▼おまわりさん、どこに

私の住んでいるところでは、どんどん交番が廃止されていっている。
交番があってもおまわりさんはいないで、電話が所轄の警察署につながる仕組みである。
小学校の近くの交番も近々廃止である。


私の住んでいるところでも、高齢化が進んでいるのだろう。
先日仕事の帰り道に迷い老人を保護した。
四車線道路の車道を歩いていた老人は、道を横断しようとしているのだと思われたが、そうではなく車の進行方向に対して逆行して散歩しているのであった。
四車線ではあるが、信号も商店も人通りも多い道なので車のスピードは速くないものの、激しくクラクションを鳴らして老人を避けている。
じきに歩道に戻るかと思われたが、こちらが信号待ちをして老人の側に横断してもなお、車道を歩いているので、見かねて手を挙げ、車を止めて歩道に誘導した。
「家はどこですか?」
「近く・・・」
「じゃ、いっしょに帰りましょうか」
「・・・」
いっしょに住宅街に足を入れる。
「お家には、お嫁さんとか娘さんとかいらっしゃいますか?」
「・・・」
スタスタスタスタ・・・


立ち話をしている近所の方に話しかけて尋ねてみるが、知らない顔だという。という間にスタスタ向こうに歩き去ってしまっている。
ま、私を不審がって帰って行ったのだろう。そう思った。


ところが、もと来た道へ引き返してダラダラ歩いていると、またありえない方向からさっきの老人である。折り返してきたらしい。
「お名前は?」
「わからない」
「おうちは?」
「・・・わからない」


仕方がないので公衆電話から110番する。公衆電話がなかなかないのだ、最近は。
公衆電話から110番してもなかなか出ない。20回くらい呼び出し音がなってから出て、事情を説明し、保護してもらうことにする。
公衆電話の近所の大型ドラッグストアの室内ベンチでおまわりさんを待つ。
老人の表情はかたい。なかなかおまわりさんは来ない。
「腹が減りましたね。パン買ってくるね。」
菓子パンと冷たくないストローつき紙パックの茶をドラッグストア内で購入して差し上げると、モソモソ食しておられる。
食べ物を口にしてすこしリラックスされたようである。


20分もしておまわりさん到着。
持ち物はなく、身元を確認できる名札も分かるところにはなさそうだ。
「どうもありがとうございます。あとは、当方でちゃんとしますから。」


老人は不安そうにパトカーに乗って行ってしまった。



これから認知症の高齢者が徘徊することも増えていこうというのに、交番がどんどん廃止されて、110番してもなかなか現場に来てもらえないでは、不安である。
警察官って減ってるのだろうか。どこでどんな勤務をしているのだろうか。
地域の治安や道案内を地域住民に丸投げでは困る。
「子どもの駆け込み家」だけではなく「老人保護の家」も必要だろう。公衆電話も増やして欲しい。高齢者は携帯電話を持っていない人も少なくない。私も持っていない。持っていても電池が切れていたらダメだろう? 電池が切れていても料金払ってなきゃ通じないじゃないか。


有人交番と公衆電話を増やしてください。