▼自立した個人とは何か③

京都精華大学 中尾ハジメウェブサイト 大学教育とリテラシー

大学教育とリテラシー 『木野通信』No.37, 2003年3月

支配階級の人間だけでなく、多くの人びとが文字を使い、読み書きができること、つまりリテラシーは、近代社会の条件だったはずです。しかし最近よく耳にするようになった「情報リテラシー」という言葉には、こまったことに、もともとの「読み書き」に含まれていたはずの大事な意味が抜け落ちているように思われることがあります。情報機器が操作できるかどうかにばかり焦点があたり、人びとが読み書きをすることによって、深く考えたり、自立した個人として問題を提起することができるというリテラシーの意味合いがどこかへ消えてしまったようです。自立した個人とは、言うまでもなく、意識的かつ批判的に考える人間のことです。

ここでの自立は言わば「情報的自律」であるが、広く言えば「思想的自立」である。
企業は、受身ではなく自発的に国家・企業・「地域」に貢献することが「自立」であるといい、
行政は、所与の条件でお上に迷惑をかけずに一人で過ごすことを「自立」という。