▼セクハラ防止システムや対応マニュアルの問題点

そもそも、世に流通している「セクハラ防止・対応マニュアル」は刑事事件すれすれの事態を想定しながら、刑事事件に至っている場合を想定していない。すなわち、「セクハラ防止・対応規則」などに基づく「セクハラ対策委員会」に取り扱われる事案は、すべて非刑事事案となっているし、フローチャートからしても刑事告発に至る道筋は設定されていないのである(たとえば、大阪府労働総合事務所 職場のセクシュアルハラスメント防止マニュアルの「相談・苦情への対応フローの例)。
そこで、「まじめ」に「セクハラ対応」に取り組んでいても、刑法に関する無知によって、非親告罪があいまい・うやむやにされてしまうのである。
その企業・教育機関・団体の規則や啓発資料が「強姦」すらを想定していても、それを「犯罪」として対応することには言及していないか、十分とは言いがたいようだ。
今後、セクハラ防止・セクハラ対策・セクハラ対応の啓発・マニュアルには、刑法「わいせつ、姦淫及び重婚の罪」のわかりやすい・実践的な解説を含ませる必要があると思われる。

「セクハラ」は犯罪カテゴリーではない

京都教育大学の学生による集団準強姦(一応「疑い」)事件に対する大学の対応の問題点は、端的に言って、事件について「(集団準)強姦」という認識がなく、(単なる・非刑事的)「セクハラ」という認識であったことであろう。
すなわち、刑事事件ではなくいわば内規違反の事案として取り扱ったのである。
そもそも、セクシャルハラスメントは法的に「犯罪」なのか。

……
「セクハラ」という表現を用い、犯罪としてこれを直接禁じる法律はないが、セクハラとなり得るそれぞれの行為の中で悪質なものについては、「強姦」や「強制わいせつ」はもとより、誹謗中傷であった場合は名誉毀損罪(刑法第230条)や侮辱罪(第231条)として、痴漢行為であれば公然わいせつ罪(第174 条)として、わいせつな画像を常時パソコンに表示した場合はわいせつ物陳列罪(第175条)として刑法に抵触する。……

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/sexual_harassment/

……
最近ではセクハラの加害者に対する法的処分が増えてきており、ニュースでもよく報道されている。一般会社や公務員の就業規則でも禁止や注意が盛り込まれるケースが多く、職場にはセクハラ防止委員会が設置されるようになった。……

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88

まあ、「恋人はいるのか」と女性に尋ねたところが、それがいきなり「セクハラ」罪とかになるとしたら、おちおち会話もできないのだが。

マニュアル

京都教育大学のセクハラ関係のマニュアルはハラスメント防止のためににあるのだが、「ハラスメントの防止等に関する規定」は、ぱっと読みして例えば大阪府の「大阪府総合労働事務所」にある「職場のセクシャルハラスメント防止マニュアル 資料編」の「<平成18年厚生労働省告示第615号>事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」とさほど乖離したものではない。
手順としては、事案の処理としては、

  1. 被害の訴え
  2. 当事者からの聴取
  3. 当事者間の調停、加害者の処分・不処分の決定

という流れを「公正」に「プライバシーに配慮して」行うことになっている。
また、例えば厚生労働省雇用機会均等室「あなたの会社のセクシュアルハラスメント対策は万全ですか?」などは分かりやすい。

犯罪を想定していない

珍妙なハラスメントの分類

たとえば、先の厚生労働省告示には次のようにある。(編集して短くしてある)

2 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容
(1)職場におけるセクシュアルハラスメントには、

がある
(2)「職場」とは、……略
(3)「労働者」とは、……略
(4)「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれる。
(5)「対価型セクシュアルハラスメント」の例:出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該労働者について不利益な配置転換をすること。
(6)「環境型セクシュアルハラスメント」の例:事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。

http://www.pref.osaka.jp/sogorodo/sekusyuaru/shiryo2.pdf

この「性的な言動」は「強制わいせつ」すれすれではないのか。

傷害事件、強姦を想定するも

あなたの身体があなたの意思に関係なく不当に扱われたら、病院の適切な治療を受けることも考えましょう。
打身や青アザが残っている状態で診察を受け、診断書を取っておくと、警察に申し出る際に、暴行に関する証拠になることがありますし、裁判の時の証拠にもなります。
妊娠の不安がある場合に、「妊娠しているかもしれない」と言うと、妊娠の有無の検査のみになります。適切な検査と治療を受けるため、勇気がいるかもしれませんが「性関係を強要された」ことをきちんと申し出る必要があります。

http://www.pref.osaka.jp/sogorodo/sekusyuaru/3-3.pdf

職場のセクシュアルハラスメント防止マニュアルの「職場のセクシュアルハラスメントの相談を受けたら」には上のような記述がある(4ページ)。つまり、「親告」について述べているものと思われる。

ところが、Wikipedia でも触れられているように、

5 職場のセクシュアルハラスメントの法的な問題

現在、わが国では、セクシュアルハラスメントを直接禁止する法律はありません。改正均等法では、事業主に対する雇用管理上の措置義務が定められていますが、被害者の救済や加害者の処罰を直接の目的とするものではありません。
そのため、セクシュアルハラスメントが刑法に該当するようなものでなければ、民法上の責任を問うことが多くなります
セクシュアルハラスメントを受けた被害者が具体的な対応を求める場合、その法的な根拠についてよく理解しておくことが大切です。
(1) 男女雇用機会均等法上の問題〜事業主に必要な措置を講ずるよう求める
(2) 民事上の問題〜起こったことについて加害者や使用者に損害賠償等を求める
(3) 刑事上の問題〜起こったことについて、加害者自身に対し犯罪としての処罰を求める

http://www.pref.osaka.jp/sogorodo/sekusyuaru/1-5.pdf

と、一番最後に刑法規定を挙げるも、「親告罪」であると但し書きしている。

セクハラは刑事犯罪に相当するものもあるということを強調したほうが良いのでは?

まずは、親告罪であっても、犯罪は犯罪であると強調すべきではないか。また親告罪ではない「わいせつの罪」もあることを明記すべきだ。
またマニュアルには、全体として防止できなかったセクハラ事案が、告発すべき刑事事件に相当するかどうか判定するステージを設け、それにふさわしい委員会の人員構成や記録の仕方を決めるべきではなかろうか。

自己チェックで

男性諸氏は自らを、女性諸氏は同僚や上司、恋人・配偶者の意識や言動をチェックしてみると、自らや彼等のセクハラ度合いがわかってよろしいと思う。下のチェックシートは、結果に対するコメントもなく、そんなに良いとは思えないが…。
自分の言動や意識チェックシート