生活保護を敵視する「相互扶助」、そして最低賃金。

この後、コメントがついていた。

……現状、それこそ死ぬ思いで毎日働いて薄給で、土日もない人がいるというのに「直接的」な「生活保護」が福祉の中で大きなバランスをしめて、受給者と(納税している)底辺労働者の生活水準が逆転したらおかしいでしょう?……生活保護の水準を切り下げると「平均的労働者」の税金は下げることが可能になり、必死で働いている人の生活は現実に楽になります。

これに対して、コメント。

貴殿の言う「必死で働く労働者」が病気や加齢で働けなくなったら、生活保護を受けることもあるでしょう。こんどは必死で働いてきたのに「受給者」になったとたん冷たくなるのはどうしてなのですか? 働けなくなった人には人権が薄くなるという理解があるのではないでしょうか。
……
生活保護の受給基準額が単身成年で毎月20万円になったとしましょうか。そうすると、当然労働者から不満が出ます。「生活保護受給者は贅沢だ」という不満ではなく「賃金を上げろ!」という運動が激しくなるでしょう。生活保護は国が認定した「最低限度の生活」なのですから。国が認定した最低限以下の賃金で働くなんて賃金が低すぎるわけです。現にそうなのです。
逆に生活保護の一般成年単身独居の基準額が都心で6万円だとしたらどうですか? そういう人たちがいれば、正社員で残業しまくっても10万円の月給でも最低の生活ではない、ということになるでしょう。国の定めた最低の生活ではないと。だからこの賃金で我慢できるよね、と。
生活保護を低い生活レベルで押さえつけるのは低賃金政策の柱の一つなのです。生活保護の受給基準額を下げれば、一般社会では賃下げの理由と根拠が増えるだけなのですよ。

国の支出の内訳を知っていても、薄給の労働者の立場に立ったつもりでいても、社会保障に関する理解がおかしいのか、生活保護受給者に余程うらみでもあるのか、弱者をいじめなければ自らの立ち行く瀬が無いと思い込む人が居るのだなぁ。

青年たちの人権感覚はどうなっているだろう。人権感覚がおかしいと、自己感覚が歪んでしまう。気をつけなければ。

ところで最低賃金

というのがあって、これが生活保護より低いのを初めて知った。理屈では単身で最低賃金で暮らしていたら生活保護を受給できるのだ。
ちなみに、
共産党吉川春子議員の2001年の質問より
http://www.haruko.gr.jp/josei/partq.html
守られていない最低賃金

……
○政府参考人(日比徹君) 最低賃金の履行確保を主眼として行っておる監督指導の実施状況でございますが、……監督実施事業場数でございますが、平成2年25,931件、平成11年15,869件。
 そうしまして、最低賃金法に係る違反率でございますが、平成2年10.9%、平成11年10.0%となっております。
 また、最低賃金法違反事業場におきます事業主の最低賃金に対する認識という点でございますが、平成2年は、最低賃金額を知っているが20%、これは知っているが違反したという意味でございます。また、金額は知らないが最低賃金額が適用されていることは知っていたというのが70.3%、また最低賃金額が適用されることは知らなかったとするものが9.7%となっております。同じことを平成11年について見ますと、賃金額を知っている26.4%、賃金額は知らないが賃金額が適用されることは知っていた61.5%、それから最低賃金額が適用されることを知らなかったとするもの12.1%でございます。
 なお、最後のお尋ねの最低賃金未満で働いていた労働者の状況でございますが、この監督実施事業場の労働者数に対する比率で見ますと、平成2年には1.8%、平成11年には2.2%となっておりまして、それらの割合の者が最低賃金未満で働いていたという状況になっております。

最低賃金憲法25条に根拠を持つ。その額は?

国務大臣坂口力君) 最低賃金法は、憲法第25条の趣旨を受けまして、賃金の低い労働者の労働条件の改善を図り、もって労働者の生活の安定、事業の公正な競争の確保等に資することを目的としたものでございます。
○政府参考人(日比徹君) 御案内のように、最低賃金は、……月に23日の労働日数の場合、23倍してみるとということでございますが、東京都の数字で計算いたしますと、23日の月では127,857円、仮に22日の月ということで計算しますと122,298円となります。
○政府参考人(久山慎一君) お答え申し上げます。
 総務省が実施しております単身世帯収支調査の平成12年平均の結果によりますと、単身勤労者世帯の実収入は1カ月当たり336,928円、非消費支出は50,648円であり、実収入に占める非消費支出の割合は15.0%となっておるところでございます。
○吉川春子君 そういたしますと、さっきの
最賃の月額からその15%を差し引きますと、103.953円になります。これが実際に生活費に使える額と考えてよろしいですか、労働省
○政府参考人(日比徹君) 税金あるいは社会保険料負担、これは受け取り賃金から払うことになりますが、……〔だから、先の122千円から社会保険料を払うのだという答弁〕

憲法に根拠を持つ生活保護はどうか。

○政府参考人(真野章君) 生活保護、いろんな状況で生活困窮されるという方々に対しまして、憲法25条の規定によりまして、国民に健康で文化的な最低生活の保障を行うということで生活保護を行っているものでございます。
○吉川春子君 18歳単身の人が1級地の1、
東京で生活保護を受けるとなると、その生活扶助と住宅扶助の支給額は合わせて幾らになりますか。
○政府参考人(真野章君) ……これは1カ月87,684円でございます。住宅扶助の場合には、上限ということでございますが、東京では53,500円ということでございまして、上限を足し合わせますと
141,184円ということでございます。
○吉川春子君 生活保護基準は、私は生活扶助と住宅費だけ伺いましたけれども、教育費、医療費、介護費、出産費、生業費、葬祭費、こういうたくさんの制度があって、そのうち私は衣食住だけを聞いたんですよね。だから、生活水準トータルで比較したらもっともっと多額になるんですよ。

以下、最低賃金生活保護の逆転の上向きの是正を質問している。2001年だが、圧巻!
全労連春闘共闘が6月20日に最賃デーを実施 2002年
http://www.ne.jp/asahi/saitin/tobu/newpage12.htm


低すぎるパート賃金
 パート賃金は正社員の4割しかなく、低すぎます。パート賃金は、地域相場と最低賃金の影響を強く受けます。最低賃金額は全国平均で664円。最低生活費として国が定める生活保護基準は1,015円(18歳・単身者)です。働いて得る最低賃金は、生活保護より低くなっています。また、時給引き上げの障害になっているのが、103万円の課税最低限度額です。

くらべてください、あなたの時間額はどれくらいですか


パート   889円
高卒・初任給(女性)   958円
平均賃金 2,297円
最低賃金   664円
生活保護報酬(18才単身) 1,015円

(時給比較:生活保護基準は、税・社会保険を加算。時給は民間労働154時間で換算)
生活保護基準はおおよその全国平均です。

 私たちは最低賃金額1,000円以上、課税最低限度額180万円への引き上げを求めています。そのために、地域ごとにバラバラに最低賃金が決まる日本の制度を、世界の常識である全国一律の制度にすることが大切です。

公明新聞 2004年 最低賃金生活保護の逆転はイカンザキ〜って政府側でしょうがあんたがたは?
http://www.komei.or.jp/news/daily/2004/0825_05.html
東京春闘共闘会議の異議申出 2004年
http://www.chihyo.jp/appeal/2004y/saitin_mousitate240820.htm
北海道労連の「最低賃金の時間額1000円以上への引き上げと全国一律最低賃金の法制化を求める要請書」2005年
共産党小林美恵子議員の2005年の同趣旨の質問
http://www.cpi-media.co.jp/mieko-kobayashi/kokkai/2005kiji/050516.htm
宮城孝幸税理士事務所@大阪市東淀川区質疑応答より

 【問】 給与所得者の所得税限度分岐点を教えてください。
 【答】 アルバイト・パートにかかる税金は次のとおりです。
所得税については年収が103万円までは税金がかかりません。月に換算すると一ヶ月85,833円までということになりますね。しかし、住民税はかかります。年収が98万円まででしたら全てクリアします。

最低賃金だと税金も払うのだね。
角森洋子の労働通信(現在、「労働基準法〜時々」という名称に変更されておられるようです。)最低賃金生活保護との逆転とそれによるモラル崩壊について。2005年