▼2006年版 『産業人メンタルヘルス白書』1998年の変換点 〜職場に広がる不安格差〜

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財団法人 社会経済生産性本部

1998年を境に職場において不安格差

調査研究の概要(「1998年の変換点 〜JMIの経年変化にみる勤労者意識の変化〜」)

 1998年は金融機関の破綻が相次ぎ自殺者が3万人を超えるなど大きな変化の年であった。そのような変化が勤労者の意識やメンタルヘルスにどのような影響を与えたのか、JMI*1心の健康診断のデータにより経年変化から検証を行った。

1.1998年以降、不安格差が生じている

 自己不確実、劣等感、弱志、抑うつ、不安、偏倚の各尺度は1998年を変換点として上昇傾向に転じている。表現を変えて言えば、自信の欠如(自己不確実、劣等感、弱志)と不安格差(抑うつ、不安、偏倚)が生じており、職場全体のメンタルヘルスを低下させている。

2.職場領域の格差拡大は、職場の活性低下をもたらす

 職場領域のいくつかの尺度(将来への希望、仕事への負担感、仕事への意欲、同僚との関係、評価への満足感)は、格差が拡大する中で平均値を下げる傾向がみられる。

3.仕事志向を活かした活性化が必要

 逆に1998年以降、課題から逃げずに粘り強くまじめに取り組む姿勢(前うつ)と仕事への適応感は格差が縮小する中で上昇してきた。これらの姿勢を今後も伸ばしていくことがメンタルヘルスの向上と職場活性化につながる。
 企業は目標の数字を示すだけでなく、仕事の内容をも充分に説明し、仕事を通じて自分の居場所を見出せるようにし、価値ある仕事を提供し、その結果「仕事への適応感」を高める必要があろう。

「平均値」というのはメンタル・ヘルス(精神衛生)度の平均値が下がるということだろうね。
職場全体が悪くなるというより、職場の中での格差が拡がると不健康な人が増えるということだね。職場を分断するような出来事といえば、人員削減で正社員やリーダーや「有能な人」に仕事が偏ったり、バカにしあったり嫉みあったり、差別したりされたりということでしょうね。そういう副作用を催す何かを「必要」として導入したのだろうね。
一部では「格差」は「活力の源」というけれど、仮に何かの格差が活力の源であるにしても、健康を害するくらいなら妙な活力は要らないね。



最新調査の結果発表
https://www5.jpc-sed.or.jp/files00.nsf/276697182031a3fd4925672c001a56da/ea86772eae7b143f492571b90024a687?OpenDocument
過去の結果はここ。
http://www.js-mental.org/kekka.html


「心の病」が増加したのは、人員削減・成果主義・競争主義

せっかくなので、7/28のメンタルヘルスの調査結果の概要も紹介。成果主義賃金制度が原因とは書いてないが、あちこちで指摘されている成果主義賃金という労働制度や人員削減が原因と見られる鬱が増加していると読める。
今回の発表はそれが1998年がひとつのポイントになっているというわけ。

メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果
6割の企業でこの3年間に「心の病」が増加
〜コミュニケーションや助け合いが減った企業ほど顕著な増加傾向〜
 (財)社会経済生産性本部(理事長:谷口恒明)はこの度、「メンタルヘルスの取り組み」に関するアンケート調査結果を発表した。
この調査は、企業のメンタルヘルスに関する取り組みの実態を分析・解明するために、全国の上場企業2,150社を対象に2006年4月に実施したものである。(有効回答数218社、回収率10.1%)今回の調査は2002年、2004年に続いて3回目となる。

Ⅰ 6割の企業でこの3年間に「心の病」が増加
  1. 最近3年間における「心の病」は、6割以上(61.5%)の企業が「増加傾向」と回答。この割合は、過去2回の結果と比較すると一貫して増加している。2002年(48.9%)→2004年(58.2%)→今回2006年(61.5%)
  2. 年齢別にみると、「心の病」は30代に集中する傾向がより鮮明になっている。
  3. 「心の病」による「1ヶ月以上の休業者」は、74.8%の企業で存在。この割合も、過去2回の結果と比較すると一貫して増加している。2002年(58.5%)→2004年(66.8%)→今回2006年(74.8%)
  4. 従業員の健康づくり施策全体の中で、メンタルヘルスに関する対策に力を入れる企業が急増している。2002年(33.3%)→2004年(46.3%)→今回2006年(59.2%)
Ⅱ 背景に職場の変化 〜7割近い企業で「個人で仕事する機会増えた」
  1. 7割近い(67.0%)企業において、個人で仕事をする機会が増えている中で、約6割(60.1%)の企業で、職場のコミュニケーションの機会が減り、5割近く(49.0%)の企業で、職場の助け合いが少なくなっている。
  2. 各従業員の責任と裁量のバランスが取れているという企業は約6割(60.1%)あるものの、とれていない企業も4割みられ、責任と権限がアンバランスになりがちな現状もあることが示唆される。
Ⅲ 職場の横のつながりを取り戻すことが喫緊の課題
  1. 職場でのコミュニケーションの機会が減少した企業においては、心の病の増加した割合が71.8%にのぼっている。減少していない企業の心の病の増加割合は46.0%なので、その差は25.8ポイントである。また、職場での助け合いが減少したという企業においても、心の病の増加した割合が72.0%で、減少してない企業との差は20.6ポイントに、個人で仕事する機会が増えたという企業においては67.1%、増加していない企業との差は17.8%になっている。
  2. 「心の病」の増加傾向を抑えていくためには、職場における横のつながりの回復と、責任と裁量のバランスがとれるような仕事の仕方の改革、そしてそれらを含めた意味での一人ひとりの働きがいに焦点を当てた活力ある風土づくりが喫緊の課題である。

*1:JMI(Japan Mental Health Inventory)健康調査は、1980年に開発された“心の定期健康診断システム”です。
http://www.js-mental.org/jmi.html