかいうような批判(この批判についての理解も粗略なのだろう)があるらしい。
しかし、まだ抽象的な思考に慣れていない小学生に九九を暗記させたり速さを求めたりすることが、数概念・単位概念・位取りなどの理解を妨げるとかいう主張だとすれば、経験的には違うと言わねばならない。りんご5個と3センチメートルを掛けて答えは15などという計算を小学生が自ら行うはずもなく、そういうオバカは教師がやっつけ仕事で作成したプリントの問題に掲載されているのである。
生活リズムもそれで全て解決するかのように述べたとすれば、それは危険な単純化であるが、陰山氏もそのような一律な「早起き教」の教祖ではあるまい。


問題は、陰山氏が学校でぶち当たった諸課題の根本を家庭にのみ求めたり、「教師の質」に解消したりせず、教育学的な知見をもって政府と制度の何を・どのように変えるべきなのかと、これからが注目されるのではなかろうか。
あんまり、気に喰わぬ教師をクビにすればよいというような単純・短絡的な発言に迎合せず、制度の歪みの方をよく考えていただきたいものだが。


教育工場

(張委員 トヨタ自動車の現会長)

現場の教職員が誇りを持って、子どもを育てることに専念できるような環境をつくることが重要。いじめなどの異常事態は、個々の教員ではなく、校長、副校長、生徒指導担当教員などで別にチームを作って対応するべき。異常を個人1人に負わせないことが必要。工場の車の生産でも、異常を直すのは別のスタッフである。正常と異常を分けて、先生が正常な状態で教えることに専念できるようにすべき

学校とは○○を製造する工場なり、という教育観らしい。